-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 無気力な日でした・・・

色々と済ませないといけない用事があるにも関わらず、何もする気になれない日だった。昼にスタジオへ来たは良いけど、結局一歩も外出せずにソファに座ってはタバコをふかしてた。

夕方になるにつれ、多少明日の事を考えはじめて、日加タイムスに依頼されてる新年号の表紙から取り掛かる事にした。あ〜、ダメな一日だ。

新年号の表紙を描いて欲しいと依頼されてから、随分頭の中で考えていた。モチーフは?色のイメージは?コンセプトは?次第にそれが具体的に見えてくるようになった。

編集長と話し合う前に、それらを自分なりにドラフト・デザインに仕上げておこう。いくら新年号と言えども、干支の動物が前面に来るようなOld Styleは避けたかったので、それをどう組み入れるかが鍵だった。日加タイムスは歴史のある新聞だし、読者層も幅広い。万人受けとまではいかないが、ある程度の最大公約数を考慮するべきだ。

そこで固まってきたのが”女性”というテーマ。「来年は優しい年になればいいな・・・」という想いがある。去年、今年と荒々しい、殺伐とした事件ばかりで、非常に男性的というか、男が世界をダメにしてるんじゃないか?と思える事が多かった。数十年も前からウーマン・リブという女性運動があるが、未だに世界は男性主導という観は否めない。

もしこれらの問題が女性主導の下で取り組んだとすれば、随分と違った解決策が出たのではないか?とも思えるのだ。だから来年こそは、もっと女性が発言をし、願わくば思い切り世の中に台頭してきて欲しいものだ。そう、世の中は女性に象徴される「優しさ」と「強さ」を求めている。

丁度、干支である羊も、優しい女性的な動物だ。これが辰とか虎だったら来年も男性的な荒々しいイメージがあるが、女性らしさを上手く羊とコラボレーション出来ればコンセプトは固まるだろう。

紙に何枚も女性の顔を描く。思い描いてる表情に近づくまで何枚も描く。ポイントはどれだけ人を惹きつけるような瞳が描けるか?という部分に絞っていき、夜中の12時を過ぎたころ、やっと一枚が完成した。それをスキャンしてPhotoshopで加工していく。

手描きのペイントだと、印刷したときにインクの色や紙質に左右されて納得いくような色調が得られない気がしたので、今回はあえてDTPで仕上げようと思う。時間を忘れて没頭して朝の4時にひとまず完成。プリントアウトして作業を終える。明日見てみて、多少手直しをしよう。おやすみ・・・。


2002年11月06日(水)



 ベスト・アーティスト

久々に昼過ぎまでぐっすりと眠ったよ。鏡で自分の顔を見ると、なるほど病人に見える。どうせ今日は誰にも会わないと思って、髭もそらずにシャワーだけ浴びてスタジオへ。

スタジオの中は、昨夜降ろした荷物でパンパンだ。とりあえず座る場所を見つけて腰を下ろした。届いてた手紙を開けていくうちに、NOWマガジンからの手紙が混ざってるのに気付いた。開けると「Congratulation!」とある。

「You have been selected as "Best Local Visual Artist"」の文字が飛び込んでくる。そうだった、数週間前にもらった電話を思い出した。

NOWマガジンとは、トロントで発行されているエンターテイメント・ペーパーで、日本で言うところの「ぴあ」とか「東京ウォーカー」みたいなものかな?その週に開催されるコンサートやイベント、映画、ダンス、アート・・・とあらゆる情報が満載されている。毎週木曜日に無料で街のいたるところで入手できるから、市民はそれを読んで今週何が起こるかを知ることができる。

その雑誌が毎年一回、”Best of Toronto"と題して読者投票をするんだね。ベスト・レストランからベスト・タクシードライバーまで、ありとあらゆるジャンルごとに今年のベストを決める。俺も一読者として毎年これを楽しみにしていた。ある意味、自分には関係ないものとして・・・。実際に去年はノミネートさえされなかったし、ベスト・アーティストを獲ったのは憧れのFiona Smithだったから、すごい遠い存在に感じてた。

それが今年、「tomolennonさん、ベスト・アーティストにノミネートされてます。」という電話を受けてビックリした。「まぁ、何票か入ったんだろう」くらいにその時は思ったんだけどね。

