怪文書

『怪文書』読了。いやあ面白いなあ。「怪文書」とは,出所不明の誹謗中傷文書のことで,芸能ネタ,政治ネタ,企業ネタといろいろあります。筆者は元週刊誌の記者で,実際の大事件を暴くきっかけとなったさまざまな怪文書を収集・分類・解説しています。週刊誌の記者ってこんな面白いものが読めていいなあと思ったけど,怪文書だけ読んでも面白さはいまいちなんだよね。真実とつき合わせてはじめて迫力が出るというもの。こういう本の形で解説つきで読めるというのは幸せであるな。しかし,ここにも『アダルト系』で出てきた"日本でただ一人自分でブラックジャーナリストを名乗る男"登場。このおじさんなかなかいいキャラしてますね。

むかしむかし名前だけ聞いてとっても興味をそそられた「宮中某重大事件」とは,なんと皇太子妃の家系に色盲の人間がいるという怪文書の事件だったとは!
2001年10月26日(金)

レヴォリューション No.3

『レヴォリューション No.3』読了。お・も・し・ろ・す・ぎっ。電車の中でのんびり読んでいるつもりだったが,1日で読みきってしまった。もうなんといってもリズムがいいよね。読んでいるだけで気持ちよくなってくるようなリズム。『GO』はまぐれじゃなかった。在日韓国人というテーマは,この作者にとって必然ではないような気がしていたけど,『レヴォリューション No.3』を読んで感じたのは,やはりこのリズムは「日本に在らざるもの」を描くために必要となったんだろうなあってことです。ドン・ウィンズロウとかハーラン・コーベンなどの,西海岸ハードボイルドを想起させるようなビート感は,日本的なものを拒否するためにどうしても必要だったんだろうね。

三流高校のガキどもを主人公にした3つの短編が納まっているけど,全然リアルじゃないんだよね。こんな高校生いるか?って感じ。例えば「池袋ウェストゲートパーク」にあったリアル感はない。それでも面白い。こんなやつらがいたら面白いじゃんという楽しさかな。ワタシ的には文句ないっす。
2001年10月23日(火)

盤上の敵

『盤上の敵』って,エラリー・クィーンの小説にあったよね。こっちは北村薫。ミステリはミステリなんだけど,トリックというよりプロットのひねりで読ませるタイプ。

主人公の自宅に殺人犯が立てこもってしまう。自分は外にいて,奥さんが家にいる。主人公はTVディレクター。このシチュエーションから,チェスのように駒が動き出します。前半は,いったいどこに着地するのか分からないような話が続くんだけど,特筆すべきはここに出てくる悪意の塊のようなある人物でしょう。怖いっす。その人物がいったい事件と何の関係があるのか..ラストまで気が抜けないですな。作者本人が前書きで書いているように,さわやかな読後感を求める人には不向き。
2001年10月22日(月)

インド待ち

『インド待ち』は,映画監督周防正行の本で,ワタシは別にインドに興味はないのだが,周防監督の本が好きなので買って読んだ。最近『踊るマハラジャ』つう映画が大ヒットして,インド映画に対する注目が集まっているらしいが,インドはでかくて多民族なので,複数の言語圏に分かれているのね。『踊るマハラジャ』はなんとか地方の映画なので,インドの他の地域では公開されていなかったりする。言語が複数あるってことは文化が複数あるということだろうに,インド映画ってどれも原色+歌+踊りだってのが不思議ですね。それとも哲学的映画を作る地方もあるのだろうか。
2001年10月19日(金)

カスをつかむな情報家電

『カスをつかむな情報家電』読了。なんか変な題名だけど,情報家電(といってもパソコンやPDAやゲーム機やソフトの話も出てくる)に関するコラムですな。出たのは1年ぐらい前なので,内容が古びてしまったかと思ったけど,そんなことはありませんでした。予測で書いている部分が,けっこう当たっているのも分かるし,軽い調子だけどまじめに調べて書いたのかもしれない。ときにはこういう風に網羅的に把握するのは必要っすね。しかし「情報家電」ってやつは本当に世の中に認められるのだろうか。レジデンシャル・サーバとか,やたらインテリな家電とか,どうだろう。

脱力系の,しりあがり寿のイラストが笑える。
2001年10月18日(木)

アダルト系

『アダルト系』の作者は永江朗。「噂の真相」の連載インタビューが面白かったので買ってみたです。この本は,彼がこれまで書いた記事の中から,ブルセラ,ブラックジャーナリズム,SM,盗聴などの'アダルト'な記事を集めたものです。いやーこの世にはいろんな人がいるなあ。みんな妙にまじめなのが笑えます。あとがきで花村萬月も言っているけど,企業の弱みをとことん取材して金と引き換えに記事を握りつぶすブラックジャーナリズムの話が一番面白いっすね。わたしはブラックジャーナリズムはでたらめ書いて金をゆすっているのかと思っていたので,これは意外だった。しかも「圧力で記事を握りつぶす」という行為は,いまや大手マスコミでも行われているわけで,なにをもって「ブラック」というのか。うーむ。
2001年10月16日(火)

カリフォルニアの炎

『カリフォルニアの炎』は,ニール・ケアリーシリーズで大人気のドン・ウィンズロウの新刊で,非ニールなので角川から出るらしい(ニールものは創元)。いやもう面白いのなんの,途中で止められません。舞台は火災保険会社で,主人公はそこの調査員。ロシア人の金持ちの家が焼けて,そこから奥さんの死体が見つかる。当局は失火と断定するけど,主人公はしつこく調査を進め,放火/殺人じゃないかと疑い始める。てなはなし。

保険会社の内幕もオモロイ。裁判の様子もオモロイ。マフィアの成り上がりもオモロイ。保険金詐欺の手口もオモロイ。なによりも主人公がいいです。とにかく四面楚歌の中で絶望的な捜査を進めるあたりが感動モノですね。ラストはワタシ的には意外な方向に行きました。
2001年10月04日(木)

ま2の本日記 / ま2