DiaryINDEX｜past｜will
| 2003年06月30日(月) | 新しい1年は子どもたちの表現活動がテーマ！ �癸� |
『子ども達の生活体験、表現体験を年齢に応じて豊かに保障し、それらの活動を通じて子ども達の社会参画を実現することを目的とする。』
これは、NPO法人子どもネットワーク可部のミッション(目的）です。
また、その目的を達成するための事業の一つとして「想像力をはぐくむためのワークショップ、表現活動を実施する。」と定款に掲げています。
☆その１ 南中ソーラン☆
5月から始まった『南中ソーラン』の練習は、現在4回目を終えました。最初は見学だけ…のつもりで来ていた数名の子ども達も、気づいたら、しっかり練習に参加しています。
思うように動かない自分の体や、激しい動きに戸惑いながらも、一生懸命汗を流しています。
ソーランの練習に指導者はいません。
これまでに踊っていた中高生達が、初めての子ども達の前で踊り、一つ一つの動きを確認しあいながら、互いに学びあっていくのです。
この踊りは、休むところの全くない振り付けになっています。
お手本を示してくれる経験者の子ども達のほうが、初心者の子ども達の倍以上の汗をかき、体を痛めながら踊ってくれます。
その先輩達の踊りを目の当たりに見た後輩の子ども達は、単純に感動し『あんなふうに踊りたい！』と思いながら、黙々と（？）練習に励んでいくのです。
その中には、学校や地域で、他者とのコミュニケーションをつくるのが苦手な男の子も混じっています。彼は、休憩時間が終わるたびにグズグズ言ってなかなか練習を始めようとしません。練習室の床に大の字になって寝そべっては、お兄ちゃんやお姉ちゃん達を困らせています。しかし、そんな彼を、中高生達は4人がかりで、なだめたりおだてたりしながら、気長に、けれども決してあきらめずに『一緒に踊ろう!』と誘い続けます。
それでもなかなか動こうとしない彼に、私が『いやなら踊らなくてもいいんだよ。でも、しんどいのは君だけじゃない、みんなしんどいんだよ。もしも、これから先も踊りたいなら、今、君がサボったら、その分だけみんなから遅れてしまうよ。それでも良いなら、好きなだけ休んでいなさい。』と、しっかり彼の目を見ながら言うと、彼は真剣な顔をしてうなずきながら立ち上がって練習を始めたのです。
今の子ども達は、さまざまなところで、常に他者と比較され、評価に去らされて生活しています。
しかし、私達の表現活動は、学校の行事でもなければ、子ども会やスポーツ少年団でもありません。
やりたい！と思う子ども達が自分の意思で集まってきているのです。また、いくら頑張ってもそのことで他者と比較されたり、何かの評価を受けるわけではありません。
頑張った結果の達成感は、自分自身に対してのご褒美であり、頑張れなかったときに悔しさは、その子ども達一人一人にとって、次の取り組みへのステップになるのです。
これまでにソーランに参加した中高生たちはそのことを誰よりも身をもって経験しています。だからこそ、その達成感を彼にも味わってもらいたい…いいえ、一緒に味わいたいと思うからこそ、自分の練習はそっちのけで、彼に関わってくれるんだと思います。
今回の取り組みで、彼自身がどこまで頑張れるかどうか…それは私にも分かりません。しかし、このソーランの練習の時間が、今の彼にとって確かに居場所になっていることはまちがいありません。
今回のメンバーに、前回の取り組みのときに、途中で練習に来なくなった中学生の女の子がいます。
前回の取り組みの時には、中学1年生だった彼女は、前述の彼と同じように、練習の合間にグズグズ言って、なかなか親権に関わろうとしませんでした。元来、人懐こい性格で、私たち大人に「おばちゃ〜ん！」と甘えながら話しかけてくれる優しい彼女だったのですが、その頃は学校生活やクラブ活動で何か悩みもあったようで、色々なことに集中して打ち込むことができず、結局、舞台にも上がらず、中途半端なままに終わってしまっていたのです。
