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終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2002年09月28日(土)

霊安室にて。

1:
それほど広くはない。
六畳――四畳半。
床と壁面はタイル張り、換気扇はつけっぱなし。

真四角な部屋の突き当たり、キャリアーのような台ひとつ。
そのうえには灰色のビニールシート。
左手には神棚。「萬界之霊」のなんちゃらと書かれた位牌。
脇には棚。ピンセット、器具、脱脂綿。
足元にはゴミ箱。検案に使われた薄いビニールの手袋が幾つも。


2:
「死」の確認は、医師でなければできない。
なので、死体はまず、現場から病院に行く。(腐乱やホネでなけりゃ)
運ぶのは葬儀社の車が多い。病院で「死」を宣告される。
晴れて死体となって、さて警察署へ。

署にて検案する。
他殺でないか、究明すべき死因はないか。
司法解剖も行政解剖も必要でないとされたら、
遺族に下げ渡される。

他殺の疑いがあれば司法解剖、
究明すべき価値のある死体であれば、行政解剖。
あらゆる傷、眼球圧、皮膚の乾燥、腐敗の度合い。
死体は死体の方法で語り、検死官が書き留める。

――霊安室で。


3:
この立方体の空間で。

あたりまえだが、腐った死体は臭い。
一時間も一緒にいれば、服に匂いが染み付く。
鼻が麻痺してるから本人はいいが、そのまま家帰っちゃダメだよ。
果たして、警察署には洗濯機がある。

人は二度死ぬという。
だが、そうだ。

人は母胎から出て「生」を宣告されて人として生れ落ち、
「死」を宣告されたとき、人は「死体」として生れ落ちる。
そこには一つの変容がある。
――分解と消滅の過程。


4:
霊安室には、異世界の「生」がある。
死者は「死」を生きる。

恐ろしくはない場所だ。
そしてどちらが幸福なのか。

答えないのは青ざめた死体。


-

- 2002年09月27日(金)

吉報が届いた。
弟が大学に受かったらしい。
第一希望だとのこと。
よかった。

弟は。
うーん、弟は。
ついこの間までつついたら泣いた程度のイキモノだったので(コラ)
あんまりよく知らない。
歳が離れているからなあ……。

うちの弟は、音楽が好きで、そこそこ男前で、そこそこ勉強もでき、
体操部でブロック大会まで行ったくらいだからスポーツマンである。
典型的な青少年じゃないか(砂)
そりゃあ、シンクロしないはずだよ(血)

家族みんなそうだが、弟のことは大事に思っている。
理解するなんてーことは、そんなに必要じゃあないかもしれない。
あんたが喜んでると、私も、うれしい。

あんたが望むように、生きれることを。
できるだけたくさんの日々を愛せることを。
姉ちゃんは、望んでるよ。


……でも居候されんのはイヤだ……


-

- 2002年09月26日(木)

夢や幻。

1:
家族の「絆」は酔いである。
「友情」や「愛」は酔いである。
「価値」や「主義」は酔いである。
「義務」や「権利」は酔いである。
「憎しみ」や「悲しみ」は酔いである。

――……人間が生きて死ぬ以外に、ほんとうなどはない。


2:
と、思いっきり醒めてみた後に。

何もかも捨ててしまうことなどできない。
醒めきって生きることは、およそ人間にはできない。

だから、酔っていていい。
醒めないことを切実に祈りながら、酔っていい。

酔ったモン勝ちだもの。
そら、アラブ人が祈ってた。

我らの望むは、「幸福な死」――とね。


3:
きみを「愛してる」と言い切ってしまおう。
きみを「思ってる」以外に言えることなどなくても。

あるひとつのことを「信じてる」と言い切ってしまおう。
それが「現実的だと思ってる」以外のなにものでもなくても。

眠りたい。酔いたい。
目覚れば全方位に星。
眠ろう、酔おう。


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- 2002年09月23日(月)

「サイン」という映画を見る。
ネタばれがあるので、まだ見てない人は見ないがよろしい。


1:
宇宙人が撲殺されるという、前代未聞の映画であった。
――しかも木のバットで。

メル・ギブソン……借金でもあったのか?!
作品選べないくらい困ってたのか!?


