My Cup Of Tea...POO

 

 

愛をさがすバイト - 2001年10月31日(水)

午前中、ずっと愛を捜していた。
使い切ってしまったので。

まるでスナフキンのようだ…とか思いながら。
でも、スナフキンというのはもしや、単なる放浪者であって、
特に愛を捜しているのではないのかもしれなかった。
思い至ったが、
なにかしらの精神的な目標を抱えてハーモニカを吹いてくれないことには、
彼は単なる浮浪者になってしまうのであって、
浮浪者なスナフキン…ってのは
ある意味すんなり想像できてしまう可能性があるのだが、
かといって、ひげ面もしゃもしゃオッサンなスナフキンは、ぜひとも拒絶したい。
そこで自分に言い聞かせることには、
赤いマフラーをしてるんだから、やっぱり彼は愛を捜しているんだ。
で、私は赤いマフラーをまだタンスの中に仕舞っているのに、
やっぱり愛を捜している。
…なんだよ。なんか理不尽である。腹が立ってきた。
もう、どこにあるんだよ、愛。

人間、言葉というのを省略したがるくせがあって、
それは時として、とんでもなく詩的なシチュエーションを
勝手に作ってくれるものなのだ。
それは結局のところ、
バイト先の商品、通称「愛」という本なのだが、
それを捜さないことには、
今日の私の仕事はにっちもさっちもいかないので、
問答無用で、
ああ、なんて私は逃れようもなくポエマー、
とか思いながら、しこしこ愛を捜し続ける。

結局見つからずに、社員さんに声を掛けた。
「Yさん、すいません、愛、もうないんですけど、
 ストックありませんか」
「え、あれ、愛、もうなかった?」
この時点で、二人とも大真面目である。
まさに正気の沙汰とも思えない。
ちなみに紛らわしいことに通称「哀」という本もあって、
そっちを捜してないだけましなのかもしれない。
哀は出来るなら捜したくないなぁ。
正気に返るとポエマーすぎて、穴があったら窒息しそうだ。
通称「母」という本もあって、
そこまでくると成り切りマルコになってやる。
「父」もあるが、あんまりそれに対しての感慨はなく、
お父さんというのはどこの世界でも肩身の狭いものである。
Yさんと一緒に在庫を掘り返すと、父と母に埋もれて、
一番下に、
15冊梱包3本の愛が見つかった。

だが、苦労して探し当てたところで、
明日には取次会社に惜しみなく奪われていってしまう運命なのである。
なんとまあ愛ははかないものなのだ。
それはまさに、
小学校の夏休みの自由工作宿題を、1日で作っていったら、
自分の隣の男子の作品が、まる2週間もかけて作った力作で、
まるで、ムンクの「叫び」とレオナルドダビンチの「モナリザ」が
並んで展示されているような状況に追い込まれ、
その中で、1ヶ月も耐えねばならない自分のシュールな羞恥心のような
鬼気迫るはかなさっぷりである。
さて、それのどこがどうはかないんだか
本当のところ自分でもよく解ってないんだが、
とにかくはかないんだ。

はかなさを最後まで確かめるために、
授業を犠牲にすることも厭わず、
明日も終日バイトである。
はかないなぁ。ああなんてはかないんだ。


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ナッキーのサンバイザー姿を忘れない。 - 2001年10月30日(火)

起きたら1時過ぎ。

愕然。
渋谷でふらつくはずが、12時間睡眠に取って代わられてた。
おかげで全身回復を果たしたものの。

…まあそれもありか、ってんで、
ほとんど何もせずに、
いつの間にか渋谷の待ち合わせの時間に。

渋谷タワレコにて、特撮のインストアライブ。
どれだけどうだったか、ってのは、
語るだけ野暮だから、秘密なんだけれど、
両脇をいつの間にやら見知らぬ兄さんにはさまれて、
船酔いのリズムで目くるめくアニキの世界とアニキ臭。

帰宅して眠りについてから、
馬鹿でかい規模で
唄ってるオノレの声に起こされて、
3回ばかり目が覚めた、
とだけ言っておこう。

ちいさいころから、よくフラッシュバックで夜泣きする子ではあったのです。


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昨日のつけまわり - 2001年10月29日(月)

どうも朝から自分の息が酒くさい気がする。
これが妄想なら救いがたいが、
事実であったならもっと救いがたい。
朝の電車のせせこましいなかで、
自分だけが悠久の酒精のかおり。

