- 2002年02月19日(火) 舞踏の神よ、舞踏の王よ――ナタラージャ。 跳躍せよ、その指に神秘の印を結べ。 盲目にして全知、聾唖にしてあらゆる言語をこよなく美しく織り成すもの。 時は御身の舞踏に結ばれる。 ナタラージャ――踊る神よ。 世界の中心にあって、雪はどのような形をしているのか。 それは白くもなく冷たくもなく――白より白く、冷たさより冷たい。 御身の腕の一振りに―― 世界は変容する。 「私が神を信じるとしたら、踊ることを知っている神だけだろう――」 フリードリヒ・ニーチェ 分裂病への第一歩のような気も、しないではない。 ――が、まあ。 いいや。 いつか気が狂うのじゃないかとは、いつも思ってる。 それとも死ぬのが先か。 だけど、多かれ少なかれ――きっとみんな、考えるね、こんなこと。 自分は特別だと主張することは愚かだし、 危なさを気取ることも愚かだ。 できるのはいつでも――「ここにあるものを知る」ことだけ。 「自分がどうしたいのか」をギリギリまで探ることだけ。 気が狂うことも、死ぬことも、別に恐ろしくはない。 私がそうしたとすれば、そうせざるをえなかったか、そうしたかったか―― そのどっちかだろう。 そうして、そんなこと、別にどうでもいい。 自分よりも世界を愛するということの意味を言うよ。 ほんとうは、死ねるんだよ、いつでも。 死なないのは? ――うん、多分、あるひとつのものを見たいから。 それだけなんだよ。 あ、帰ってくるつもりしてるけど(とりあえず) - - 2002年02月16日(土) 引越し、です。 さらば常時接続、さらばフレッツ!(涙手を振り) 親の承認も相談もそもそもナシでやってたことはナイショです。 24にもなって親にこまごましたこと相談したくない…… というわけで、 時代をさかのぼり。 アナログ、テレホなしになります。 おまけに実家の方のアカウントが切れているため、 果たして接続できるのやらできないのやら謎の生物に。 とりあえずはお礼を。 ありがとうございました。 なにがって? ――うん、いろいろ。 メールチェックも怪しい状況なので、 オフの通信手段を知っているひとはその方が早いです。 そうでないひとは…… まあ、気長に。 来月の半ばには帰ってくる……カナ?(笑) - - 2002年02月15日(金) いつか、朝起きて、わたしが猫になっていたら。 そしたら――ねえ。 きみんとこに、行こう。 きみの膝の上で、丸くなろう。 遊んでくれなかったら、きっと眠り込んでしまうよ。 立とうとしたら、爪を立てて怒るよ。 布団で寝てたら、胸の上に乗りに行くよ。 ごはんを催促して、ざらついた舌で顔、舐めるよ。 締め出されたら、硝子をかりかりやって開けろって、言うよ。 だからそれまで。 ――だからそれまで。 ねえ―― 遠くに行くんだ。 見たいものがたくさんあるんだ。 したいことがたくさんあるんだ。 写真をたくさんとるよ。 「スナップ」をメモするよ。 きみと笑おう。 - - 2002年02月14日(木) 『アリアドネ、私はおまえを愛する――ディオニュソス』 ニーチェ、コジマ夫人への書簡より 1: ナタラージャ、 舞踏せよ、夕暮れに燃える山上にて。 ナタラージャ。 御身の舞踏こそが、 ナタラージャ。 ああ、御身の舞踏こそが。 ナタラージャ、 世界の廻り、夜明けと夕暮れ、海の満ち干。 ナタラージャ。 2: 呼吸する、わたしは呼吸する。 この呼吸はあなたの舞踏だ。 あなたの手の結ぶ印は――この呼吸を暗示する。 暗示している――世界のはじまりからこのかた。 思考する、わたしは思考する。 この思考はあなたの舞踏だ。 あなたのうちにわたしは内在し、 そしてあなたはわたしとして世界に顕現する。 それともその逆か? ああ、どちらでも同じこと。 ――ナタラージャ。 3: ニーチェはキリストとディオニュソスを対比させた。 だがこの二者は、同じものではなかったか? 