2:
恐怖を「見せる」には無量の手腕がいる。
人間の恐怖を駆るのは、例えば原始の夜の闇。
暗闇の物音。壁を叩く音。犬の吼え声。
――見えざる。

人間の理性の考え出した怪物、名づけた魔物は、
そんなものちっとも恐くはない。
姿見せたもの、素性を明かにしたものが、どうして恐いわけがある。
理解できぬものだけが非の打ち所なく恐ろしいのだ。


3:
映画が作品である限り、狙いは定められていなければならない。
副題や奇想はちりばめられてもいいが。
それは確かに物語に深みを与え、作品世界を豊かにするが。

だが、狙いは定められていなければならない。
輪郭と枠は定かでなければならない。
ブレている。それでは少しも何も聞こえないわけだ。

ファミリーものにするならするで、も少し考えてくれ……(ぐったり)


4:
……まあ、面白かったけどな。
トンデモで。


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- 2002年09月20日(金)

泥。

泥か。
ここにあるのは泥か。
もういい。
今年も年を拾おう。

そして墓場までの道のりを。
――数えて。

泥か。
星だとも。

悪をまた善をわたしは見つめる。
泥をまた星を抱く。

時よ終わるな、私はまだ先へ行く。


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- 2002年09月18日(水)

暗い。

1:
クラシックの演奏を聞く機会があった。
――……仕事である。(ふ)

なんだっけ、ワルツ。
あ、そうだ。メリー・ウィドウのワルツ。
聞きながら、ああ、このワルツは、と、思った。
ああ、このワルツは、人間には踊れない。


2:
よい、と、感じるものは。

人間には踊れないワルツ。
歌えないアリア。
笑えない微笑。
飛べない跳躍。
口にできない言葉。
眠れない眠り。

非人間的だ。


3:
人間から生まれながら、どうしてこうも人間には不可能なのか。
芸術とは奇妙だ。
人間とは奇妙だ。

肉と霊。
肉に根ざし、霊に花咲く。
なるほど。


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- 2002年09月15日(日)

善意と人間社会の軋轢(んな大層な)

1:
と、ある日の夕方のことだった。
私は外回りから戻ってきて、社に上がったのだった。

社ではその日の泊まりのH先輩(女性)が仕事中。
H先輩は上品でのほほん。
服はたいていちょいお洒落カジュアル、化粧は薄め。
かわいいと言われるタイプである。

「お久しぶりです」などと、外回りの多いものらしく挨拶し。
ふと見ると、先輩のズボンの裾が汚れていたのである。

「あ、先輩、ズボン……」

泥かなにかが、ズボンの後ろの方にべったりと。
あまりシャレにならない汚れ方である。
泊まりだから当然明日も穿くズボンであろう。

「あら、困ったわ」

と、先輩。
私はふと、先日の泊まりのときうっかり置きっぱなしで帰ってた、
自分のズボンがキャビネットにあったのを思い出し。

「私のズボンでよければ貸しますよ」

と、申し出たのである。
先輩と私ではかなり身長差はあるが、
そう極端に胴回りは変わらない。
私はハイヒール履かない分だけ裾短くしてるし。

「どうぞ」

と差し出したズボンを先輩が穿くと、案の定。
多少長めだが、なんとか、入っている。

「ありがとう。洗って返すわ」

いつでもいいですよ、と、私は答え。
そして夜の仕事に出たのである。


2:
それが、一週間ほど前。
そして、今日。


3:
泊まり業務の日なので、早くから社にいた世間は三連休最終日(ふ)

仕事が一段落して息をついていると。
――電話が鳴った。

「あ、先輩」

件のH先輩である。
いつもの上品な声で、このあいだはありがとう、と、おっしゃる。

「借りたズボン、洗ってあなたのキャビネに入れておいたから」

なごやかな会話の後、要件をすませ、
再度、このあいだは本当にありがとうね、と、おっしゃり、電話は切れた。

私は立って、キャビネットを開け……

「……」

不吉な予感がしたのは、小さな袋を見たときだった。
いかにも上品なH先輩らしく、
ミニチュアダックスの絵の入った袋だ。

だがいかんせん、小さい。

衣服を入れる袋は、皺をできるだけつけないために、
そこそこ大きくなるのが、普通である……。

袋を開けた。

「……」

洗濯機で洗ったとおぼしき、私の黒いズボンが、入っていた。
ああ、私の……

私のコムサ・デ・モードッ!!(瀧涙)




……先輩、まさかドライクリーニング知らないんじゃあ……


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- 2002年09月14日(土)

血と肉。

1:
カタい話をする機会があった。
「日本人というアイデンティティは、幻想か否か」
「日の丸是か非か」
……私は基本的に、こういう高尚な話はキライである。

理由はカンタン、実がない。意味がない。
実体がないぶんだけ、議論がムダなのだ。
ためにする議論ほど不愉快なものはない。

しかしまあ、そういう話になった。


2:「日本人というアイデンティティは、幻想か否か」

「だって、●区民とか、●市民とかなら実感あるけどさ、日本人なんて
言われたってさ……」

そーか? 私は日本人である。自明の理として日本人である。
……他の人にはそうでないかもしれない。

私は異国で育った。
私の帯びている文化は周囲と異なり、
私の帯びている言葉は周囲と異なり、
私の帯びている血は周囲と異なっていた。

私は自分自身を省みて、私は周囲をゆっくりと観察して、
自分は「日本人」なのだと結論した。

「日本国」パスポートによって私はその国に存在を許されていた。
「日本語」によって私の世界は区切られていた(外側にはどこまでも遠い空間)