やはりアルコールが抜けてないのか、
膝がぎしぎし鳴っていて、
肘もごんごん唸っていて、
肩はシンバルのごとく張り、
愛がなければ
私はやかましいドラ、
さわがしいシンバル。
とか肩の重みで錯乱気味に
聖書を突如思い出し、
ページちぎりゃァ軽くて楽になるじゃん、とか
ついでに狂暴な目つきになってみたりして。

とうとう見かねたお友だち二人が、
肩をもんでくれたのでした。
2分ばかりの天国でした。
この2分のために今日学校に行ったようなもんです。

鍼灸に行くことを夢みて、
いててて。

まるで全身パーカッションで
幼稚園のお遊戯みたいだ。
おててをひらひらさせて、
さあ ちょうちょになりましょう。

できないです、先生。
むしろつり革つかむのつらいんです先生。




…ちなみに今日の言語学、
先生はピンクの縦縞ワイシャツでした。


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自分の美術の成績を思い出すと凄まじい勢いでブルー。 - 2001年10月28日(日)

雨。

電車4本乗り継いで、
高校時代のいつものメンツと、
たかはらの学祭に行く。

美大の学祭なんて
さぞかしエキセントリックなのかと思ってたら、
わりと慎ましやかで、こぢんまり品のよい、
まったり空間になってた。
いちばん強烈だった飾り付けは、デザイン系の展示がしてある塔。
中庭を取り囲むような円筒の建物で、
中庭側が廊下になっていて、側面は全面窓なのだが、
異国趣味というか、インド風というか、
その窓一面をぐるりとふさぐように
曼荼羅とお釈迦様が貼られてぺったり笑みおわす。
まわれどもまわれども涅槃風。
階をのぼれどものぼれども常に涅槃。どこからどこまでも涅槃。床にまで涅槃の影がおちる。しかもパステルカラー。
なのになんでカレーを売ってないのだ。惜しかった。
あそこでカレーを食べたなら、きっと何かが訪れる気がした。
その後、お帰りになってくれるかは、保証の仕様もない。

うちの大学で、もし学祭があったら、
きっとこうは統一したイメージにならないのだろうと思った。
もっとなにかこう
怒声飛び交う香港とか北京的力いっぱい満艦飾になるのだろうから、
やっぱり大学のカラーが一番でる場が学祭ということだろうな、
と思う。
そして、学祭をやることができない状態、ってのが、
やっぱりうちの大学のカラーを一番あらわしてるんだろうな、とか思ったら、
無性に可笑しくなってきてしまった。
学祭なくていいから、学祭休みがほしい。

これは秘密なのであるが、
この日はエゴラッピンのライブが体育館でやることになっていて、
たかはらの連れて行ってくれた控え室から、
リハがほんのちょっぴりだけ聴こえてきてしまった。
エゴラッッピンのアンニュイな音を聴きながら、
おでんを食べる。
はんぺんに埃がくっついてる。
おいしい。

夕方まで展示作品見て、食堂でまったりして、
あとは、飲み屋さんへGO!
この連中がみんな20歳を超えて、
こうやってわいわい酒を飲むことになるこの光景、
高校時代は想像できもしなかった。
結局確実に1〜2ヶ月に一回くらいの割合で、
どっかしらには遊びに行くから、
すでに見慣れた光景ではあるのだけれど。
みんな確実に大学でもまれて、お酒が強くなってるのが笑える。
休み時間、ウイスキーボンボン隠れて食らって、
授業中にいい気分になってた連中とも思えん。
飲むわ喰うわしゃべるわ、
でもそのすさまじい勢いは、結局昔っから変わってないから、
阿呆だなあ、と思う。
思いつつ、自分もくだらないこと喋り散らして、
すごい安心してる。
いいな。
馬鹿だな。
くだらないことを言い散らせる環境が
幸せ者の私にはあちこちにいっぱいあって
でも自分のくだらなさを最初に作ってくれちゃったのは
たぶんここだから、
責任をとってください。
また呑みにいきましょう。



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モンブランの頂上から - 2001年10月27日(土)

お昼に仕上がった文芸アンソロジーの原稿を郵送に行く。
これで火曜日までに無事印刷所に到着すれば
あとは本になって送られてくるのを待つのみである。
どんな切り口真新しいきっかり四角の本がやってくるのか、
想像するだけで今から呼吸が変拍子。そして元々高血圧。

2時に田舎モン生まれて初めて代官山に到着する、の巻。
有名なタルトのお店に連れて行ってもらった。
一階がタルト売り場で、
二階のこぢんまりしたスペースでお茶をすることができる。
どのケーキも芸術的なまでに激しく自己主張なさるので、
その演説にいちいち立ち止まりつつ、
結局ぼろぼろになった初志が可愛そうになって、
モンブランタルトに清き一票。

