暗号解読

科学読み物の話題作『暗号解読』読了。おもしれえ。暗号に関して,古代の歴史からたどって,RSAまで詳しく解説されている。技術面だけでなく,暗号のもつ歴史的意義にもスポットを当てていて,ナチスの使った暗号マシン「エニグマ」の仕組みとそれを解読した暗号解読者の戦いなんかは面白い。特に興味深いエピソードは,RSAの基本的な仕組みは戦時中にイギリスの軍部で開発されたが,軍の極秘扱いになったため,開発した人間はつい最近まで無視されていたことですかね。もう1つ未だに解けていない宝の場所を示した暗号が出てきて,これも面白いなあ。一攫千金を狙って人生を捨てたやつ続出らしい。

ちなみにRSAは「原理的に解読不能」だが,もし量子コンピュータが実用化されると簡単に解読されてしまう。でも世の中には頭のいいやつがいて,量子コンピュータを使った量子暗号ってのがすでに開発されている。うーん,いたちごっこ。
2001年09月30日(日)

波の上の魔術師

『波の上の魔術師』読了。「池袋ウェストゲートパーク」で,ワタシ内評価が急上昇している石田衣良の新刊。謎のじじいに雇われた三流大学生の話なんだけど,このじじいが実は株の天才で,じじいに鍛えられて大学生もマーケットの魔力にとりつかれていくってストーリーです。じじいは,ある銀行の株を大学生に調べさせるのですが,その裏には過去の因縁のからんだ思惑があったのであーる。キャラをたてるのが本当にうまいね,この人。特に大学生の恋人(こっちは先に卒業して商社に勤めている)とか,右翼のオヤジなんかが,いい味出しています。

おはなしの面白さは文句なし。あっという間に読めちゃう。なんか株に付いて詳しくなったような気になってしまう小説でした(つい「ZAI」とか買っちゃったよ)。
2001年09月19日(水)

仙人の壷

『仙人の壷』読了。読了つーか1時間ぐらいで読めてしまう,南伸坊のマンガのような本です。ワタシは酒見賢一の『墨攻』の挿絵で南伸坊を100パーセント見直したのだけど,この本は『墨攻』のときの絵とタッチが似ているので,喜んで読みました。中国の昔のお話をマンガにして,それに簡単なエッセイのような解説のような文章が着いている。とにかく,絵に味がありますね。話の選択のセンスがまたよくて,まったく唐突にブツっと終わるやつが多い。起承転結とかなくて,意味もよく分からない話が大部分なんだけど,これが南伸坊の絵とよく合うですね。
2001年09月17日(月)

ハイテク・ハイタッチ

『ハイテク・ハイタッチ』って何の本と説明するのが難しいね。基本的にはこの世にはびこる暴力表現なんかが子供に悪い影響を与えているんじゃないかという趣旨です。ヒステリックじゃないので説得力がある。

Doomという有名なパソコンのゲームがあるけど,これを改良したものをアメリカ軍が訓練に使っているという例を引き合いにして,これらのゲームを無制限にあそばせるのは,子供に射撃訓練をさせているのと同じだという主張です。どこぞの高校に乗り込んでクラスメートを撃ち殺しまくったやつは,一発必中でほとんど的をはずさずにひとり一発で殺していたという。これはゲームが訓練の役目をしたのだろうと言うわけです。なるほど。ゲームはひとを感動させる。これは間違いない。いい影響があるということは,悪い影響もありうる。これも間違いないと思いますね。そして,ゲームや映画やTVといったメディアを通じて提供される暴力表現は,いまや膨大な量になので,親がコントロールするのはもはや不可能。法で規制するしかないと著者は述べています。このへんは表現の自由ととの兼ねあいがあるから難しい問題を抱えていますな。
2001年09月15日(土)

ま2の本日記 / ま2