そのように私は実体あるものとして、「日本」を認識した。
身に迫るものとして、「日本」を識った。
(日本の中にいちゃー、そんなにはっきりはせんわなあ……)


3:「日の丸是か非か」

「不愉快に思う人がいるんなら無理して掲げなくてもいい……」

とは思わん。思えん。
人間、自分を主張せずに生きてはいけんのだ……。
かつて殴った蹴ったした相手が自分の顔見て不愉快になるから、
整形しろと言われたって、そりゃ困る。

この顔で生きてきたのだ、と。
善も悪も自らの名の下に知らねばならない。
自分を否定してはならない。

なぜなら、どれだけ否定しようと、
どれだけ透明になろうとしようと、
生き抜くため交渉や対立、妥協や協力を欠かせない世界に生きているからだ。

そして相手は、どれだけ否定しようと「こちら」を見る。
「否定したがってるこちら」を見る。
「透明になろうとしたがっているこちら」を見る。

どうあったって、私たちは、日本は、日の丸は、ここにいるのだ。
自らの歴史を、自らの存在を否定し去りたいなら別だが、
そのようなものとして生きぬきたいなら、善も悪も載せた旗を掲げねばならない。

と、思う。


4:
我ながら……硬派かのう……(ふ)

まあ、主義主張というのは、うーん、血肉だから。
議論するだけムダなんだよなあ。
どこに重きを置くかっつのは、感覚だもんなあ……。


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- 2002年09月13日(金)

酒の場

面白いのは、本音が聞けることである。
例えば、トップのA氏。副長のB氏。ナンバースリーのC氏。
課長クラスX氏。などなど。
仕事場では見えないネェ(ふ)

1:
なあんとなく、思っちゃいた。
B氏はあんまり、好かれるタイプじゃない、とは。
上司としてはやりにくかろう、とも。
口うるさいし、およそ部署の仕事を全部把握しているようにも見えないし。

しかしまあ、私のカンがどんぴしゃり、だったとはね(苦笑)

X氏曰く、「一番の嫌われ者」
……もっとも、このX氏はなんとなくB氏に似てるんだが……


2:
でもって、A氏。
親分肌で、まあ、豪傑タイプ。
好きキライが分かれるんだろうなあ。

酒の場では、まさに親分(笑)
飲め食えとなにほども世話を焼いてくれるのはいいとして、
自分の書いた詩歌の短冊を壁に飾るってのは、いささか、いささか。
まあ、もてなしと言えなくもないけど、ね……。

自己顕示欲がごく強いが、豪快な人柄でイヤミになってない。
まあ、ギリギリだけどさ。
私としては好きかなあ、なついたらどこまでも可愛がってくれそうな。


3:
ナンバースリーC氏。
もともと職人的な仕事をしてたのが、
偉くなりすぎて管理職になったのが運の尽き(笑)
人間関係で苦労してますな……

もとの仕事をずっとしているほうが多分性にあってたんだろうけど。
人並みに出世欲もあったんだねえ。

職人仕事を長くしてたひとにありがちだけど、
いささか人格的に擦れてない。
というと聞こえはいいけど、世慣れてない。
まだまだ苦労しそうなカンジだなあ……


4:
X氏その他。
苦労してる、苦労してる(笑)
しかも人間の常として好き嫌いもあり、
狡猾もあり感情の暴発もある。

外側から見ている分には十分面白い。
身につまされ……るけどね。
まあでも、私んとこはこんなかっちりした社会でない。
出ようと思えば飄々、どこへでも。
もともとヤクザと紙一重……。

まだまだ、目を開き、耳を澄まさなくってはね。


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- 2002年09月10日(火)

なんでかなー。
なんでこうへったくそかなー。
なんでこう怒られるかなー(ごろごろごろごろ)

うーまーくーかーけーなーいーよー。

いいかげん、なのだとの評価。
あーおこっちゃいやぁ――(ごーろごろごろ)

正確に、全体像から掴む地道な努力が欠けてたんじゃないかなーと。
ふと思った(そして切りぬきを見る)



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- 2002年09月08日(日)

ヤクザだと思う。
確かに、ヤクザな仕事なのだ。
「耕しもせず、紡ぎもしない」
そうだ、言ってみれば、ヤクザなのだ。

だが、それがどうだというのだ。
私は見定めたい。立ち会いたい。
生や死や歴史と呼ばれるもののその動乱に。
私自身の生を置き去りにしているとは言わないでくれ、
それが私の生なのだから。
そう私が選んだのだから。