ずっとモンブランが食べたかったのだ。
9月28日。
いつから食べたかったのか、ということすらきっかり言えるじゃぁないか。
そして9月28日、ということは、
あれからもう一ヶ月経つということである。
chocoさまたちとの先月末の関西旅行のときに、
たまたまテレビで1個1000円のモンブランケーキを見てしまったのが
たぶん運の尽き始め。
「モンブラン」という歌があって、
あなたとわたしが丘でピクニックして、モンブランを食べるのだ。
ティーカップ。ケーキナイフ。テーボークロース。モンブラン。
ふたりはそして再び出会うまで、生まれ変わりつづけるのだ。
ティーカップ。ケーキナイフ。テーボークロース。モンブラン。

chocoさまと二人で、これはもう絶対モンブランを食べるべきだべおらおらーッッ、
ってモードに突入してから、
2回ほど、お茶する機会があったのだが、
どこもここも、モンブランには出会えず。
こうなってくると、意固地になってきて、
ティーカップ。ケーキナイフ。テーボークロース。モンブラン。
が揃うまではぜってえ喰わねえぞ、と
大槻ケンヂに誓いを立てたわたくしは、
今日まで幾度もの危機を乗りこえて、
コージーコーナーのテイクアウトモンブランに屈せずに、
もちろんスーパー特売山崎パンの100円モンブランにも勝利を収め、
ここにすっくと立っているのであった。むろん気分は仁王立ち。

で、結局、ケーキナイフはなかったんだけれども。
で、モンブラン、のくせして、タルトなのでぐったり横たわっていてちっとも山ではなかったのだけれども。
で、でも、…うまかった。うまかった。うっまーい!
こらえた甲斐はありました。
生まれ変わって青い鳥になって祝福されて矢で射られても、
結構大丈夫かな、と無責任になれる程度でうまかったです。
で、でもなによりもうれしかったのは、
ああ、これで普通にモンブランが食べられる…!!
という喜びと虚脱感であったのでした。
さあ、伊勢丹地下にある好物のモンブランを買いにいける…いけるんだ…いけるんだぞぉぉぉぉ…

夜、ヤプーズのライブ。
ライブ自体、一ヶ月ぶり。
「赤い戦車」がやっぱり一番好きで、
どうしようもう消えないんじゃないかと思うくらい鳥肌が立つ。
その感覚がすっごい嬉しくて、ライブ通してがんがん跳ねたら、
…両足の付け根がみしみしいってる。
…老化。
帰りの駅の階段上るとき、口の中でちいさく
えっさえっさ、とかつぶやいてた。
……むしろ祭り。むしろおみこし。
重いおみこし乗っけて、けなげな私の足君は、
挙句に自転車まで漕がされて、
泣きそうになりながら家までご主人を連れてってくれたのだった。
ああ、なんとまあ労働者階級は酷使されることだろう。
同情はするがストライキ権は認めてない横暴な主人なので、
そこんとこよろしく。



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この世界はオイラの殻のようだ - 2001年10月24日(水)

左腕のことはどうでもよいのだが、
問題はシャツの右腕なのであって、
肩口から肘にかけてのあたりからどうも説教臭くてそれでいてねっとりと鼻を刺す臭いが
空流に乗って漂ってくるような気がするのは
どうしてなのだろうというのが本日の最重要課題なのであった。

バイト中、人目を盗んで、
右の二の腕辺りのシャツのにおいを嗅ぐ。
やっぱり説教臭い。3秒と付き合っていられない説教臭さである。
しかし、なんだか気になって、5秒後にはまた確かめたくなる。
やっぱり説教臭い。
困った、この中毒性の説教臭さはどこかで出会ったことがあるぞ、
とおもって、必死に嗅覚の記憶を探っていて、
とうとうぶち当たったものがあったのだが、
どうもそれは
中・高校の体育館倉庫の隅でとぐろを巻いて
行事以外の時にはちっとも見向きもされなかった
「綱引きの綱」の臭いそっくりなのであった。
まさか、と思って、
今度は人目を忍ばず鼻を押し付ける。
…つな。
……つなだよ。お前は。