それが本当に1位になったのを知って、未だに信じられない気分だ。あのFionaを2位に抑えてのものだったし。しかし、留守電に入ってたNOWからの「おめでとう!」のメッセージや、インターネットでホームページを見てから、じわじわと実感が沸いてきた。外へ出て、今日発行されたばかりのNOWをめくると、確かに俺の名前がある。

棚から牡丹餅というか、とにかくラッキーだな、という気持ちが強い。確かに今年だけで10数回の展覧会をやってるから、多分トロント中のアーティストと比べても突出してるとは思うけど、とりわけ話題になったり、目立ったという自覚がない。

思い当たるとすれば、夏のHYPE TOKYOか、今回のLet's Have A Dreamくらいだ。その他の展覧会は、地元のレストランやカフェを地味〜に廻るもので、全く宣伝活動をしていないものだ。そのレストランなどで、偶然絵を見た人達がそれぞれに投票してくれてたとしたら、これは画家冥利に尽きる。

単にアート好きだけが投票してくれたものより、こういった一般の人々が認めてくれて初めて”トロントの画家”としてやっていけるのだから何より嬉しい。そして、Let'sが終わった次の日というタイミングも何だか粋じゃないか。

ありがとうみんな!

2002年11月02日(土)



 Warm heart in the calm night

昨夜は会場の撤去の後、スタッフ達とSushi Placeに食事に出掛けた。MihoちゃんとEriちゃんがウェイトレスとして働いてる店で、しかも昨日のレセプションのケータリングもしてもらったので打ち上げに適した場所だね。

イベントの反省点が頭を過りつつも、今夜だけは楽しく過ごそうと思った。最後に久々にビールをイッキさせられ、早めにお開きにした。そこから歩いて数分でスタジオだ。皆と別れてから一人で車から荷物を降ろす。

誰かに手伝ってもらおうかな?と思ったけど、何故だか一人になりたくて黙ってたんだ。深夜2時、全部降ろし終えてから、風船に使ったガスボンベを返却にDundasへ寄ってからガソリンスタンドへ。

レジで支払いを済ませる時に、店員のニイちゃんが「顔色わるいぜ」と声を掛けてきて、「今、展覧会が終わってホッとしてるんだけど」と答えると、「コーヒー飲めよ、丁度入れ換える時だから余ってるんだ」と言って一杯くれた。

車に戻って、その一杯を飲んだ時に、やっと今日一日が終わった気がしたね。しばらく発車せずにコーヒーを味わった。香りのトンだ、味の薄いコーヒーだったが今夜ばかりは格別だった。

レンタカーをBloorに返却して、夜の街を歩いてアパートへ戻る。天気予報では昨日は雪の予報だったが、見事にハズレ。今夜も降らずに朝を迎えそうだ。

2002年11月01日(金)



 Grand Finale-part2

16時45分。俺の中でのメイン・イベントである”I Have A Dream!"を公開するために壇上へ登った。一応「Ladies and Gentleman!」と、お決まりのセリフを言いつつ(笑)まずはイベントが無事開催されたことにお礼を言って、会場の入り口に浮かんでいる沢山の風船について説明を始めました。

去年、自分のWeb Siteで「夢はありますか?」という呼びかけをして、その時に全世界から送られてきた名前と国名をリストにしたのね、プラス、YOKO.COMの管理人さんにも協力してもらって、過去のBBSのYokoさん宛ての書き込みの内で、その主旨に近いものを提供してもらったので、延べ300名以上の人の名前と国名が手に入った。

それを一枚一枚、名刺大の大きさのカードにスタンプしていって、裏側には”I Have A Dream!"とスタンプしたんだ。風船の先にはそのカードが付いていて、これから屋外へ出て空に放つというイベント。会場にも申し込み用紙を置いてて、ギリギリまで風船を追加していきました。

それを空へ放つとどうなるか?隣町へ飛んでいくものもあれば、もしかしたら隣の国(アメリカ)まで飛んでいくかもしれない。それを拾った人は、びっくりするだろうね。例えばフランスとかオーストラリアから来たメールもあるから、正かそんな遠くから飛んできたのか?と思うかもしれない。しかも、カードには”I Have A Dream!"〜私は夢があります!”と書いてあるので、「わざわざそれを伝える為に遥々飛んできたのか!?」とビックリするでしょう。或いは「俺だって夢はあるぞ!」と言い返してるかもしれない。そんな光景を想像しながら、会場に来てた方々と一緒に300個の風船を空へ放ちました。