しかし、今回の取り組みのことを知ると『本番に出なくてもいい?』と言いながらも、自分から参加してきたのです。
そして、今回はまるで人が変わったように黙々と体を動かし、もちろん休憩時間にもグズグズいうこともありません。それどころか、1回目の練習が終わったときに『おばちゃん、弟も誘ってみようか?』とまで言ってくれました。
『家では反抗期なのよ…』というお母さんの言葉とは裏腹に、とても素直に先輩達や大人の言葉を受け止めています。残念ながら、弟の説得には失敗したようですが、彼女自身がこの練習に参加して何かを感じてくれたからこそ、そういう気持ちになってくれたんだと思います。
この2年間で、彼女の心にどんな変化があったのかは分かりませんが、彼女は今回の取り組みでは、きっと最後まで投げ出さずにやり遂げてくれるでしょう。
今回の彼女の成長ぶりを見て、その子ども一人一人が、その子どもの必要なときに参加できる居場所としての表現活動の意味を改めて考えさせられました。
経験者の中学3年生のお兄ちゃんとマンツーマンで練習している小学校5年生の男の子がいます。
彼は、何よりも遊ぶのが大好き！夏になると、時間を忘れて真っ暗になるまで遊んでしまい、いつもお母さんやお父さんに叱られるのですが、それでもつい、われを忘れて遊んでしまいます。
そんな彼に、ソーランを踊ったら少しはしゃきっとするかも…という淡い期待を抱いてお母さんは参加を勧めたらしいのですが…
練習の最中も、お母さんは、彼の動きの一つ一つが気になるらしく、『腕が伸びてない！腰の入れ方が違う!!』などと、つい口が出てしまいます。
そこで私が『見学に来ているお母さん達に言っておきますが、練習中だけじゃなく家に帰ってから、踊りのことで子ども達に色々と注文や注意をするようでしたら、次からは一緒に踊ってもらいますから!』と言うと、『とんでもない！踊れません!』と、慌てて口にチャックをしたのですが・・・どうしても気になって仕方がないようです。
でも、今回、彼は、最初はちょっとグズグズ行っていたのですが、経験者のお兄ちゃんの踊りを見て、すごく感動したらしく、普段の彼なら絶対にグズグズ言いそうなものなのですが、文句一つ言わずに黙々と練習しているのです。
3人兄弟の2番目で、お姉ちゃんと弟に挟まれている彼にとって、かっこいいお兄ちゃんの出現は、私達の想像以上に衝撃的なことだったようです。
今回の参加者の中で一番小さい彼ですが、一緒に踊ってくれているお兄ちゃんも最初に参加したときは小学校5年生でした。
彼にとっても、その頃の自分を見ているような気がするのでしょうか、中学に入り『最近体を動かしていないから、うまく踊れませんよ…』と言いながら、思春期に入ったことも手伝って、最初はしぶしぶ付き合ってくれた彼も、大粒の汗を流しながら一生懸命食いついてくる5年生の男の子に引きずられるようにして、毎回の練習に積極的に参加してくれています。
私達の活動に参加する子ども達は、年齢はもちろん学区もさまざまな地域から集まっています。
もちろん、同じ学校の友達が、誘い合って参加してくることもありますが、それぞれの取り組みで初めて出会う子ども達がたくさんいます。
私達の活動に参加していなかったら、決して出会うことのなかったかもしれない子ども達が、同じ目標に向かって、体を動かしたり、話し合いをしたり、キャンプや交流会などの企画を考えて実行する中で、さらに新しい出会いを作っていきます。
人が人として育っていく過程で、どれだけたくさんの人に出会えるかということはとても大切な栄養素の一つだと言えるでしょう。
私たち大人は、その出会いのお手伝いをしているのだと言えるかもしれません。
| 2003年06月16日(月) | 『月光の夏』考 |