一体、この開襟シャツで綱引きした記憶がないのは、
私がおっちょこちょいだという事実に起因させてしまってよろしいのだろうか。
考え見るに、
これ、ずっとタンスに入れてあったはずなのに、
どうして、こんな体育の秋のような香り付けが完成されておるのだろう。
秋と言えば、様々に秋なのであって、
たとえばこれが梨のにおいであったり、栗のにおいであったり、
本のインクのにおいであったり、革靴のにおいであったり、理科室のフェノールフタレインや酢酸カーミンのにおいであったとしてもちっとも動揺しないだろうが、
…つなは嫌。
あの競技の不毛さったら鳥肌が立つじゃあないか。
だって、ただ綱を引くんだよ?引くだけなんだよ?だから何、とかって思わないのか?
引いたら魚がかかってくるとか、トラックが動くとか、
そういった生産性がまったくないのだ。あれじゃあ力の無駄遣いじゃないか。
綱引きの時に、全国ことごとくその力を集めてポイント溜めたら、
たぶん鎌倉の大仏だって三センチくらいは横にずらせるだろうし、
なんでそれくらいのこと、誰も言い出さないんだろう。
ああ嫌。
なのに、たぶん私は気付かないうちに綱引きしちまったのに相違ないのであって、
鎌倉の大仏がいつまでたっても動かせないじゃあないか南無阿弥陀仏。

脱ぐわけにいかないから鬱憤鬱積鬱血鬱々。


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くちびるがかさかさなのに、リップが見つからない - 2001年10月22日(月)

昼頃からアンニュイ&ナーバスになりつつ
無事4限の演習発表終了。
今日はえんじ色のシャツだった先生からものすごく手放しで誉められて、
嬉しいのを通り越して
哀しくなってきてしまった。
だって、過去2年半の演習発表の中で、
今日が一番準備に時間がかかってないのだ。
時間をかけた授業ほど、
あんまり評価されていないような気がするのは何故?
とにかく、ありがとう。ケストナー。

ところで、今日、迷彩男をみた。
地下鉄の階段を、迷彩色のナイロンパーカを着て、
べージュのチノパンをはいて、
なぜか、パーカのフードをかぶったまま、
迷彩男はのそのそと背を丸めて上がっていった。
そして、よく見なくとも、
彼のスニーカはこれまた迷彩なのだった。
彼ははたして一体何から身を隠そうとしているのだろう。
駅でものすごく目立ってたんだけど。
柱に体ぶつけて、よろけてたりしてたんだけど。
フードなんてかぶってるから。
鉄兜に葉っぱつけなきゃ、サバイバルはできません。
出直してきたら、ぜひとも拝見したいものである。
もちろん地下鉄でサバイバルしてくれなきゃ。
折角の迷彩なんだから、
本来の目的をまっとうしてもらいたいものである。
車内でのほふく前進、ぜひ!




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いや、面白い授業なんだけどね。 - 2001年10月21日(日)

演習の発表が明日なので、
それに8時間を費やす。

題目は「テンスとアスペクト」。
なんだか「てんこちゃんとアントン」みたいだ、
とか微笑ましく思って適当にテーマを選択した自分の浅はかさよ。
ケストナーを怨もう。
ちなみに授業は、
先生がピンクのシャツをお好みになる言語学の授業。
明日、彼がピンクのシャツ着てきたら
…どうしよう。
なんだか追い詰められる。
だってピンクのシャツだ。
ピンクのネクタイも
なんだか追い詰められた気分になるけど、
ピンクのシャツの裾の糸にも及ばない。
ああ、全身ピンクのシャツで
もし追いかけられでもしたら!
気が遠くなっても、
ひくひくと目の裏の血管辺りにピンクがちらつく。

夕飯に
大根の葉の炒め物が出たので、
凄まじい勢いでご機嫌になって、
すこしケストナーを赦そうかと思う。
あがぺーあがぺー。




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ねこまつり - 2001年10月20日(土)

今日は右足が攣って
いい塩梅で
あえぎながら目が覚めて一日のスタート。

kanocoちゃんとマラバールでランチを食べて、
いい天気だったので散歩した。
猫だらけの公園で、
二人でブランコに乗って、
いい気分で漕いだ。
もっと高く、もっといっぱい!
…って思ってたら、

酔ったよ。
ああもう。






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こいのはなし - 2001年10月19日(金)

こい【鯉】
 世界に広く産する、こい科の淡水魚。口は小さく二対のひげがある。
 観賞用・食用。変種が多い。
  ---from『岩波国語辞典』

ビジュアルが浮かんだ。
ことごとく楽しい気分になってしまった。ひげ。ひげがあるのか、こいは。
…しかも二対! …ぴろーんと二対!!
あまねく世界に二対のひげ。

こい【鯉】
 コイ科の淡水魚。フナに似るが、口の上に長短二対のひげがある。
 マゴイ・ヒゴイ・ニシキゴイなど。食用・観賞用。
   ---from『新潮現代国語辞典』