その光景を俺は一生忘れないだろうなぁ。本当にキレイだった。それと同時に、この小さなギャラリーで行われてる”夢をもとう!”というイベントが、より広く人々に伝わっていくような感動があった。

再び会場へ戻っていよいよオークションがスタートしました。プロのオークショナーJayさんの見事な進行のもと、次々と作品が売買されていった。しかし、観客はシャイなのか、オークション自体に慣れてないのか、あまり掛け声が掛からない。つまり値が上がっていかない。次第に最低価格である$100を切る作品も出てきてしまった。常々、このオークションでは収益をあげるのが目的ではない、と言ってきたが、やはり総額を寄付する以上はある程度の売り上げが必要なのは事実。その点において、作品は完売したのだが、予想売り上げを下回る結果となったのは残念だ。

アドバイスとして、最初からアーティスト名を表記して、かつ、どれだけ貴重な作品であるかを強調するべきだ。という意見ももらっていた。確かに通常のオークションならそうするだろうし、売り上げもある程度保障されただろう。しかし、俺はそういった”有名人の絵だから欲しい”とか”お目当ての有名人の作品だけ見に来た”という状況を作りたくなかった。

無記名であることで、まず作品自体を見てもらい、その作品が言いたいこと”夢をもとう!”というメッセージを観客に受け取って欲しかったのだ。最初にまずそれが無ければ、このイベントは単なる有名人のオークションになってしまう。それだったら俺がやる意味ないよね。

優先事項としては、まず”夢をもとう!”のメッセージをアートを通して人々に伝えること。その次として、収益があったら子供達へ寄付する、という順番だ。この順序を守るにはそれしかなかったと言っていい。例え、目標額に達しなかったとしても、堂々とこのイベントの収益として寄付したいと思う。

そういう訳で、約2時間のオークションが終了し、カウンターでは次々と作品が手渡されていった。そこでもちょっとした混乱があって、あまりに大勢が一斉にカウンターに殺到したため、不慣れな我々は一つ一つの作品と代金をしっかりと確認できずに購入者とやり取りをしていた。それが後に、売り上げが合わないという結果をもたらす事になるのだが・・・。

それはさて置き、無事に閉幕し、後片付けを終えたあとでボランティアの方々ともお別れとなった。短い期間であるが、一緒に期間を乗り切った仲間である。打ち合わせの時間も少なく、また急な変更の嵐だったが、本当に皆よく頑張ってくれたものだ。中には、ワーホリなどで短期滞在の子もいる。彼女達の心の中で”カナダでの一番の想いで”になってくれたら嬉しいな。

それから2/articのスタッフも、これで一時解散。一番長いYumiちゃんで10ヶ月。それからManny,ケンイチくん。短いイケコでも3ヶ月と、本当によく頑張ってくれた。このスタッフが居なければ、絶対に絶対に不可能だった。Takaも途中で抜けてしまったけど、あいつの功績は変わらない。皆よくやってくれた。

彼・彼女らがこれから歩む人生には、もっと厳しくて、もっと辛い出来事が山のように出てくるけれど、この途方も無いイベント、人から「無謀だよ」と言われ続けたイベントを実現させるために逃げなかった事は、大いに誇りに思ってほしい。多分、それぞれ何度も「辞めようかな」とか「無理かも」と思ったに違いない。でもそこから逃げなかったということは、これから先に難題があったとしても、きっと逃げずに立ち向かえる人だとも言える。

俺は、このメンバーでこのイベントを作り上げたことを誇りに思う。願わくば、俺にもうちょっと優しさと人格、指導力があれば良かったのだけど。それはまた、将来どこかで道が交わった時へ希望を託して、胸にしまっておきたいと思う。

更に、イベントに携わってくれた人々全てに感謝します。励ましのメールをくれた友達や家族、HYPEの時の日本のアーティスト達。トロントのアート関係者。日本の著名人との取次ぎをしてくれたマネージャーや事務所の人々。前代未問のイベントに、はじめにスポンサーとして名乗りを挙げてくれたトヨタ・カナダの中谷氏をはじめ、スポンサー各企業。。利益がないにも関わらず大きな記事として取り上げてくれた日系新聞、雑誌の編集者達。カナダに来て以来、いつも手を差し伸べてくれる瀬戸山氏、松本社長。陰ながらバックアップしてくれたトロント領事館。

今日、ここに夢の一つが現実となりました。本当にありがとうございました。

夢は叶う!