そうとも。

この地上にある全てを、人間と呼ばれる悪魔を。
人間と呼ばれる天使を、人間と呼ばれる生物を。
その絶望、その希望、その悔恨、その眼差しを。
私は知りたい。その行く先を知りたい。
この手で触れたい。

さあ、世界を見つめよう。
さあ。

空の高みに興味はない、もしそこに人間の眼差しがないなら。


(だが、いつかおまえを探しに行こう、ジンニーア。例えば夢の中で)


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- 2002年09月07日(土)

言わなければ、聞こえない。
気づいて欲しいなどというのは傲慢だ。
誰も他人に求めることはできない。何一つ。


1:
欲しいのは夜と朝。
目覚めと眠り、酔うように生き、酔うように死ぬこと。
立ち止まれば悲しみが追いついてくる。

詩人になる気がないから。
――立ち止まるわけにはいかない。

遊びにすぎない。
生きること、また死ぬこと。
傷つけること、また傷つくこと。
遊びに過ぎない。

大人は遊んでばかりだ、と、子供が言う。
子供は正しい。

決断がそれにふさわしい重さで下されることはない。


2:
私はなにもいらない。
いらない、いらない。

切り刻もう。
なにもかも切り刻もう。
しかも生きることだけはやめるまい。

姑息と非難するにはあたらない。
生きるとはその程度の云い。
誰がそれにふさわしい重さを背に負っているというのだ。


3:
ジンニーア、ジンニーア。
あなたは平原に遊ぶ。砂漠にまた峨々たる山々のその頂きに。
あなたは存在する。
それ以外のことをしない。

ジンニーア、あなたは悲しみである。
私の悲しみである。
悲しまれることのない、悲しみである。
私はそれをあなたとして手放した。

ジンニーア。

私が「あなたを思う」というとき、あなたの名を呼ぶとき、
それは私が悲しんでいるということなのです。
あなたについて書くとき、それが私の涙なのです。

いつかあなたを、探しに行こう。
生まれてなど、こなければよかった。


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- 2002年09月06日(金)

腐乱死体について、その2(やめろっつーに)

腐敗は、空中と土中と水中では、空中が一番早い。
もちろんエアコンだとか日照だとか、向きだとかで変わってくる。
あ、うつぶせで寝てたらおなかが、仰向けで寝てたら背中が、
それぞれ腐敗の度合いが早くなる。毛細血管中の血液が腐るから。

あとは、内臓、特に腸は雑菌が多いから、腐敗が早い。
ガスがたまって下腹がぽっこり膨らんでくる。
皮膚は、最初に血液が腐敗するから、まず血管が青く浮き上がる。
でもって腐敗汁がたまって水泡のようになり、やがて破れる。

水中に投げ込まれた死体は、
男はうつぶせ、女はあお向けに浮かぶという説がある。
どこまでホントかは知らない。聞く人によっていろいろだ。
ちなみに冷たい水の中に投げ込まれれば、屍蝋になることもある。
うまーく腐敗が押さえられて分解されればだけど。

死亡推定時刻の確定にはいろんな方法があるが、ひとつは蛆虫。
蛆の大きさ。関東地方の夏だと、一日で約1ミリ大きくなる。
ちなみにあんまり長い時間たってると、ハエが世代交代して、
第二第三世代になっていることも、もちろんある。

あ、ミイラになろうと思ったら、風通しのいい日陰がいいらしい。
あんまり太った人は難しいが……。

ま、こんなカンジ?
一人暮しで自殺するんなら、誰かに一言言ってからにしてください。
腐乱死体で見つかりたくナイでしょ?(笑)
親にだって見分けはつかない。


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- 2002年09月05日(木)

さて。
腐乱死体について語ってみよう(やめい)

一例をを。
「黒人が脇腹を刺されて血をいっぱい出して死んでる」
といって通報してきたお人があったそうな。

ぶっぶー。

黒人ではありません。
腐敗が進んで皮膚が黒変しただけです。

刺された傷じゃありません。
腐敗で皮膚が劣化して、内臓の重みで裂けちゃっただけです。

血じゃありません。
破れた皮膚から腐敗液が流れ出しただけです。


人間は物体だ。死ねばそれがよくわかる。
腐ったバナナのごとく黒くもなり、
汚く臭い液体がにじみ出したりもする。
道端で死んだ野良犬のように、蛆を湧かしたりも、する。



ジンニーア、死にいかなる理由があろうと。

ジンニーア、自然はその法則をまっとうする。

ジンニーア、私はそのことに、ひそかに安堵するものです。

……――ジンニーア。


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