意思とそれを行う手のごとき関係にあるものではなかったか? 実行される以前の考え――キリスト――と、 実行する手――ディオニュソス――と。 むろん、そこには深くまた越えがたい溝はある。 だが両者は限りなく重なっている。 異なる次元における同一のもの――だ。 4: ナタラージャ、 御身の手の一振りこそが。 ナタラージャ。 真の生死、真の喜び、真の悲しみ。 ナタラージャ。 御身の手の一振りこそが。 ナタラージャ、 我らのもとにあるのはその写し、その影、その隠喩。 ナタラージャ――…… 5: わたしはあなたのもとにいる。 わたしはあなたのなかにいる。 真のわたしは。 ――だがそれをわたしが認めるかどうかはまた別だ――…… - - 2002年02月13日(水) 今月21日をもって消失します。決定(ぢゅわ) 行き先はスペイン、モロッコ。 スペインはアンダルシアメイン。 レコンキスタに追われたイスラムをたどって、ジブラルタルを渡り。 ――人の歴史、人の記憶―― 悲しみや寂しさや、残酷ささえ。 どうしてこんなにも、いとしい。 大地は飲みこみ、その胸に抱き取り。 海は静かに横たわり、その腕に抱き取り。 風は止むことなく――吹き渡る。 太陽よ、月よ、星よ―― ゆくことなけれ、かえることなけれ―― 帰ってくるけどさあ!(笑) - - 2002年02月11日(月) 最近使ってるキャラの言葉のメモ 1: 人間は変容しうる。だが人間を正に十全に「開く」ためには――その人間が「開かれうる」というだけでは駄目なんだ。内在し既にありそもそもの初めから存在したものであっても。それを「開く」ためには、それを「開き」きるためには、――扉がいるのだ。出口がいるのだ。人間がその全てを「開く」――ためには。僕は変容を予感する――。 ――人間とはなにものだ? 変容を僕は予感する――。蕾より生じ、その花弁を刃のごとく反らし行く――百合の花がそれを教える。砕けて無数の飛沫と化す波が僕にそれを教える。神との間において人間がその翼の全てを広げてゆくのが、目に見えるようだよ―― 人間は孤独だ。孤独から始めねばならないのだ。それは人間の故郷だ! それは人間の種子だ! ――自ら伸び育ち根と茎と葉をその上に生じるための土壌なのだ! ――人間は孤独だよ。最も豊かに花開いたその瞬間にこそ、人間は孤独なのだよ。神は他者だ。絶対の他者だ。そこへ至る道は最初からありはしない! 孤独から始めて人間はそこに至る道を自らの血もて縒り上げるのだ! 人間は「他者」との「つながり」の中でこそ、自らの何たるかを知るのではありませんか? ……では、ねえ。自らの内なる一切を「開き」える「つながり」を持つことの相手である――おそらくは唯一の存在の――「神」は、絶対他者でなければ――ならないのでは、ありませんか? そして自らの何であるかを知ることは・・…常に自らの「孤独」を確かめることなのです。 2: 僕の楽園は。――すべて楽園は……――ほんとうのものです。ねえ、僕はときどき思うんです。この世界というものは――ほんとうの世界の写し、複製、予感、隠喩――粗末な偽物にすぎないのではないかと。そこでは――楽園では。きっと、なにもかもが――ほんとうなのです。正義も真実も、善も、人間も――そこでは完全なのです。ほんとうなのです。そうは――思いませんか――? 僕らは行けないでしょう。僕らは――行けないでしょう。でも、そこにはほんとうの人間がいるはずです。堕ちざるアダム、堕ちざるイブ。炎の剣を持つ天使が衣の裾引いて歩む――僕らは行けないでしょう。ですがそこにたどりつくことはできるはずです。 僕らは幾重にも変身と変容を重ね、その地にたどりつくことはできるでしょう。その地にたどりついたとき、僕らは確かにその地のもの――原罪以前のアダムとしてその地に立つでしょう。完全なる人間として――立つでしょう。それがおそらく、人間に課せられた「試み」なのです。僕はそう思うのです。楽園にたどりつくことは――できるはずです。 