夢をもとう!


2002年10月31日(木)



 Grand Finale-part 1

きたきたきた。
泣いても笑っても今日で最後です。今晩のレセプションとオークションで'LET'S HAVE A DREAM!"は終了です。

昨夜は久々によく寝て、朝6時にトロント空港へ。日本へ帰るのを見送るのはこれで何度目だろう?観光シーズンの過ぎた空港は閑散としていた。エアポートシャトルでダウンタウンへ戻り、オフィスへ。

元Luna SeaのSUGIZOさんがイベント公式テーマ曲として”Dear LIFE”を作ってくれたので、会場で流すだけでなく、宣伝のボードも作ることにした。簡単な経歴と写真、そして”Dear Life"の歌詞を英語と日本語で記載した。で、隣人のSくんにMediaファイルをCD再生用にプログラムを変換してもらう。

オークショナーと打ち合わせる為の書類を少し手直しする。Mihoちゃんが来る10時までまだ時間があったので、近くのMacで朝食を買う。書類の作業をMihoちゃんに任せた後ギャラリーでスタッフと合流。事前の計画から変更があった部分の指示を出して、レンタカーをピック・アップにBloorへ向かう。ここからが怒涛の一日の始まりだった。

レンタカー屋に向かうまでにSPINとイケコから交互に指示を仰ぐ電話が数回ずつ。オフィスのMihoちゃんからも問い合わせの電話が数回。手元にある企画書をめくりながら車は風船店「Balloon King」へ向かう。

頭で描いてる会場の図面と、現場では相当ズレがあって、時にはイケコに、時にはJunoに変更を伝えながらBalloon Kingでヘリウムガスを借りる。一旦ギャラリーへ寄り、ガスを”風船班”に渡す。これから3時間で300個の風船を膨らましてもらう予定。

それを結びつける紐を路上に用意するように伝えていたのだが、意図してるのとは違うふうに用意されてて、イチから手直しを頼む。会場内ではドリンク・カウンターの準備をしてもらって、パーティ用の配置にギャラリー内を変える。

午後1時。車でオフィスへ戻り、Mihoちゃんの書類を確認してすぐに車へ。裏の楽器屋でマイクとスピーカーを借りる時に事件は起こった。昨日予約したときには生きていたクレジットカードが、今日のレンタカーとヘリウムガスを借りるときに払ったデポジットで限度額を超えてしまったらしい。店の親父は顔見知りだが、こういう時には冷たい。一度車に積み込んだマイクをさっさと取り上げてしまった。どうしよう・・・、カードに現金を補てんしても、すぐにエフェクトするわけじゃない。つまり今日はもうカードを使えないということだ。

すぐにStuに電話して、知り合いにマイクを用意出来る人はいないかを確認してもらう。マイクが無い場合、最悪な状況として生声でスピーチとオークションをやる羽目になる。そこからDufferineのBeerStoreへ。スポンサーのアサヒ・ビールを仕入れるはずだったが、何と品不足でSold Outだった!別の店にも行ったがそこもSold。

最終手段で少し遠いがQueens QuayのLCBOまで車を飛ばすことにした。ここに無ければトロントで手に入るはずがない。スピード違反ギリギリで飛ばしてLCBOへ。あった!ビール10ケースをGet!しかし、パーミットの手続きが良くわからない叔母さんがレジを担当してて埒があかない!違う人に説明して手続きしてもらったのだが、俺も結構テンパってて切れそうになってるところをMihoちゃんが上手くフォローしてくれた。

そっから近くの大型スーパーでフルーツとスナックとジュースを仕入れる。時間は2時半。やばい。とりあえずギャラリーへ戻り、全員に最終的な指示を繰り返す。会場を任せて一旦オフィスへ戻る。

