- 2002年08月30日(金) 私は、傷つくことにも傷つけることにも、喜びを感じない。 触れることそのものが愚かしい。 外側だ。ここは。 あらゆるものの外側だ。 内側のあらゆる地獄を逃れ、 そして足を踏み入れたのが外側の地獄であるとは。 (しかもここもまた一種の内側であることを免れない) - - 2002年08月27日(火) 魔界に住む男。 1: 殺人者の視界を、私はときに思い浮かべてみる。 この手のナイフを振り上げる、振り下ろす。 悲鳴と肉の裂ける感触。骨につきあたったとさえ知れるだろう。 悲鳴と血と恐怖。 幾創もの傷を与えて殺すものは、弱虫なのだと聞いたことがある。 立ちあがらないで欲しいばかりに飽かず刃を振り下ろす。 ならばおまえはどれほどか恐ろしかったのだ。 2: 愛したもの、近しいものを殺し、また殺し。 怯え、恐れ、怒り、穢れ。 逃れるのか。逃れうるのか。 続く数日は確かに魔界であったろう。 そして再び出ることはないのか。 おまえは酔ったような目をしていた。獣の目だ。 3: 起訴状を読んでいて、不思議に思ったことがある。 男はほとんど顔を狙っていない。 だいたいが胴を滅多刺しだ。 (惨いことだ) 顔を狙わないのは、顔を傷つけないのは。 なぜなのか。 男は「彼ら」の最も「彼ら」らしい部分、顔を狙わなかった。 人間には確かに「人間」を殺すことはできないのか。 「人間」と知りつつ、その最も「人間的な」部分を切り裂くことは。 - - 2002年08月26日(月) 朝から電話で叩き起こされる。 何時だと思ってやがるよ、お袋さん……十時じゃん!(ぎゃふん) タクシーにて出勤とあいなる……(ぐぅ) 1: 磨り減った。 この1週間で磨り減った。 結果オーライではあったものの……(ふひい) あらゆる要素を加味して思索し、出した結論でも。 感情という私の一番ナマの部分、武装不可能な部分が、 軋み悲鳴を上げ、あげくに不眠症だよヲイ(笑) いや、夕べになってようやく眠れたが……。 2: たとえ私の感情部分が悲鳴を上げ軋み鋭く裂けても、 それは全く仕方がない。 私はそれを甘受する。 実際、それ以外のことはできないとも。 気が狂おうとも、それは全く仕方がない。 私は確かに、肉と石、その双方からできている。 その双方である。 つまり石でもあるのです。 3: こうした私の二重性、存在の二重が。 私に時々、世界の外側を垣間見させる。 そんなことは、全く仕方がない。 自分が選び、自分が進む道を、私は全て背負う。 - - 2002年08月22日(木) 喪失。 1: 喪い、失う。 だがこの手は二本きり。 持てるものが限りあり、目前には絶えず輝かしい風景。 それではまったく、失わずにはいられないわけだ。 2: 最近、どうも神経がおかしい。 (まともな神経でいられるようないい加減な仕事はしていない) しかし、ありえない場所で腐臭を嗅ぐようになっては、いささか困る。 「どうせ神経だ」と、思考から外してはいるが。 正気だけは、無くすわけにはいかない。 3: 負けるのが、好きじゃない。 でも、負ける。悔しい。 分析し、理解し、次につなげる。 その努力は怠らない。 だが磨り減るものがある、どこかで。 4: 私は誰にも何も要求はしない。 私は誰からも何も奪いたくはない。 そのへんか、問題は。 一本足で立っているような気がする。 もう一方の足を、どこへやってしまったのだろう? - - 2002年08月17日(土) A Word, out of the world and Real. 1: ほんとうの言葉が見つからない。 言葉というのは比喩だ。 それは音節ではないかもしれない。 それはある「関係」なのかもしれない。 それはある視界なのかもしれない。 帰りたいのか、行きたいのか。 (帰るなかれ、行くなかれ、さだめなりせば。そはさだめなりせば) 2: ほんとうの言葉が見つからない。 私をこの世界に産み落とす手段が見つからない。 私をこの世界にほんとうに広げる手段が見つからない。 