しかもアイデンティティとしてのひげ。
フナと判別すべきがためのひげ。しかも口の上らしい。長いのと短いのと
さんざめいて。
ひげの生えないこいはどうするのだろう。フナとしての魚生を送るのであろうな。
きっと迫害と苦難の魚生に違いなく、
まちがわれて野猿に歌われちゃったりするのだ。
こいだかフナだかいまいちはっきりしないおまえは、一生をしがない淡水魚として過ごすのである。
それは実にしがないのであって、びっくりしてのけぞっちゃうくらいにしがないのであって、
しがないコンテスト第十八位くらいであって、
ちなみに植毛は第十位の商品であった。
要はひげだからこそあえて滝登り。

こい【鯉】
 池などに飼う大きなさかな。ゆうゆうとおよぐ。食用または観賞用。
   ---from『三省堂国語辞典』

感銘を受けるこちらを嘲笑するかのように、こちらはすごい。すさまじい。
ひげなんぞどうでもよいのであって、大きけりゃそれでいいのであって、
ゆうゆうおよげばそれはこいなのである。
そんなのでどうこいを判別すりゃあいいのだ、と
途方にくれるかもしれないが、それはそこ、親切を見逃してはいけぬのであって
食用。なのである。または観賞用なんて申し訳程度に添えてあるが、
あからさまにメインは食用。なのである。
こいかどうかわかんなかったら、まずは食ってみなさい。
さくさくと食らって考える。
それが基本である。
そして食べて理解できたときに、
そこにあるのは鯉こくかあらいなのであって、
それはすでにこいではないのである。



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プレゼント前だおし - 2001年10月18日(木)

あまりに寒いので、
とちくるったサンタ色の
もこもこパーカーを引っ張り出してきて
傘さして3限をさぼった。




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資本主義 - 2001年10月17日(水)

茶封筒に社名の判子をえんえん押しながら、
私の商品価値とはなんだろう、
って考えていた。

今日みたいに会社に3時間もひとりで放置されると、
当然書店のクレームを
一人でさばかねばならない時があるわけで、
そんな時、今まで自分が
いかに判断せずに生きてきたかが分かる。

もちろん出先の社員さんに電話して、
対応を聞くことは出来るのだけれど、
でも、その先は、
やっぱり一人でさばかねばならない。
書店さんに電話を返して、理由を説明して、
その上でこれからのことを相談する。
そばに誰もいてくれないわけで、
顔も見えない相手が、
予想外の反応を返してくる可能性もあるわけで。

私はものすごく静かな恐慌に陥いる。

そういえば、今までのバイトといえば、
模試の採点なんてマニュアルどおりのものや、
塾の講師なんていう、
相手に分かるようにただ自分の経験知を説明すればよいものや、
そんなものしかしてこなかった。
学校の生活では、いくつかの選択肢の中から選んで、
それで自分が選んだんだぞ、って自惚れていればよかった。

お前は今まで自分で考えて決断してきたのか。
本当に考えていたのか。

大人になることを強烈に突きつけられている。
自分で判断して動けと。

今日こうやって、私がてんてこまいしていることにも、
当然、業界の暗黙のマニュアルってものがある。
ただ、そのマニュアルは、
私が今まで体験してきたものよりも、
少し高度になって、項目数も多いのだ。
その溢れ返る項目の中から
瞬時にして必要なものを自分で考えて
ピックアップして、アレンジする能力が求められている。

それだけのことが、私にはひどくしんどい。

甘ちゃんである。
慣れればいいと分かっているのだけれど、
子どもを引きずっている私には、
それがひどくこたえる。
色々な人の手間や時間や信用で成り立っている世界だ。
これくらいでいいだろう失敗したってバイトだし、なんて、
そんな簡単な考えで済まされるようなものではないのを体感している。
かといって、
甘えを捨てるのは、容易なことではない。
ねえ教えて。どうしたらいいのか教えてよ、って内心が言ってる。
たまらない。

企業は、その人間の商品価値に対して
お金を払って雇うのだ。
私にどんな商品価値があるんだろう。
封筒の判子を押し終わって、封筒を仕舞って、
それでも自分に判を押すように考え続けた。
考えなければ。
身に付けなければ。



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数学A - 2001年10月16日(火)

ピタゴラスの定理。
メネラウスの定理。
チェバの定理。
方べきの定理。
三角形の五心。
アポロニウスの円。

聞いたところで
なにがなにやらわからずっぷりが
かなり素敵だ。

ピタゴラス、ってのはなんだかわかる。
メネラウス、とかチェバ、ってのは同じく人名。
その下の「方べき」ってのは、
じゃあやっぱり人名。
「三角形の五心」ってのも、当然人名。
「め組の大吾」みたいなもんか。
アポロニウスの円、ってのはなに。
アポロニウスの円さん。
国籍不明で入国管理法違反不法滞在歴56年と7ヶ月。