楽園はこの地に重なってある。必要なのは移動ではなく変容、平行な存在の変化――。 3: ――生は絶えざる死。僕は刻々と死んで行く。などという答えをすればお気に召すかな? 死を死ぬのが――生。 僕はあらゆる同情を拒否するよ。僕はあらゆる温度を拒否するよ。なぜなら僕はそれらを必要としないから。――僕のナイフは僕のものだけであればいい。僕は僕の生も死も、誰とも分かち合いはしない。――僕の愛するきみとさえも。 ――自分をこの世界に産み落とすことは、実に難儀だね。確かに。自分に内在する本質を産み落とすことは――音楽、美術、思想――全て断片だが――映っている。映っていない。――僕はある方法ではここにいるが、別の方法では、ここにいないから。僕は幾つかの実相を持ち、それら全てはきみには見えない。そして――でも、愛はそれら全てとは無関係だけれど。 きみはいつか、僕を見るかもしれない。だがそのときは――きみは既に僕だろう。無限に変容を重ねて僕たちは重なり重なるのだろう。ねえ――いつかきみはディオニュソスとなりディオニュソスを見出し、テセウスとなりテセウスを見出すでしょう。アリアドネとしてアリアドネを見出したように。そして――いつか迷宮そのものとなって迷宮を見出すでしょう。僕はそれをあなたのために望みはしないけれど。 僕はきみを覚えていたい。きみをつれてゆきたい。だが僕に連れて行けるのはいつでも僕の記憶、僕にとってのきみに過ぎない。きみは問いだったと言う――だがきみは同時に答えそのものでもあった。答えに至る道でもあった。僕はきみに悲しみと優しさと強さと堕落への意思めいたものを見出した。僕は僕の記憶と僕の悲しみだけを連れていく。――君もまた、君の記憶と悲しみと寂しさを抱いて――行く。 ……よお喋るのぅ……。 - - 2002年02月05日(火) stars end 星界の果て 1: どうにも我慢ができない。 誰かのせいか、私のせいか。 人間が人間の世界でしか生きられないなら、 多分きっと、私のせいだ。 私はどうやら生きることに向いていない。 2: 愛が必要だというのですか? 絶え間なく、誰かを思うことが? それは私の流儀ではない。 私は一日三度、孤独を食べる。 3: 毎日愛を食べなければならないのですか? だがそれはあまりにこってりとした食物です。 私はそんなに胃が強くない。 私の胃にあうのは乳色の孤独、薄い粥です。 4: 誰かを思うことまた思われること。 そんなことが必要なのですか?本当に? 絶え間なく?休みなく? ねえ、私は長い間それなしでやってきた。 これからも、それなしでやっていけるはず。 5: 生は私にとり、静かな分解過程だ。 消失のための手段です。 発光し、発熱し――欠片を撒き散らし、消えつつ。 だから――そう、こうも言えるでしょう。 私は星界の果てに棲む――。 - - 2002年02月04日(月) 「オテサーネク」 シュヴァンクマイエル、あなたの文体はどこへ行ったのだ。 あなたの、あの一秒一秒があなたの魂を吹き込まれあなたの刻印を押され、 あなたの、あの一つ一つの存在が限りなく文体をはぎとられた存在となり、 あなたの、あの異なる次元において隠しようもなく物の実相を語る、 あなたの、あの文体はどこへ行ったのだ。 シュヴァンクマイエル、あなたはあまりにもこの世の言葉で語りすぎた。 あなたはあまりにも人間の話法、人間の文体、人間の軌道で語りすぎた。 あなたの言葉を探して、私は画面を駆けずり回らねばならなかった! シュヴァンクマイエル! シュヴァンクマイエル、あなたはあまりにも隅っこへと引き篭ってしまった! 熟した林檎のようだったあなたの横溢したエナジイはどこへいったのか。 あなたはまるで萎びた林檎、硬い皮の中で萎縮した実質。 あの長大な作品に、あなたは半分も入ってはいなかった! シュヴァンクマイエル! ―――――――――――――――――――――――――― シュヴァンクマイエルの「オテサーネク」を見てきた。 