欲しいのは出口じゃない、この世界への入り口。 行きたいのか、帰りたいのか。 (行くなかれ、帰るなかれ、さだめなりせば。そはさだめなりせば) 3: 世界に後ろはないのだろうか。 ほんとうに、世界に後ろはないのだろうか。 ここにあるものだけしか、ないのだろうか。 「美しい花というものがある。 花の美しさなどというものはない」 だとすれば。 刻み付けよう。 この世界の乾いた表面に。 - - 2002年08月16日(金) じ・あざーはんど・おぶ・ライフ。 1: 変容しうる。 だがときどき、私は化石になりたい。 正気はときに、耐えがたい重荷だが、 なんとなくでも日々は送れる。 2: 帰らざるは恩寵の無。 一日限りの種よ、哀れなものよ、と、シレノスが言った。 おまえたちにとって一番良いのは、生まれてこないことだった。 そんなこと言ったって、もう遅い。 よいものを作り上げることだって、できるだろう。 3: トラスト・トライスト。 最高のものが最善なものであるとは言えない。 誰もが今日を生きている。 私の悲しさは、この世の事象より確かに速い足を持つ。 - - 2002年08月15日(木) 手紙で愛を語れる人種は。 1: 不思議といえば、不思議だ。 文字に定着するには、情熱はあまりにも不安定で、揺れる炎に似ている。 揺れる炎、揺らぐ炎、ときどきは、消えたのかとさえ思う。 透明だから、うっかり手を突っ込んで火傷することだって。 文字にはできない。 ましてや伝達など。 ましてや「きみ」に向けて投げるなど。 私の情熱は常温以下、私の体温と同様。 手紙に入れて封をして、開ける頃には腐ってる。 そんなものは送れない。 (書きかけ) - - 2002年08月14日(水) ある酔っ払いについて 1: 例によって、夜中の一時ごろまで、仕事で某所に居座っている。 と、ふいに騒がしい。 聞くと、なんでもない、酔っ払いだという。 ややあって運ばれてきた酔っ払いは、 顔も体も、痣だらけの女だった。 年は五十二だという。 そうは、見えない。 六十過ぎくらいに、見えた。 ひどく酔っていた。 まっすぐ歩けないほど。 2: 旦那さんは、妻に酒を売らないでくれと、 回りの酒屋に頭を下げて回っている、と、いう。 それでも自販機で酒を買うから、そのつど殴るのだと。 病院に入れられれば逃げ出し、 救急車は拒否するんだと。 どうしようもないんだと。 そのうち女は起き出して、手洗いを使いたいと言い出した。 困ったことに某所はその夜女のヒトがいなかったので、 しかたなく私が手助けする。 近づくと、饐えたような甘酸っぱい匂いがした。 体を支えてやると、綿のような奇妙な柔らかさ。 ぼんやりと連想したのは、腐ってブカブカになった果物。 3: 人間が落ちる奈落は、深い。 紙一重、か。 ホントだよ。 - - 2002年08月13日(火) 果たしてあるのかないのか夏休み。 1: プランは二通り。 一つはまあ、里帰り。 祭りが九月半ばだから、一日か二日もらって。 だんじりの祭り、友達とじいちゃんと家族と、うちの犬と。 もう一つは…… 砂漠か、草原。 新入社員のくせにと言われつつ、遥かモロッコかモンゴルへ。 この腕を広げて伏したいような風景の中に自分を落としてみようか。 ……悩む。 2: 懐かしい家と人々、街と空気。 砂漠。草原。南米の密林。 行きたい……んだが。 悩む、悩む……。 んー…… こういうとき、自分が必ずしも一枚でできてないことを実感する。 時間があれば両方するんだが、どっちかしか、ムリ。 どっちのほうが、したいのか。 んーんーんー……。 悩む……。 こうやってひとは、自分が何物か、知っていくんだろうなあ。 (行く先など、知りもせずに) 3: 砂漠へ行こうか。 孤独になろうか。 この手を広げて。 もしかして、そこで、懐かしい人々に出会わないとは限らない。 家に帰るよりも、遠くで、『家』や『ひと』に出会うことも、ある。 なつかしい、なつかしさに。 4: 家に帰ろうか。 