数学用語というのは、
その言葉を聞いても正しいイメージをもたない人間にとっては、
かなり詩的だ。

とか格好つけていってみるが、
要は塾の講師バイト中、ひまでひまでしかたなかったんです。


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たまにはドキュメンタリータッチ - 2001年10月15日(月)

0:37
Kちゃんと文芸アンソロジーの表紙について電話。

0:58 
キリーと印刷所についての電話。
サークルと何の関係もないのに印刷所の世話してくれるキリーほんといい人。

1:47 
頭痛最高潮。仕事が手につかないので仕方なくドーピングしてふとんにもぐる。
手の震えめまい吐き気悪寒。
このまま眠ったら果たして目が覚めるんだろうかと思う。
まあいいか二度と目が覚めなくたって別にねとあっさり結論。
こんな時の自分はほんとにどうしようもない。

4:13 
紙について相談したいという私からのメールに気付いた
たかはらから連絡。電話口で事情説明し、
印刷用紙名リストを書いて、あらためてメールを送る。

4:41 
寝なおそうと思ったところ、ケータイに出会い系サイトのメール。
2秒で消去。寝られず。憤怒。

6:15 
起床。

6:35 
歯を磨き続ける。頭すっきりおきてよかった。さあやってやるぜ。
頭にムースをべたべたつける。

6:42 
メールチェック。たかはらからの返事がきてる。
あちらは徹夜で仕事してたんだろうに、それでもこちらに時間を割いてくれた。
ちゃんとした本を作らないと申し訳がたたない。

7:16 
特撮アルバム「アジテーター」with MDヲークマン。
「よぎなくされせざるをえない」 何度も呟きつつ電車に乗車。

7:25 
昨夜の頭痛を思い出す。あれはひどかった。
今まで自分は丈夫だとばかり思っていたが、もしかして、意外と病弱なんではなかろうか。
病弱、それは文人のステータス。病弱…病弱!! 
ちょっと御機嫌。

7:31 
「やってられっかー」というオーケンの叫び。
やってられっかー。便乗してつぶやく。うそうそ。

7:42 
ゴスロリちゃん、綱渡りから落下。

8:32 
大学前の交差点。 
突如、自分はなんて多くの人に助けられてるんだろうと実感。
ずんときた。

10:45 
遅れて公務員対策就職講座へ。

11:49 
会場の隅で所在無く座りながら、さっきから
社会の落伍者という言葉が浮かんでしかたない。伍という字が良い。
今から私は伍だ伍。落さえつきゃしねぇ。

12:42 
キャンパスで響さん偶然ゲット。ベンチで昼飯サーモンサンド。伍だ伍。

14:09 
授業中。1943年 0.7%。…でも何が。

14:37
「恋をわずらうなんて ひどくわずらわしいこと
恋をしてしまうなんて 思いもしなかったこと
 恋をわずらう人と 恋がわずらわしかった人
 それでも会いたいなら これを何と言えばいい?」
恋わずらい。
クラムボン。
私が男だったら絶対郁子ちゃんを彼女にするね。
って前、みかんちゃんに言ったら、「できたらな」って言われた。
…正論はいつでも痛いね。
「君をおもいこむ僕は僕じゃない」
ほら、やっぱり痛いね。
インクジェット用紙400枚購入。

15:23 
いきなり演習発表のコメンテーター役を指名される。
クラスメイトの発表を1〜2分でまとめろと。
お題は「シニフィアン」と「シニフィエ」。
どっちかが記号表現でどっちかが記号内容。それくらいは知ってるよ。だけどさ。似てるんだよ。フランス語却下。ソシュールへの殺意。「犬」という例を使った。四足で耳ついて尻尾ついてバウワウ言ってだらしなく出た舌をひっぱりたいのがシニフィエ、inu、犬、dog、Hundって音と文字がだらだら流れてく幼児プールみたいなのがシニフィアン。犬。inuinuinuinu町田町蔵。

先生は憐れみのこもった目で、「混乱しますよね」といった。

16:02 
昼に暗い声で電話してきた後輩のS君と、再び電話。
今度は打って変わって明るい声で、原稿が上がったという。

16:11
響さんと感動の再会。三途の川で別れた親子のように再会を喜びあう。

17:29
前の席の男の子がすごい勢いでいきなり肩の骨を鳴らす。
「ホネホネロックは赤鬼どん」というフレーズが吸着発生。
「つのつのいっぽんやろ!」というひとりつっこみは疲れたが、
赤鬼どんが骨骨ロックならば、青鬼どんはどんなロックなのだろう。
私の前の赤鬼どんはムラサキのチェック柄シャツを着ていた。茶色い裏なめし革のかばん。

