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終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2002年04月27日(土)

時は流れる。
然り、止まず。

私とあなたは道を異にした。
それは、どちらがどちらを置いて行ったということではなく。
ただ、星と星がその軌道をゆくなかで、距離が増して行くというだけ。

感情は私の前にある。
感情は私の視界を塞ぐ。私の胸を塞ぐ。
でも、それはきっと――放逐すべきなにものでも、ないのです。
だから、声を大にして、言います。

あなたがいなくて、寂しい。
広がりゆく距離が、悲しい。

それでも私は私の軌道を行くことを止めはしない。
悲しみは悲しみとして、寂しさは寂しさとして――
――私には私の願いがある。

言ったでしょう、私は幸福だけは求めないと。
言ったでしょう、私は寂しさも悲しみも惜しまないと。
それらが人間の生の、紛れもない一部だということを知っていると。
だから、いいのです。

だから、いいのです。
帰る道はないのです。
帰るということはないのです。
人間にはただ、行くということがあるばかりです。


-

- 2002年04月25日(木)

四月は、一ヶ月間、ずうっと、研修だった。
で、同期どもと、一緒だったのだね。

普通、内定が決まったら、
その段階から顔見知りくらいにはなってるものだけれど、
下手したら飲み仲間くらいにはなってるものだけれど、
私、大阪で採用されたくせに東西交流とやらで東京にやられたから。
だから、四月一日、みんな、知らないひとばっか、だった。

で、25日まで。
その次の日から、もうみんな、ばらばらで。
――たった、一ヶ月だったんだね。
それでも、もうけっして、忘れないね。
うん、だって忘れられないよ。
バカばっかりだったもの。(笑)


例えば、天下に名だたるT大卒A。
「Aで〜す。飲みま〜す。潰れま〜す」
……ヲイ。
六時半でベロベロかよ。
きみ、とても真っ直ぐだね。
とても真っ直ぐで、どうも、私の弟みたいだ。
遅刻魔Oのこと陰日なたなく、
「俺はあいつを信用しねえ」
とか、言ってて、皆から諌められてた。
わかるんだよ、きみが正しいよ。
時間を守るのは、社会人の最低常識、そうだよ。
――うん、そうだけど。
いいさ、きみは真っ直ぐに育ってきた子供。
これからさんざん苦労、すればいい(笑)
また、会おう。


私より年下のくせにスケベオヤジ入ってて、
宴会大魔王で、オールマイティで、苦労人の、N。
きみはとても、やさしい。
バカやって騒いで、そんな中でも、
誰にも気を使わせない仕方で、みんなに気を使ってる。
向上心も野心もあって、バイタリティもあって。
きみはとても、やさしい。
そして、強いね。
ゆっくり、話ができたらよかった。
きっと、とてもたくさんのものを、きみは背中にしょってた。
きみがきっと一番の、出世頭、だろうね?
……ギャンブルとか、女で失敗、しないように。(笑)


アメフト学科卒(笑)の、Y。
脳味噌まで筋肉系で、好きな言葉は純愛、のきみ。
酔っ払った私が確か思いっきり蹴っ飛ばした(ヒデエ)はずなのに、
私の足首の方がイカれて、きみは痣一つなかった。
泣いてたね、お別れ会で。
お酒飲んで、真っ赤な顔になって、さ。
泣いてたね。
バスの声音に惚れてたよ、でっかい体がうらやましかった。
なにより、うん。
殺しても死なないきみの体力が……。
嘘だよ、きみは誰より、純情だ。(笑)
いい嫁さんもらって、帰ってこいよ。


クールで頑固でシュールなMちゃん。
きみの見る夢、一度のぞいてみたい。
クールだなんて言われてたけど、知ってたよ。
きみ、子供なんだね、ほんとのこと言っちゃいけないと思いこんだ。
わかっちゃうよ、そりゃ。
だって、若い頃の私と似てたもん。(笑)
きみが本当に、地面の上に立って、自分自身となって、
そうして歩き始めたら、きっと、とても――
イイ女になるんだろうなあ。
あ、遅刻には気をつけるように。(笑)


人事さんいわく不思議ちゃんYくん、及びHくん。
ごめん、一まとめにして。(笑)
だって二人とも関西出身でゼミまで一緒で背格好ほぼ同じでしょ、
顔もなんとなく似てるしさ。
よく間違えたね、物静かな二人。
Hくんの視線、とても深いね。
その思考は大人の静かな深みと、子供の清潔な鋭さ、持ってる。
きみの言葉は傾聴に値する。きみの視線の先は見るに値する。
Yくんの言葉、空気、とても柔らかいね。
ついつい頼ってしまいたくなる。
人間というものを、条件つけずに、見る目だね。
なにかな、癒し系?(笑)
二人とも、また会おう。
また会おう――もう間違えないよ。


