詩のような 世界

目次


2005年07月15日(金) time


僕には愛すべき場所があることを
まだ忘れてはいない

そこは、幻と似ている
似ているだけで、幻ではない

一言で表すなら、半透明の森だ
時々、淡い七色に移り変わるけれど
森にいる命あるものすべても
同じく少しずつ変化しているので
居場所の変化など誰も気に留めない

しかし、それ以外は永遠に同じ
地には煌めく白い砂が広がっている
朽ちることのないパステルカラーの木々と
遥か上のほうから穏やかに落ちてくる水流
両手で受け止めると
触れたとたん蒸発する間もなく消えてしまう

みんな、あの時の僕も含めて
目にひかりを映している
森のすべての輝く粒子が集められたと思うほどの強さ
姿のない何かを信じ
信じることで笑い合っていた

あまりにも静かに時間が過ぎるから
新しい存在が滑るように入ってきても
誰かがそよ風とともに外へ運ばれても、わからない
そのもの自身、森を後にしたことにすぐ気づけない
実際、僕も遠い旅先ではっとしたのだった

目指す場所を見つけるために、死ぬまで歩き続ける
時間はあの頃と違い、荒れ狂うように飛び去ってゆく

僕には愛すべき場所があったことを
きっとずっと忘れないだろう

最後の森を想像しながら跨ぐ夜は
あの風と同じ風を感じる

幻かもしれないけれど


2005年07月14日(木) 武装癖



単純明快な気持ちを
言葉にするのはとても困難だ

複雑に色を重ねて
海のような瑠璃色にしたり
舌打ちを呼ぶようなどどめ色にしたり

気がつけば
それはもう原形をとどめていなかった
そして
無理に手を入れられた気持ちの分身は
君の胸に触れるどころか右往左往して
挙句の果てには君を遠ざけた

装飾されたものたち
君を見失ってしまったからには意味を持たない
今になってやっと
僕は武装解除を命令する

裸になったものたち
僕の情けなく開いたままの口へ戻り
喉を転がって心臓に達した
まるで氷のように冷たく痛い

もう武器は捨てたはずなのに
それらは奥の部分で新たな傷をつけ始める
僕は血を吹きながら
嗚咽する声を確かに聞いた

君の声を聞いていたかった
ただそれだけだったんだ

どうか僕の血がまだ温度を保っていて
できるだけゆっくりと
冷たくなった残骸を溶かしますように

一緒に流れて ゆきますように



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