17:44
フグ中毒で死んだ縄文人。

18:09
授業を途中で退席。ものすごい罪悪感。これはいっぺん体験しとかないと。

19:28
新宿世界堂。
もうかれこれ30分以上、えんえん紙売り場で紙見本を見てる。
本の表紙に使いたい紙のだいたいの目星をようやっとつける。
印刷屋さんに入稿するための原稿用紙を選ぶ。
オフセット印刷本なんか作ったことないから、これもさんざん迷って購入。240枚。
ついでにツルのポストカード購入。

20:16
どうしよう!
目の前にART-SCHOOLのボーカルの木下君がいる!
新宿タワレコで普通にふらついてる!!
…いや、たしかに普通の人なんだけどさ。でも木下君なんだ!
どきどきした。でも声は掛けられなかった。
だって…彼女(らしき人)づれ。
そーんな失恋レストランっ、とか呟きながら、彼女もちゃっかり観察。
可愛い普通の女の子だった。普通具合が嬉しい。木下君、いいセンス。
木下君、ふつうに笑って話してた。木下君も普通に可愛かった。
ellegardenの新譜購入。

21:37
地元の駅に着く。寒い。

23:00
校正用のアンソロジーの仮原稿のプリントアウトを開始。

23:59
まだまだケイゾク。 


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大往生 - 2001年10月14日(日)

テレビが病気になって、
1日の起きている時間が短くなって、
とうとう1日5分しか意識が戻らなくなって、
あとは暗いブラウン管の中で、
昔好きだった番組のことを思い出しながら、
ずっと昏睡してるようになった。

それではこちらはどうしようもないので、
慌てて新しいテレビを買いに走った。
それでも昏睡状態のテレビは、
もう世界をうつさない。
うつす必要もない。
複雑な管と回路の中には、
世界が焼きついている。
同化してしまった。
だったらテレビに戻る必要なんてどこにある?

ねむりつづける。
少しだけ、うらやんだ。

享年14歳。


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東北伝統土産を飼う。 - 2001年10月13日(土)

寝返りを打ったとたんに
左足に衝撃が走って、
手で空を掴んで目が覚めるなんてちょっとカッコいい映画みたいなことやらかして、
声が出ねえよ。

ふとんの中で背中丸めてあえぐも、
意識は回転落下。
ふくらはぎ硬直。
何したらいいんだかわからないから、
とりあえずパニックランドに陥ってみる。
みごとにつっぱっているのだが、
あまりのみごとさに気付かないくらいの激痛で、
要はこれを「足が攣った」と人は称するのであろうが、
寝ていていきなり激痛に襲われた私が、
そんな単純なものに安眠を邪魔されるはずがないのだ。
ちなみに冬になると、
よくこのような現象に襲われて、
そのたんびに無声絶叫して、痛いという言葉も思い出せなくて
ときたま手でがんがんと壁をなぐって家中を叩き起こすという、
かなり陽気な習慣があるのだが、
だが、そんな単純なものの存在なぞ信じちゃいけない。

ぜったい自分の足が木になってしまったのだ。
変身ヒーローみたいに変身しようとして、
左足だけ抜け駆けして変身しようとして、
しかもなぜだか木に変身しようとして、
でも人間から木っていうとあからさまに
構成要素が違うのであって、
まあ水分は良いのだが、
たぶんたんぱく質辺りがいけない。
混乱した元素の摩擦衝突現象に違いないのであって、
たぶん世の中の変身ヒーローはカメラの回っていないスーツの中で、
このような激痛を耐え忍んで、
口から硫黄を噴いたり温泉卵を剥いたりほくろから笑い声を出したりしているのであった。
まあそんな職業病はどうでもよいのであって、
職業でもないのに苦しんでる自分が哀れなのであって、
たぶんこれがおさまったら私は確実に木の足を持つのであって、
ああこけしを作ろうと思うよ。

つま先をゆっくりと、タオルケットに押し付ける。
恐慌を噛み潰して、のびた筋を押し戻す。
ふうと何かがやわらかく抜けていく。
すとん、と意識が回転をやめた。
その後の記憶はなし。

でも終日歩いていて、
左足の中に
ぎこちないこけしのけたけた住まう気配。


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散乱 - 2001年10月12日(金)