さて、うさんくささでNo1、
ひょんなことから判明したが、同郷で私のいとこのはとこなY。
うさんくさいよねえ、きみ。(笑)
きみの美学は面白い。
きみのエンターテイメント至上主義は面白い。
論理の立て方も言葉の運び方も、秀逸だ。
そうだよね、政治家志望だっけ?(笑)
でもね、そう。
こんなこと、面と向かって言わないけどね。
世の中を、なめちゃいけない。
もしかしたらきみの方が正しいのかもしれないけれど、
――でも、世の中というものを、なめちゃいけない。
そうだね、きみはきっと、わかりきってる、とか、言うでしょう。
わかって、るのかなあ? 意外に素直だから、わかってるのかもしれないなあ。
とりあえず、女性問題には気をつけて。


坊主頭と繊細な神経がグッドな加減でミスマッチ、Nくん。
豪快で、身体張って笑い取るあなたも大好きだけど、
その目の奥の不安と、傷つきやすく内に向かいたがるあなたも、好きだよ。
あまり、ためこまないで。
あまり、閉じこもらないで。
そんなに、笑いながら。そんなに、ふざけながら。
大丈夫、大丈夫だから。
ねえ、同じだけの傷にも、きっとあなたは最も苦しめるひとだね。
――その繊細さがいつか、あなたの強さになるように。
願ってる。


とびっきりの美人、Oさん。
才色兼備とはこのことか、って、思ったね。
うん、でも、わかってる。
あなたはそうしたもの、投げ捨てられる強さ、持ってる。
だから、私はあなたが好きです。
女を磨きたいと言いつつ、もっと大事なものを持ってる。
そのためなら、あなたはきっと、マニキュアも、お化粧も、放り出せる。
お化粧があんなに映えるあなたなのにね。
きっと、自分にあった方法を、楽しみながら見つけてきたのにね。
あなたが目に見える以上の存在だってこと、うん、わかってた。
もっと話、したかったね。
私なんか、女だって自覚放り出してるけど、
あなたは女であり、しかも以上のもの、です。
あなたです。
次にあったときは、結婚式の写真、見せてよ。(笑)


格闘家Nくん、柔道家Iくん。
二人で、筋肉談義に花咲かせてたよね。
「一番いいときの自分の身体知ってるから、しぼんでくのが寂しいんだよな」
「そうなんだよな、しょうがないんだけどさ」
「俺、三月、ジムにずっと通ってた」
「あ、俺も。柔道ばっかしてた」
……もしもし、きみらナルですか?(笑)
わかってるって、うん。
きみらにとって、私は多分(いやまず絶対)苦手なタイプ。
なんで?って聞いたら、困ってたねえ。
まあ、だいたいわかるんだけどさ。
私、きみら二人より背、高いもんな。(笑)
ああ、わかってる。それだけじゃないね。
私はスポーツマンの敵だからね。
でもまあ、Nくん、きみはとりあえず、もう2年くらいは一緒だから。
慣れてよ?(笑)


出先機関と名前が同じ、ってだけで、配属決まったCくん。
上層部を恨め。(笑)
いや、でも、すぐ名前覚えてもらえていいじゃん。
ん? わかってるよ、って? はいはい。
顔だけ見たら、新人とは思えないよねー、とか言って、困らせた。
いや、だって、笑って許してくれそうなカンジだったからさ。
実際そうだったじゃない。
私より年下のくせに、そんなに人間、デキてるのはなんで?
酔っ払ってもほぼ変らない。
努力家で、真面目で、んでもって……彼女一途なきみ。
子供、きっときみとそっくりだろうなあ。
でも、あんまり所帯じみるなよ、年齢ますます不詳だぞ?(笑)


一番やさしい目をしてる、Aちゃん。
あなたはあんまり、やさしすぎる。
打たれ弱いなんて、自分で言ってて。
――あなたはあんまり、優しすぎる。
お別れ会、Yと一緒に泣いてたね。
ちょっと、うらやましかったよ、泣けるあなたが。
泣いて、悲しんで、別れというものを、受けとめて。
――それでも明日になったら、きっと鏡の前、気合入れてるね?
頑張ろうね。――頑張ろう。
身体には気をつけて、カゼ、引かないで。
ムリ、しないで。
また、会おう?


