詩のような 世界

目次


2002年12月30日(月) 逃避不可


彼は私の夢に出てくると
いつも最初は笑っています
私だけを見て私だけと通じ合う
そこでは絆みたいなものを感じるのです

でも場面が変わるごとに
彼の気持ちも変わるようで
気がつくとこの手を離している
私は彼の行方を探すのでした

そして溜息
やっぱり彼は知らない女の下で笑い
視線を彼女だけに向けています
私を「なかったこと」にしているのでしょうか

だけど彼を責める気にはなれないのです
むしろ自分から別の人に移る彼を
自然だというふうに眺めています
彼に対する情は深くないのかもしれません

それとも逆なのでしょうか
私が感じる「絆」は
小さなことはどうでもいいことであると
認識していたとしたら

可能性は後者のほうが強いみたいです
私にはこれからも彼の夢を見るという
確証めいたものがあるからです
逃れられないとわかっている

この先彼は何度私から去っていくのでしょう
この先私は何度傍観者になればいいのでしょう
この先

この先夢は呪縛のごとく現れつづけるのでしょう


2002年12月29日(日) カチカチ


水色の目玉がぐるぐると回り始め
上下左右の感覚が曖昧になると
やっと見えてくるものがあるようなないような


金色のふくろうが天に描かれた
僕はふくろうの住処を探すため
息を止めて地下に潜り込んでいった


洋館は僕を手招きしたので
いちにのさん、で右足を踏み入れた
たくさんの仲間たちがテーブルを囲み
くちばしをカチカチ鳴らす陽気さ


まるでたった今生まれたような気分にさせられ
ローストビーフを一気に噛み切ると
彼らが僕をあたたかく見守っているのに気づいた


僕は涙がレモンジュースを薄めるまで泣いた
何が現実で何が幻想なのか
そんなことを考えないように延延と


2002年12月20日(金) rot away


地が咽び泣く

花が千切れる

風は砂を伴い

雲に従い行く


踊るための靴を持っていないことに気づいた

薔薇の刺が足首に食い込む

抵抗する眼差しはどこへ

遠い茨の道で迷ったのだろうか


刺激のなさこそ1番の刺激だ

求めないから失望はないが

モノトーンの世界を広げるばかり

水が欲しくても草花は枯れるのを待つだけ


クマの縫いぐるみが線路に落ちていた

それが人じゃないから誰も目に留めない

首筋が凍り舌が強烈に乾き始める

見えない糸はもう切れようとしている


ハロー、と小鳥の亡き骸が鳴いた

グッバイ、と日溜まりが手を振った


2002年12月18日(水) ラヴ ソング


夜空の下に立つと

雪が真上から落ちてくる

冬の匂いは夏のそれより少し弱い

だから雪がシグナルになるしかない


彼のコートの材質をチェックする

かっちりした黒

雪の粉は吸い込まれる瞬間

彼に気づいて欲しがっていた


この演出を素直に喜ぼう

唇を見つめて見つめ返されよう

黒い空に飲まれないように

彼の睫毛だけを頬に感じるために


2002年12月16日(月) ガーデン

やぎさんが紙を食べたから

ぼくはきみを探す決心をした

湯船の中に潜り

ただひたすら


ぼくと幻想を育てましょう

きみの力が必要なんだ

「真実」なんて1番もろいから

曖昧なものほど確実なのだから


4本の手にありったけの静寂をこめて

存在しない園をつくろう

ぼくたちは個体だけど

一体化しないからこそ見出せるんだ


2002年12月15日(日) OFF


ひたひたと
冷たい音を立てながら
青の足跡はどこまでも続いていく

シロウサギハ シンダ

あたしは布団の中に住む
相棒を探している
大陸を繋げたい


呪術師は大人の男に限る
闇の雫が心の穴に溜まる
ぽたぽた、ぽたぽた、ぽたぽた……

シンダ

誰を憎むでもない
祈りとも呪いとも取れる言葉が
彼を通してあたしの本音となるのか


視力を失った生き物が
足音を聞きつけたようだ
もはや全てが暗い青に侵された

シンデイル

乾燥した土の子たちが乱れ飛ぶ
ぴょん、と長い耳が泣く
遠くの方で誰かが主電源を切った


2002年12月13日(金) logic







守るべき存在はなし

だからあたしはどこにでも行ける
つまりどこにも行けないということだ

この世に「永遠」がないなら
無を求めるしかない






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