幸福で穏やかで、猫な数日を貪ろうか。 目も覚まさずに。 もしかし、そこで、遥かな風景が見えるかもしれない。 時間や宇宙の方向に広がる、 その遠い風景に。 5: なやーむ…… - - 2002年08月12日(月) 疲労感がある。 あたりまえだ、献血なんか行くから……(しーん) うちの母は、献血というとイヤな顔をした。 ドナーカードはなおさらだった。 私が持つのもイヤがった。 「脳死しても、痛いかもしれないじゃない」 というのが、その理由だ。 ……まあ、そーなんだけどさ。 考え方というのはいろいろだなー、と、思う。 献血に行くのはなんでだろー、と、思う。 ボランティアという言葉を毛嫌いする私にして、である。 うーん……。 最近、血みどろの空間を見る機会が二度ほどあった。 詳しいいきさつは (書きかけ) まあ、伏せるとして。 私の血では、ない。(念の為) もったいないなあ、などと思う。 壁の汚れと成り果てている血も、場所を写せば、立派な資源なのだ。 そういう「もったいない」精神、な気がする。 - - 2002年08月10日(土) 私は私の文章が好きである。 あたりまえだ、自分が「好き」なように書いているのだから。 うぬぼれや謙遜ではなく、自分自身の文章が嫌いな人は、 文章なぞ書かぬがよろしい。 文章は思いそのものではない。 だが思いをあらわそうと四苦八苦したその痕跡ではある。 そこには自ずと何かがある。 抜け殻から蝉の形を知れるように、何かを知ることができる。 願いはあるいはよいものでないかもしれない。 悲鳴はあるいは見苦しいものであるかもしれない。 だが願いそのもの、悲鳴そのものに「なり」さえしなければ、 それらは意味があるのではないか。 だからこれら私の書く文章は、私にとって意味があるのではないか。 形を見てあざけるものが、私は一番嫌いだ。 形には形で答えなければならない。 一つの木に対するときに、斧を用いては行けないのだ。 木には木で、根と幹、葉と枝を持った木で答えなければ。 私の文章は、そういうもので、ありたい。 - - 2002年08月09日(金) マキコ大増殖(ぎゃー) マキコさんに興味はない。 しかし紙面こんなにテレビこんなに埋め尽くすほどの人か……? 1. 仕事がら、新聞をよく読む。 大人物っちゅーのは、どういう人なのか、わからなくなる。 仕事ができない人は、論外。 評判だけの人は、論外。 掛け声だけの人は、もっと論外。 しかし、今の日本で、ほんとに必要とされている仕事は、 きっと、すごく、ものすごい、能力がいる。 どんな人なら、できるだろう、と、考えて、私ははたと困る。 ……わからん。 2: わからんでは始まらん。 日々のニュースを追うだけでは始まらん。 始めなきゃ。 しかし私は残念なのか幸いなのか、そのポストにいない。 確かに人間世界のことなんだから、 どうにかできる、はずなんだ。 でもこの糸は、あんまり絡みすぎている(うーむ) ……わからん。 3: 自分の仕事をかりかりやってる。 優秀じゃあないが、面白いから努力してる。 でも、それだけじゃ足りない。 今の仕事に習熟したときに、その先を願うかどうか。 もちろん、願わなくても、いい。 でも、先輩や上司の仕事が、気になる。 なに、やってんだろう。 どうやったら、そういう仕事ができるんだろう。 気が付いたら、突然ちょっとだけ肩代わりを命じられても、 なんとかこなせるように、なってる(うーむ) こうやって、ちょっとづつ、できることが、増えていけばいい。 と、思う。 でもなあ。 誰も今の日本を救ったことがない。 だからきっと、誰も、日本の救い方がわかんないんだ。 救うとかって問題じゃなくて。 うん。 どうしたいのか、誰もわかんないんだろう。 どう、あるべきなのか。 - - 2002年08月08日(木) 寝言を書いちゃ、いかんわな(笑) そろそろ窮屈になりつつある、この日記。 見ている人を、知ってるだけに。 知らないようには、書けない。 