感想は上の通りである。 シュヴァンクマイエルの作品は、これまでどのカットを取っても 彼の作品だということは疑いようもなかった。 まるで刻印でも押されているかのように、彼の息吹は行き渡っていた。 だが「オテサーネク」は。 ――その半分は、シュヴァンクマイエルのものだと言われてもわからない。 チェコのある監督の作品だと言われればそれで通る。 あまりにもわかりやすい、あまりにも陳腐な、語彙。 血飛沫――シュヴァンクマイエル、あなたの語彙にはないはずだ、そんなものは! 死は常にあなた独自の言葉で語られていたではないか! もっとずっと恐るべき、もっとずっと鋭い牙を持ったものだったはずだ! だのに、ここでは、他人の言葉があまりにも多く紛れ込んでいる。 あなたの言葉はどこへ行ったのだ、あなたの刻印は、あなたの視界は。 これはあまりにも非人称の人々の視界ではないか! 人間の世の倫理も論理はあなたには無用のものだったはずだ! あなたの倫理と論理は、異なる次元のものだったはずだ! ――むろん、残りの半分はシュヴァンクマイエルのものだ。 木の赤ん坊「オティーク」――それはあなたのものだ。 だが総じてあなたの密度は低かった――。 - - 2002年02月03日(日) 回転する世界と・コトバ 1: Kに会う。 彼女の言葉は夜毎日毎遠のいていく。 2年前に会ってから、会う都度。 あなたの言葉が聞こえなくなる。 あなたの言葉が遠のいていく。 どれほど耳を澄ましても――聞こえなくなっていく。 あなたはどこへ行くの。 そんなにもたくさんの嘘を傷をコトバに織りこんで。 あなたはどこへ行くの、そんなにもあなたの言葉は。 ねえ、あなたの言葉はわたしにはもうほとんどわからない。 あなたは異なる言語を話す人のようだ。 私はあなたの言葉がもう、理解できない。 私はあなたの前で、次第に長く沈黙する。 あなたはそれに気づく。 私もそれを知っている。 にも関わらず――私たちは。 2: あなたの言葉がわからない。 あなたは次第に別の言語に移っていく。 私のいない次元に移っていく。 あなたはどこへ行くの? 私とあなたは互いに見知らぬものとしてであった。 そしてあなたはやがて見知らぬものになってゆくのか。 これが別離だ――知り給え。 わたしとあなたは今、別れつつある。 私とあなたは垂直の線。 この2年を交わり――そして別れゆくのか。 あなたの言葉はもう、私にほとんど触れない。 私の言葉も――おそらく。 この別離は永劫だ。 ああ、永劫なのだ。 K、行くな。 行かないで。 このような別れは――正しくない。 互いに目の前にありながら、無限に遠く離れてゆく――このような別れは。 あなたは沈んで行くのか。 あなたは異なる次元へと移ってゆく。 私はここに立ち止まり。 ――ああ、K、あなたの遠ざかる影を見ている。 泣くことさえ許されない。 あなたがここにいるから。 3: あなたがここにいるから。 私は笑って、あなたに話を合わせるのだ。 既にないひとの声を聞き、顔を見る。 あなたはいない。 どこにもいない。 ――ああ、K。 私がどれほど悲しんでいるか、あなたにわかるだろうか? あなたの死を悼みながら同時にあなたの前に立っていることの苦しさを。 これは私の――幻影か? 笑うべき幻か? だがあなたも感じているはずだ。 私とあなたが次第に遠ざかっていること。――わかっているはずだ。 だからこそ――私とあなたはなにごともなかったようなふりをしている。 笑い、話し――ああ。 無限に横たわる虚空を隔てて――この声が届けと。 届けと――願い。ああ、だが、あなたの言葉はあまりに多くのノイズに紛れ。 願い――K。 行ってしまわないで、ください。 ――それとも、行きつつあるのは、私なのですか。 -
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