朝起きたら、
いったいなんで自分がおきてるんだかわからなかった。

とっさに枕元のケータイを握りしめて、
なんで自分はおきてるんだかという一大事について
誰かに可及的すみやかに理由を問いただそうとしたが、
ケータイの液晶が指す時刻は6時29分。
さすれば、私の普通の友人さんたちは
熟睡のお時間だし、
ネットジャンキー系の友人さんたちは
やっぱりそろそろ就寝のお時間。
よのなかに私の相手をしてくれる人間なんて、
誰もいないのであった。
嗚呼なんとわたくしはまるで食肉解体作業工場でぶらさげられたままの牛の頭のように孤独なのであろう。
1限のばか。

今日は、部室とキャンパスを、
なぜか4往復もした。
テンパっていても、仕事ははかどらない。
だからその隙にやろうとするのだが、
やってもやってもやることだらけで
心象的にはちっともはかどらないから、
テンパったふりをするのが少し楽しくなってくる。
ところがわたくしの友人たちときたら、
わたくし以上によっぽどむかしから多忙なのであって、
自分よりも頑張っている人に愚痴なぞこぼす恥さらしにはなれないのであって、
さすれば結局よのなかに私の相手をしてくれる人間なんて、
町田康の小説の中のいかれたニイチャンだけなのであった。
嗚呼なんとわたくしはまるで今の顔に整形する前の元キティーちゃんの赤鼻のように孤独なのであろう。
マイケルジャクソンの新譜が出たらしい。
店頭で、「UH!」とか「FU!」とか言ってるのを聴いて、またしてもわたくしは嗚呼何とわたくしはまるでミッキーマウスがドナルドダ


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大興奮 - 2001年10月10日(水)

おもしれえ。
おもしれえ。

おもしれえよ、町田康!

今まで滞納してる日記を書くまでは
次の日記は書かないぞ
とか決めてたんだけど、そんなこと知るもんかってんだ。
でもそろそろ日記書きたいなー、
[今日みたいに十月のどしゃぶりの冷たい雨のなか、
AJICOを聴きながら傘をさすのがいいのだ]
とか気どって書こうかと思ってたんだけど、
んなもんカスだ、カス。固めるテンプルにまとめてフォンデュみたいにどっぷりつけてポイだポイポイ。ロケット花火の先にくくりつけて猿の惑星まで飛んできやがれこんにちわコーネリアスさようならUA。

まだ『夫婦茶碗』一編読んだだけだけど、
次の話を読むのがもったいなくって
でもいてもたってもいらんなくって
しばらく時間をおきたいから日記でも書いてやる。

一体全体なんでまた今まで読まなかったんだろう町田康。
ここまでえらい時間を浪費した気分だぞ。
いや、浪費してる。あからさまに無駄だ無駄むだ大学の1限のように無駄この上なし。
あーもったいないうーもったいないぐーもったいないくうっっ返せっっ!

椎名誠や宮沢章夫を初めて読んだときのことを思い出した。
カミュの「カリギュラ」とか。
そこを抜けると
さかのぼって京極夏彦や、
もっとさかのぼって原点の星新一にたどりつく。
好きな話に出会うと、体がわかる。ぞわぞわしてる。
自分の中で
すげー
すげー
すげー
どつぼにハマってとっぴんしゃんで抜け出てこなくて
すげー

しあわせ。

ひさびさにほんとに面白い本を読んだよ。
こういうものにひょこっと会うから、
本を読んでるんだろうな、と思った。
面白い本に飢えてる自分に気付いたよ。
最近では『毒草を食べてみた』以来のヒットでした。
不条理モノ、バカモノ好きには諸手をあげてオススメです。

とにかくうまいのだ。
だって、話の筋らしい筋がほとんどないのだ。
終始ノイズに塗れた雑文迷走タイフーン。
なのにあっという間に偏執的世界にひきずりこまれて
ずるずる這い出てくる不条理ナマモノにまみれていって
仕舞いには自分までナマモノになって
「ちゃ、茶碗ウォッシャー…うおっしゃー」なんぞとぶつぶつ呟くオノレ。

そしてとにかくすごいのだ。
電車の中でのオノレの挙動が。
読みながらにして、顔面痙攣嗚咽奇笑。
すっかり新種の病気にかかったようにしか思えない容態で。
不精して4ヶ月も美容院に行かなくって、
前髪で顔が半分隠れる鬼太郎じみたなりになっててよかった、と
これほどまでに痛感したことはございません。
なのに、ラストにいたって、
妙な具合にずーんとくる得体の知れないこの感じ!!
いいね。最高だね。最高に馬鹿だ。あー馬鹿だしみじみと馬鹿だスーパーマンの髪型並みに馬鹿だ。

さあ。
そろそろ続きにかかるとするか。
いっぱい読もう。
きめた。




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