銀行で釣銭を300ドル分交換して、オークショナーへのギャラやケータリングの代金を現金で用意する。ケータリングのSushi Placeから確認の電話が数回入る。一般客の問い合わせの電話も数回。午後3時半。やっとギャラリーへ。

すぐにケータリングが到着し、スタッフはそれぞれパーティの準備を急ぐ。Yumiちゃんが到着していたので、慌てて彼女を連れてギャラリーのオフィスへ。オークショナーのアシスタントとして注意事項を最低限ながら伝える。

ボランティアのMakiko,Akikoさんを呼び、今夜の重大な役割であるオークションでの作品の扱いを説明。時間が迫っているため、満足な説明が出来なくて申し訳ない。そうしてる間にも続々と来賓が到着。曲がってるネクタイを調える暇もなく挨拶をして回る。まずJames Motoの松本社長とデザイナーのChakoさんが到着。それからトヨタの会長N氏。実はこれが初対面。今回本当にお世話になった。改めて御礼を伝える。領事館のMさんも到着し、United WayのJenniferらと暫し談笑。

Part 2へ続く!


2002年10月30日(水)



 2日目にやっと・・・

2日目。今日も徹夜でカタログを増刷して朝イチでPrint Threeへ届ける。布団に入って眠りたい・・・。オフィスへ向かって歩いてると、すぐ近くにPurolatorの宅配車が見えた。これはもしや!と思ってドライバーに「荷物ある?」と聞くと「日本からだぜ」といって一つの包みを渡された。

ついにアラーキーの作品到着!すぐにSPINへ行き、JunoとStuとアレコレ展示方法を考える。結局、アクリルのBOXを用意してもらってそこに入れることにした。これでほぼ展示物は完璧だ。

ボランティアのAkiとKozueに、Kingiの所からT-シャツを受け取ってきてもらってT-シャツもOK!そのデザインだが、開けてビックリ。すべてのシャツの絵柄が微妙に違うのだ!黒字に青い雲の模様を基調としながら、”Let's Have A Dream"というロゴがシャツによって違う場所に配置されていて、漢字で”夢”と入ってるのもあれば、女の子のシルエットがプリントされてるのもあって、買う人は自分の気に入った一枚を選ばなければならない。

まずはスタッフの女の子達がワイワイ選びだした。アレいい、コレがいいと時間を掛けて選ぶ。ふと横をみるとJunoもちゃっかり「俺はコレがいい!」と自分のを選んでた(笑)。このすんばらしいアイデアとデザインをたった3日で仕上げてくれたKingiに万歳!

3時に俺だけオフィスへ戻って、明日の出席者へ確認のTELや、雑誌、メディアへのコンタクトを取る。あと、ケータリングや風船用のガスボンベの手配を済ませ、またギャラリーへ。色んな人々と少しずつ談笑してイベントの感触を確かめる。

領事館の宗像さんや画家のダイスケくんもプリ・オークションに参加してくれて、少しずつBIDされる作品も増えてきた。俺はあんま頭回んなくなってきて、ちゃんと応対できてたか不安。明日に備えて今日は少し寝ようと思う。

2002年10月29日(火)



 恍惚と不安、二つ我にあり

朝8時、まだ日が昇ってない。トロントの冬の夜明けは遅い。搬入で使ったレンタカーを返却する前に、Print Threeへ展覧会カタログの追加分を届けた。昨夜は頑張って20冊分を印刷した。

Bloorで車を返した後、スタバに寄って一人でコーヒーを飲んだ。ちょっと気を抜くと、今までの大変だった準備期間が想い出とともに押し寄せてくるので、考えないように考えないように道行く通勤者達の姿を目で追って気を紛らわせた。

なぜか地下鉄に乗らずに、歩いてオフィスへ戻ろうと思って、Yongeを歩いてると向こうから”Let's〜”のポスターが風に乗って飛んできた。どこかの壁から剥がれてきたんだろう。つい数日前の夜中に一人でこの辺にポスターを貼りに来たことを思い出した。

展覧会の前は、どんなに手伝ってくれる人数が多かろうと、とても孤独になる。孤独を感じると言うべきか。それは不思議な感覚で、周りに人が大勢いてもすっぽりと自分だけ暗闇にいる感じがする。多分、人はそれを見て「ナーバスになってる」と感じるんだろうけども。