今から約10年前、『月光の夏』という映画の自主上映会を企画したことがある。
ご存知の方もあるかと思うが、戦争中に特攻隊に入隊した、芸大の学生二人が、明日が出撃の日と決まり、死ぬ前に、もう一度だけグランドピアノが弾きたい・・と、鹿児島の知覧の基地から、ピアノを探して、訪ね歩き、ある小学校で、グランドピアノに出会って、最後の思い出に・・と『月光ソナタ』を演奏し、翌日出撃していったという実話を基に作られた映画である。
戦後何十年もたって、体育館の隅に放置され、ぼろぼろになったピアノが廃棄処分になると聞いた当時の女性教師が、ぜひそのピアノを譲り受けたいと申し出て、そのエピソードが明らかになり、ラジオ番組やテレビでも取り上げられ、話題になった。
10年前。。まだ、日本は今ほどきな臭くはなかったが、戦後半世紀が過ぎ、人々の記憶から戦争が消えてしまうことを恐れ、鑑賞を通じて、子どもたちにさまざまなことを伝えたいと活動をしていた私たちは、せっかく取り上げるのであれば、『自分たちの思いがきちんと伝わる作品を選ぼう！』と考えて、この作品に取り組んだ。
当日は、2回上映したのだが、実際に特攻兵だったというお年寄りなど、沢山の地域の方々や子どもたちが参加してくれて、大成功を収めた。
とりわけ、私たち実行委員を感動させたのは、会場の担当者の方が、1回目の上映のあと『舞台にピアノを出しましょう！』と、使用料も払っていないのに、好意で、グランドピアノを置いてくださったことだった。
その後、私たちは、数年に1度、映画会を企画し、そのたびに、『ベトナムのダーちゃん』『月桃の花』などの戦争をテーマにした作品に取り組んできた。
そして、先日の委員会でのこと、
次年度に向けて、私たちの会はこれからどのように活動を展開させていくべきなのか、そのためには、それぞれの委員が、この会の活動を通じて何を達成したいのか・・という話になり、
一人の委員さんが、『私は、やはり平和について考えて行きたい・・』と発言したのを受け、他の委員さんが『私たちの会は、これまで、戦争にこだわって映画の上映会を企画してきたが、最初に企画した“月光の夏”から10年の歳月が流れ、見ていない人も沢山いることなので、もう一度あの作品を企画してはどうか？』という意見が出た。
その場に居合わせた委員の中で、『月光の夏』を企画したときに会員として活動していたのは数人で、半分以上の委員が、見ていなかった。
そんな中で『ぜひ、もう一度あの作品を上映しましょう！』という声が大きくなったのだが。
私には、一つの危惧があった・・・
確かに『月光の夏』は、とても優れた作品だと思うし、製作者の意図も反戦・平和への祈りを込めたものだと思うのだ。
しかし、内容としては、主に戦後生き残った人たちの心理描写に重点が置かれていて、『ベトナムのダーちゃん』や『月桃の花』のような戦争の悲惨さを訴えるような映像は少ない。
それはそれでよいのだが、私がどうしても引っかかるのが、主人公の一人である、特攻兵が小学生たちに残したせりふの中に『僕たちは、君たちが幸せになるために、逝くんだよ』という一節があることだ。
もちろん、映画の全編を、きちんとした視点で見れば、死んでいくことへの矛盾に悩む特攻兵たちの苦悩や、生き残ってしまった元特攻兵の苦悩などが描かれている。
しかし、まかり間違えば、この作品を上映することが、かえって戦争を美化し、肯定したがる人たちに悪用されかねないと思うのだ。
委員会では、そんな私の思いも伝え、だから、上映会をしないというのではなく、自分たちがどのような意図で取り組み、子どもたちに何を伝えたいのかという意思表示を明確にした上で、企画していかなければいけないのではないか・・・と話したのだが。。。
こんなことを心配しなければならなくなった、今の社会情勢に、無所に腹が立って仕方がなかった。。。