一番線細いくせに最年長、Nくん。
神経質かな?と思ってたけど、実はそうではなく。
トンデモな座談の名手でした。
食わず嫌いしてごめんなさいでした。私の負けですごめんなさい。(土下座)
突拍子のない会話の飛ばし方してるあなたは、うん、配属部署向きです。
是非是非ウィットに飛んだ仕事をしてください。
でも、あんまり飛びすぎるとわかんないぞ?(笑)
上司にしても部下にしても楽しそう……。
もし異動で下につくことあったら、きっと退屈しないだろうなあ。
でもやっぱり……
きみ、嫁さんもらうよりは、嫁に行くほうが向いてそう……(こそ)



さあ、私たちは羽生えそろった雛。
巣から出たばかり、風にこの身体、晒してる。
不安は高い。願いは更に高い。
飛ぼう。
落ちてもいい。飛ぶんだ。
――高く。

きっと、最初の一歩から、こけたりするんだ。
うっかり飲み会の最中に挨拶の電話をかけてしまった私の当座の上司談。
「ああいいよ、気にしないで。
 これからもっと面倒かけられるんだから」
――ごもっとも。
なにとぞよろしくご指導、ご鞭撻のほどを……(ひーこら走るドンソク)


-

- 2002年04月23日(火)

1:
川崎に住むようになってから、はや三週間余り。
地元民なら知ってると思うが、JR川崎駅から少し入った通りは、風俗街である。
現在私の逗留しているホテルは、そのあたりなのだ。

とある夜のことだった。
飲み会で遅くなった私は、そそくさと薄暗い通りを歩いていた。
パチンコ屋のネオンや、怪しげな名前のラブホ、
ちょっと大阪の十三に雰囲気が似ている。
辻にはいかにも「それらしき」女性が立っており、
派手なネオンの風俗店がいくつもピンク系の扉を開いている。
客引きがまばらな歩行者を呼び止める声。

さて。
私はさっさと帰りたかった。
しかるが故に、とっとと歩いていたのである。

と。

「いい娘がいますよー!」

……は?

思わず振り返った私は、客引きのにーちゃんと目があった。
思わず数秒見ていたら、にーちゃん、事の様相を悟ったようであった。

「すんませんでしたー!」

……わかれば、よろしい。


2:
東京は大手町に本社があり、研修はそこでやっている。
だから、毎日行っているのだが。

十数人ほどいる同期の中でも割に仲のいい女の子とメシ食っていた。
と、ふいに。

「あたしら、丸の内OLなんだよね」

頭ん中が白くなった。
だってっ! OLっていうのはっ! 丸の内OLっていうのはっ!
もっとこう、美人でお化粧上手で颯爽としてるはずじゃなかったのか!

……そう、私は、大人になったらそーなるもんだと思っていた。
エルメスとかーシャネルとかー。
マニュキアとか香水とかパーマとかー。

→ほんぢつのわたくし
 灰色のパンツスーツ、リクルートスーツ転用。
 すっぴん(ほんっとになにもなし)
 白シャツ長袖かろうじてコムサ。

あーうん。
努力しなきゃそーだよな(はっはっは)
する気もないが……。


3:
そーいえば、私はある一定のタイプの男性に受けが悪い。
そーいうタイプが同期にもニ三人いる。

体育会系で、声でかく筋肉質、
野心家で知識も広く思うところをハキハキ言う……

私としては面白いタイプだと思うのであるが、
どーにもこういう人々は私が苦手らしい。
視線があわない。

面白いので、ことさらちょっかい出してみる(ヲイ)
なおさら嫌われる……(ヲイヲイ)
困ったね。


-

- 2002年04月19日(金)

 何を告げよう、きみに何を。
 まずは、簡単な事実でも。


 きみが、私の上を去らない。
 あの瞬間、あの時間は夢ではなかったか。だが夢と呼ぶには近すぎる。

 気づけばきみを思っている。気づけば記憶を追っている。
 幾度となく繰り返し、しかもその都度今起こりつつあることのよう。
 それはもはや過去であることをやめた過去、
 夢となりまた潮のごとく繰り返す――ひとつの時間だ。
 永遠、と、名づけてもよい。

 きみの姿が、私の上を去らない。
 きみの微笑、きみの言葉が、何度も繰り返し私の上に繰り広げられる。
 私は息もできずに胸を突き刺され抉られ涙も流せずに立ちほうける。

 きみを思っている。それともきみが私を思っているのか。
 ――このように言いたくなるほど、
 外的事象にも似て私の上にきみは繰り広げられ、
 私の感情は私の手を離れて嵐の海に似る。

 このような思いに対して、私はもはや是非を唱えない。
 正しいかどうかとは問わない。冷静な判断や分析を要さない。
 そのあらゆる長所と短所を論わない。
 多すぎるに決まっている短所の検討や下るに決まっている判断は私には無用。
 私はただそれを名づける。そしてそれでよしとしよう。

 私はきみが好きなのだ。

 字を読み書くのを学んだよう、愛し方を学ぼう。
 この思いを正しく流してきみの幸福にたどりつかせよう。
 私は新しい発話と言葉、その他幾つかの――
 特別なことのやり方を覚えなくてはいけない。

 ――それもなるたけ大急ぎで。


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