さっきのポスターを貼る作業に非常に近いんだけど、真っ暗で誰も歩いてない夜道で、誰にも見られずにそっとポスターを貼る。昼になって人通りが増えて、道行く人の目に留まるようにと願って、暗い夜中に黙々とポスターを貼る。人が見るのは昼間の明るいポスターの面だけで、誰も決してそれが真っ暗な夜中に貼られていったものだとは想像もしない。

展覧会も一緒だ。人は昼間の面だけを見てくれればいい。夜の間にどんなことをしてるのか、してきたのかは関係ないのだ。そんなことを考えつつオフィスへ戻り、まだ準備が必要な書類とボードの製作をする。

11時。ボランティアの子達がSPINギャラリーの前で待っていた。「おはよう!」と元気に挨拶して、前日に展示し終えたばかりの会場へ入る。12時のオープンまでに最終的な展示をチェック。

オーナーのJunoとStuはビシっとスーツでキメててカッコ良かった。早くも30日のレセプションの打ち合わせをする。そこで話題になったのが、未だに到着していないアラーキーの作品だった。今日のクーリエで届くかもしれないんで、オフィスにはAkiちゃんを店番として待機してもらっていたが、まだ届いたという連絡はない。日本を間違いなく週末に出てるから土日を挟んで、今日か明日の午前中には届くはずだと信じたい。

1時を過ぎたあたりから人出がでてきた。通常なら、オープニングの日にパーティやらをやるのだが、今回は最終日にすべてを注ぎ込んでるので特に宣伝はしていない。実にひっそりとオープンするのがいいと思った。

顔なじみのアーティストや、今回デザインを手伝ってくれたHiroとかMayukoらがやって来て、それなりにオープニングらしい雰囲気になった。会場にはカタログやT-シャツを売るコーナーがあるのだが、そのT-シャツも間に合わず、明日から売り出すことになった。

心配してたアラーキーの作品は結局届かず。初日に来てくれた方々に申し訳ない思いで一杯だ。


2002年10月28日(月)



 搬入日!

急な時間の変更があったにも関わらず、ほぼ全員のスタッフが3時にSPINに集合。一足先にレンタカーをピックアップしてスタジオから荷物を積み込む。今日から冬時間になるのをMannyが知らず、一時間早く到着してた。

前回のミーティングの指示どおりに各スタッフがそれぞれの仕事をこなす。予定より順調に展示が進んでいくが、忘れ物があったりして、俺はギャラリーとスタジオを数往復。誰も免許持ちが居ないんだなぁ。

オーナーのStewartとJunoも沢山手伝ってくれて、床のモップがけやら、壁のペンキ塗りやらを済ませる。おまけにStuは一番大変な釘打ちをしてくれて本当に助かった。彼ら曰く「Tomo、どこであんなに良いボランティアを見つけたんだ?みなエクセレントな仕事してるじゃん!」と褒めてくれる。そうだ。確かに皆素人だけど、テキパキと与えられた仕事をこなしてて、のんびり屋のカナダ人からすれば素晴らしくオーガナイズされた集団に映ったことだろう。

「雇う?」と聞いたら「One day(いつかね」(笑)と言ってた。夕方6時半。ほぼ全ての作業が終わった。正直信じられんくらい早い。だって7月のHYPEの時なんて徹夜だったから。あとは数箇所のボードを今晩俺が作って、明日のオープン前に設置するだけとなった。

正直、今晩くらいは寝たいところだが、ボランティアの頑張りに負けないように、一人で黙々とボード作りをすることにした。明日がオープン日。遂に、遂にその日がやってくるのを朝日とともに実感した。

2002年10月27日(日)



 準備は進む

Dufferine Mallへ行き、アクリル製のBoxを買った。ヨーコさんの作品を展示するのにちょうどいい箱だと思って、ずっと前から目を付けてたやつ。普通、工場にアクリルBoxを発注すれば軽く数百ドル掛かるのを知ったので、何とか規制品で見つけられたのはラッキーだった。

