陰陽寮 (4) (5)

『陰陽寮』4巻と5巻を読了。「晴明復活篇」とのこと。いやあ,なんという面白さ。上下巻があっという間に読めてしまう。この人は小説の中でときたまそれまでのお話をまとめて登場人物とかに説明させるので,記憶力の落ちてきたワタシにはとってもうれしい。3巻までは行き当たりばったり(としか思えん)に話が広がってきたのが,だんだん全体の構図が見えてくるのが今回のお話。不死人からロンギヌスの槍まで出てきて,伝奇SFの決定版という感じになってきました。盗賊の頭やら,政治のパワーゲームに明け暮れる平安貴族やら,浮浪児のリーダーやら,安倍晴明とその怪しげな敵たちやら,日本に上陸した異国の軍隊やら,もうキャラ立ちまくりなので,話の流れが自然と頭に入ってくる感じ。しかし本当にこの話は完結するのか。いや,これだけ面白ければ未完でもいいや。
2001年08月31日(金)

池袋ウェストゲートパーク

『池袋ウェストゲートパーク』読了。うーん,かっちょええ。池袋を根城にするチーマーなどの若者の物語だけど不快感はなく,ひたすらかっこいい。これは主人公(たち)が,イマドキの若者からもさらにはみ出した存在であるためでしょうね。池袋チーマーのボスである"キング",これに対抗する新興勢力のボス,主人公のマコト,池袋抗争を取材する女性ジャーナリスト,ドーベルマン殺しの山井,マコトにひとり娘の行方を探してくれと頼むヤクザの親分,池袋を徘徊するシリアルキラー"ストラングラー",キャラが立ちまくりっすね。文体もかっこいいし,痺れるっす。続編も,はやく文庫にして。

あと小説とは関係ないけど,「池袋ウェストゲートパーク」はTVドラマになった。そっちを先に見てハマったという(私にしては)珍しいパターンで,通常ドラマと原作は大きくイメージが違うので,あまり小説には食指が伸びなかったけど,読んでよかった。これぐらい,原作とドラマのイメージがぴったしってのもそう無いと思う。役者もよかったし,ストーリーも原作を無視せず・なぞるだけでもなく,両者で補完効果があったんじゃないかな。
2001年08月20日(月)

ファイアーボールブルース2

『ファイアーボールブルース2』読了。女子プロレスの世界を舞台にしたハードボイルド。くー,火渡さんイカスー。主人公は女子プロレス最強のレスラー火渡の付き人である近田という新人レスラー。火渡は天才的なレスラー(明らかに神取忍がモデル)で,それに引き換え近田は地味で華がなく,実力もない。この二人の対比がときに面白く,ときに悲しい。第一作目はミステリー的な部分が多かったが,「2」では,より女子プロの内幕と,近田の人間的な成長(と挫折)に焦点が置かれている。よりハードボイルドになったというべきか。特に,美人で人気があるため仲間から嫉妬される近田の同期のレスラーとの間で揺れる,近田という「持たざるもの」の気持ちは胸を打つ。あとがきも近田が書いていて(いや,そういう設定で),これまた泣けますね。
2001年08月10日(金)

僕たちは銀行を,作った。

『僕たちは銀行を,作った。』読了。ソニー銀行設立の内幕なんだけど,生々しい話は全然無くて,実に脱力系の本です。元々はメールマガジンだったそうで,全体に文字数が少なくて,本としてはスカスカの作りですが,そのぶん定価が安いのでした。おそらくメルマガにはなかったと思われる,これまた脱力系のイラストもよくマッチしていて,癒し系ビジネス書というべきものになってます。ソニーの本にありがちな「ソニーがソニーが」ってところもなくて好感が持てるのでした。
2001年08月07日(火)

語り手の事情

天才酒見賢一の『語り手の事情』読了。うーむヘンな小説。体裁はポルノだってのが,まず変わっている。主人公は「語り手」で,舞台はヴィクトリア朝のイギリス。語り手の館に,妄想を抱えた客が来ては,その妄想をぶちまけるというお話ですけど,何がなんだか分からないっす。興奮するようなポルノではないことは確かかで,「語り手」とゲストの「妄想」の戦い?が話の中心となります。「語り手」は,はるか未来のこと(つまり現代のこと)にも平気で言及しますが,語り手として地の文で述べるだけなので,小説としては破綻しません。ような気がする。ラストも妙な方向へどんでん返しが起きます。最初から最後までヘンな本。
2001年08月05日(日)

ま2の本日記 / ま2