そろそろ、やめどきなのか……(うーん) - - 2002年08月07日(水) Darker than dream. いつか群青色の猫になって、丸くなって、きみの膝で、眠りたい。 1: と・ある先輩と、飲みにいく。 そこで知ったのだが、結婚退職しなさるらしい。 ふーむ……。 「●●さんの奥さん」には、一番なりそうにないと思ってた人なのに。 これまで昼夜のない仕事をしてて、いきなり。 「●●さんの奥さん」以外することなくなったら、 ねえ、どうやっていちんち潰すんだろう。 ひとごとながら、心配、する。 2: ま、でも、忙しい人は、忙しくなるタネを見つけるのが、うまい。 その先輩は、「ドイツ語の一級取ろうと思って」と言ってた。 それはきっと、これまでできなかったこと、なんだろう。 これからその先輩は「結婚退職」しなきゃできなかったことをして、 忙しく、忙しく、一歩づつ、過ごすんだろう。 これまで、「独身職業婦人」でなきゃできなかったことを、してたみたいに。 3: したいことが、たくさんあるひとは、好きだ。 したいことが、増えてくひとは、好きだ。 世界の中で、視界を広げようとする貪欲さや、 遠くへ行こうとする意思が、好きだ。 手の届かない高みにあこがれるひとや、 抱きしめられないものを抱きしめたいとおもう人が、好きだ。 結局わたしは、誰かのなかに、それらを見つけて。 誰かを通して、それらを愛しているのかも、しれない。 4: 安らぎや、そんなものは。 私を、苛立たせる。 ことが、多い。 それはきっと、私が、人一倍、そういうものに、引かれるから。 そこに横になって、頭を預けたいと、思ってるから。 それを、必要としてるから。ほんとに。 だから、私は、苛立つ。 立ち止まっちゃいけないんだと信じる、子供のように。 欲しければ欲しいほど、苛立つ。 私を、捕まえないで。 - - 2002年08月06日(火) 疲弊している。 手を伸ばしても、砂にさえ触れない。 砂にさえ、ましてや水など。 1: いらないと、言うことは容易だ。 それではすまないものが、渦を巻く。 霧のよう、立ち上る。 2: 自分が独占欲が強いということが、最近わかりつつある。 この性の悪い獣を、どうしてくれようかと、考えている。 切り離すことはできる。 乗っていくこともできる。(魔界が見えそうだが) どうすることもできる。 - - 2002年08月05日(月) 魔界が明けない。 どうすればこの永い一つ夜は明けるのか。 (どんなにしても明けはしない ただ夜を朝と呼びかえることができるだけだ) 世界の傷は癒えない。 世界は変形し、世界は歪み、汚れ。 だが世界である、それ以外に言えることなどなく。 ただここに生きている、どれ以外に言えることなどなく。 (癒されるはずと、 そう信じつづけることはできる。 いつか戻るはずと、その願いのうちに眠ることはできる) 生きることも死ぬことも、うまくはできない。 ただ、願いのうちにではなく。 このありのままの、刃を持つ世界の中に生きること。 - - 2002年08月02日(金) 歌う月。 1: ある夜、魔界に目覚める。 世界は様相を変えている、ああどこまでも暗い。 ひた走る、ひた走れ。 血の臭い。 情念と暴力の遺臭が立ちこめる。 2: ある朝、魔界が明けない。 世界は様相を変えている、私は知らない。 ひた走る、ひた走れ。 ここは私の遊び場。 だがこれは朝、これは真実。 名前のない感情が押し迫る。 3: 絶望と悲痛、狂気をこの世界に書きつけた男を追う。 どこにいる。 おまえは逃れられない。 おまえを捕らえ、おまえを裁かなければ、 おまえがつけた、世界の傷は癒されない。 (ほんとうは、どんなことをしても、癒されない) 傷つけられた人間世界が悲鳴を上げる。糾弾を求める。 どこにいる。 おまえは一つの傷、おまえは一つの過ち。 人間世界は低くも高く、そう叫ぶ。 -
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