詩のような 世界

目次


2002年10月31日(木) あなたは幸せ



何に対しても本気になれない
空虚な気分が癖になってる

苛立ちさえ覚えない

人に優しく
いつでも穏やかに
そう心がけて行動していれば
当たり前のようにいいことが起こる
らしい

らしい

らしい


どうせ心配事しか頭にないし
それに捕らわれてがんじがらめになるよりは
まあ騙されたと思って
楽しい振りでもしてみよう
誰にでも笑いかけてみよう

騙されたらその時考えればいいさ


2002年10月29日(火) 熱冷まし



優しいお爺さんからもらったキスを大切に飲み込む少年
彼を振り向かせたい私だけど
それは不思議の国のアリスになることより困難
なぜならそう
彼は心に深く傷を負ってしまったから
あのお爺さんは意地悪婆さんに夢中なんだって

人間は追いかけていたい生き物なのかもしれない
そう気づいた途端
彼がますます魅力的な存在になったの
ワカメちゃんレヴェルのスカート丈にしてみた
ゆ・う・わ・くするために
でも彼は私にお情けの笑顔をくれるだけ

なんて素敵な反応なんでしょう
これぞまさに理想的でしょう

それにしてもあのお爺さんは調子が良すぎる
彼を見かけるたびに
お爺さんはシワシワの手で彼の身体を愛撫する
ずるいずるいずるい
私には真似できないテクニックじゃないの
恍惚とした彼を抱く姿に嫉妬

敬老の日にお爺さんと意地悪婆さんが挙式
信じられないハッピーな展開
それから彼は私を欲しがりだした

私は一気にお爺さんを好きになった
この際不倫でもいいや


2002年10月26日(土) つもる音


雪が降る
凍りついた道に
しんしんと

しんしん
しんしん

無音なんかではない
それはとても小さく
呟きほどにもならないけれど
きっと神からのメッセージなんだ

聞いて
聞いて
消されてしまう声を

雪が降る
凍りついた道に
限りなく暖かく

しんしんと



2002年10月24日(木) 在り方



あたしがここに「いる」シルシに

旗を立てることにしよう

白いボロ布にHere!とでも書いて

柔らかいアスファルトにぶさり、だ


真昼間の空は意味もなく青く

あたしは何も感じなかった

ただ

そこに「ある」だけ


誰に訴えかけるでもないのに

空はちゃんと存在している  

巨大で

巨大で

全ての人の上に覆い被さる

たくさんの人の目に映る


あたしは

旗を振るべきだろうか

あたしは

何も感じない


2002年10月19日(土) 行き交い


その腕の中にいると

僕は自然と液体になる

安心以上の穏やかな感情に満たされ

大人しく抱かれたままでいよう

と脱力する


あなたは優しい地球のようだね

だから僕は泣きたくなるよ

世界は今ここに集まっている

崩壊してもかまわない

あなたの胸にくっついていれば

僕は崩れる音にさえ気づかないから


恥ずかしいから言わないけれど

ちょっとだけわかったことがあるんだ

本当に好きってことは

体感するってことだよ

魂の行き交いだよ

身体を通して何度も何度も


空気に溶け込む意識の薄れだよ


2002年10月13日(日) プラス・ワールド



どこからか1枚のハガキが届きました

裏は写真でした
どこまでも広い野原
低い空に絵のようにはっきりとした虹が
掛かっています
まるでおとぎの国のようです
そこには「幸福」だけが存在していました
原っぱで花を摘んだり
追いかけっこをしている子供たちも
その幸せのエネルギーを身体に持っているので
誰にも負けない笑顔をしています

僕は、いいなあと思いました
きっとそこには行けないだろうな、とも

でもふと考え直してみました
行ける、と念じてみたらどうだろう
起こってもいないことを諦めるのはどうだろう
最初から不安でいたら
それはすでに失敗した気分を味わっていることになる


行ける、
行きたいから僕は行ける
行ける
行ける
行ける
行ける
いける
いけル
いけルい
ケル
イケルイケル
そこに
僕は
行く
んだ

っっ


虹を見上げる僕を無我夢中で想像した…



あっけないほど簡単に
僕はハガキの世界の住人になりました
いつの間にか僕の左手は小さな手とつながっており
右手には野花が溢れています

僕は今まで知らなかった世界を知り
そのハガキの送り主は僕自身だったのだと
やっとわかったのでした


2002年10月12日(土) 底なしメッセエジ


あーあ。


この足が踏んでいる直径1mの円さえも
揺るがすことができないばかりか
小さな地割れすら起こせない僕に
不運を嘆く権利などあるのだろうか。

定めと決めつけないのは
断定してしまったらそこで終わりだから。
それに悲しすぎるし。


それにしても
「元気の出る本」に似た書物を買ってはみたが
開く勇気が出ないのはなぜだろう。
きっと僕は信用していないのだ。
そしてこうも思う。
読後、今と同じ溜息が出たら
もう立ち直ることなどできないかもしれない。

広い空を見れば悩みなど吹き飛ぶさ
と陽気に演説する馬鹿を粘土にして丸めて
ふんころがしに転がさせることにする。
いい気味だ、と笑った瞬間涙が出た。


不幸のどん底に落ちたら後は這い上がるだけだよと
母の母が教えてくれたけれど、
そんなことないみたいだよ。
ここは底なし沼だ。
おばあちゃん、でも僕はあなたが好きです。
僕がどんなに死にたい気分でも
球となった馬鹿が野垂れ死にしなくても

あなたには幸せになってほしいと思う。


2002年10月05日(土) シャーマニズム


ここにいるぼくが母の亀裂から這い出てきた理由とは?


母は人間だから人間を生むのは理に適っている

でもぼくが認識する「思考する個人としてのぼく」が

なぜ想像不可能なほどの確率で当選したのだろう


この謎は未来のノーベル賞受賞者でさえ解けないように思う


2002年10月03日(木) 目を閉じ目を背け

浅い眠りは
なぜかあいつを呼んでくる

秀才は苦手
なのにあいつは
あたしの心の一部に
ずぶり、と
着地した
いつからかはわからず
ずっとだったかもわからず

この理解しがたい思いは
夢の中だけでいい

あたしはもう息をしすぎてきたから
目を閉じている時だけで

不確かなものは信じられない
だからあいつの存在も
この5本指で遮ろう


隙間からは
今の光だけがこぼれた。


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