明日の搬入を前に、SPINへ立ち寄ってそのままこの箱とヨーコさんの作品を預けた。オーナーのJunoはちょっとビビリながら(笑)「マジ?置いていくの?」と不安げだったのが笑えた。

そっからKingiの店に寄って、T-シャツの仕上がり具合を確認。どうやら明日に仕上げるのは無理な様子。遅くても28日正午のオープンには間に合わせたいが・・・。

日本からMさんがトロントに遊びに来てて、やっと夜に少しだけ会う時間が取れた。ずっと以前から依頼されてた彼女の新居に飾る絵を手渡すために、Kくんの買ったばかりのコンドミニアムに出掛けた。そういえばKくんにも数日前に絵をあげたんだった。部屋にはそれが飾ってあって思い出した。

この2人ともが、飼っているペットの犬や猫をモチーフに絵をオーダーしてくれてたんで、人間以外はめったに描かない(というか描けない)俺には相当なチャレンジだった。値が上がるから、もう動物は描かないように2人に言われた。あがんねーよ。



2002年10月26日(土)



 ちょっと息抜き

早朝8時にPrint Threeへ行き、カタログをシュリンク・ラップを頼んできた。土日が休みなんで、イベントがスタートする月曜日に間に合うには今日までに相当数をラップする必要があった。昨夜も完徹で何とか30冊分をプリントした。さすがに徹夜がここまで続いてくると胃の調子が悪い。食べてもすぐに吐いてしまうし、あまり量が食べられない。

寝不足の上に、経費削減で走って移動してるから余計に堪える。ついに一駅分だけど地下鉄に乗ってしまった。一瞬座っただけで眠気に襲われてヤバかった。

10時までにオフィスへ戻らないと、クーリエの宅配を逃してしまうんで、文房具屋でプリンターインクを買うにも、とにかく走る。しかーし、さすがカナダ人。レジが遅い!!その上、「ボールペンが半額になってますが、いかがですか?」ときた。お前、マクドナルドじゃないんだから余計なセールスすんな!早くレジ打て。

痺れながらオフィスへ到着。案の定、宅配を逃した証拠である伝票が目の前にあり、気絶しそうになった。引き取りに行くには、夕方6時半まで待って、遠〜くの集配所へ行かなければならない。2時間のロス。

SPINから電話があり、27日の搬入を2時間繰り上げて、午後3時からスタートして欲しいと変更依頼!しかも6時までには終わらせて欲しい、とダブル注文!思わず絶句!考え直す余裕なんて無いんで、とりあえずスタッフとボランティアに確認の電話を掛け捲り。

夕方4時。Mihoちゃんが、バイトの休憩時間にヘルプに来てくれた。マジ感謝!バイトが終わる11時にもう一回来てもらって、一緒にArtSpaceのイベントに行くことにした。ここはギャラリーというかイベントスペースというか分からないけど、割とトロントでは珍しいアートとミュージックの融合イベントをこれから開いていくらしい。今夜はその一回目として友人のDJ AKIがSpinするので、わざわざ時間を裂いて行くことにした。

Akiさんに昨日直接おいでと言われた時は、正直それどころじゃないなぁ、と思ったが、彼にはいつも世話になってるし、第一世話になりっ放しで、ぜんぜん返してないからたまにはマジで顔ださないとアカンと思ったわけだ。

夜になって雨が降り出して、会場に付く頃にはビチャビチャです。こんなに人がおるんかい!?と思うほど会場には人がギッシリ。箱がショボイんで余計にインパクトがあった。スペースの真ん中に卓球台がなぜか置かれてて嫌な予感・・・。と思ったら短パン姿の青シャツと黄シャツが舞台へ出てきた!予感的中、おもいっきり野次を受けながら卓球大会が始まった。

唖然としながら、壁に掛けられてるアーティストの作品をとりあえず鑑賞しといて、いつでも帰れる準備には入る。Akiさんと合流したが、彼が回すのはもうちょっと深夜らしいので、残念だけど諦めて帰ることにした。帰る道すがら、Mihoちゃんとトロントのアートシーンについてマジ論。あんなエセ・ハプニングイベントにも結構人が入ってることに不安になりつつも、開拓次第ではトロントも面白くなるのでは?と、とりあえず気休めかもしんないけど思うことにした。

2002年10月25日(金)
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