enpitu



終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年11月30日(金)

恣意とその肥大、限界について。

1:
恣意は、何にでもなりうる。
にもかかわらず――あるいはそれゆえに――常に不安である。
多くの場合において、醜悪であり、未完成であり、不安定である。
それは自らを常に空中分解の危険の中に置き、
「地に足のついた」感覚とはかけ離れている。

人間は、自らの限界、自らの力の及ばぬ枠によってのみ
自らを知りうるからである。
何にでもなりうる、ということは――人間本来の形状ではない。

そしてその枠とはつまり、
デカルトの言う「内なる道徳律」であり、
ドストエフスキーがシャートフに言わせた
「悪が醜く、善が美しく」見えるという感覚そのものである。


2:
「私はこの手をどこにでも振り下ろせる」
ということは、物理的には事実である。
ひとの顔に振り下ろすことも、自分の顔に振り下ろすことも、
モナリザの絵にむけて振り下ろすことも、
あるいは斧の刃の上に向けて振り下ろすことも、可能である。
それが恣意である。
恣意にとっては、善をなすことも、悪をなすことも、等しい。

「そんなことできっこないわ!」
というのは、常識の叫びであり、礼儀の叫びであり、
自己保存の声であり、また「道徳律」の叫びである。
自らの内側から規制する声である。
それが枠である。
枠は善悪を定め、慣習に従い、こまやかな襞を持つ。

恣意は、無造作な白痴的な実行であり、意思である。
枠は文化であり、大地と進化に根ざすひとつの感覚であり律である。


3:
ひとと二人きりで向き合うとき、私はふと考えることがある。
たとえば彼(彼女)が私に背中を向けたときなどに。

「私は彼(彼女)を殺しうる」

それは、可能だ。
恣意は望めば無造作にそれをするだろう。
ほんの好奇心でさえ足りる。
それができるから=やった、ということさえありうるだろう。


4:
自らのうちに限界と枠を感じるときにだけ、
人間は真に自らを人間と感じるだろう。

望んで自らの内なる規範と感覚に服し、
「わたしにはできない」というときにだけ、
人間は人間だろう。
最も多くの限界を持つものだけが、
最も深く豊かに生きるのだ。


5:
限界を意識し、
流れ出そうとする恣意を鋭く切り裂くことのできる、
そのことによって苦しむ――
――人間。


-

- 2001年11月29日(木)

……。

誰が悪いのか!?
俺だ!

パソコンがウイルスに感染してしまいました。
マジ泣き状態で毒を食らわば皿までと、
OSから再インストール……

救えるデータも救わずに……
結局、火事場から運び出したのは……メルアドのみ。
Qもなんも、消えてしまいました……

というわけで、
ウイルスメールを送ってしまった方、申し訳ありません。
ほんっとに、ほんっとに、ごめんなさい。
セキュリティをしっかりしておかなかったせいです。
ごめんね……。(土下座)

ところで、論文の大事なデータはむろん、
普段からバックアップしているからいいんだけど……
日記のネタがみんな消えたな……

(哀愁の背中、消え行く)


-

- 2001年11月28日(水)

Fly away.

1:

「きみは未来の永遠を信じるようになったんですか?」
「いや、未来の永遠じゃなくて、この地上の永遠の生ですよ。
 そういう瞬間がある。その瞬間まで行きつくと、
 突然時間が静止して、永遠になるのです」
         ――ドストエフスキー『悪霊』より

私は、知っていた。
そうだ、永遠を、幾度予感したことだろう。
それともあれは、確かに永遠だったのでしょうか?

――瞬間において、永遠を生きることはできる。

その瞬間はひとつの高い次元となり、私たちが先へと進んでも、
ねじれの位置に存在しつづけ――永遠に存在し続けるのだ。


2:
神がかって、聞こえるだろうか?

では、あなたは、耳を澄ましたことがないのだ。

遥か遠くまた限りなく近く、絶えることのない永遠を、
――その響きを聞き取ったことがないのだ。
自らのうちに生じたあるものが永遠の存在であり、
けっして褪せることなく無音のうちに鳴り響くだろうと知ることもないのだ。

信じてください。
有限の中にも、永遠はある。
有限の作法に背くことなく永遠は光臨しうる。


3:
私はまだ、それを分析はできない。
それは分析しえないのかもしれない。
叙述しえないのかもしれない。
ただ暗示、反語によってしか、
「物語」によってしか語れないのかもしれない。

だが私は、忘れぬよう、けっして忘れぬよう、書いておこう。


4:
正しい角度――から、見る。

それは、「ほんとうの世界」だ。

私はときどき、それを――垣間見る。
なにもかもがほんとうの、その世界だ。
伸ばされるのは全てほんとうの手、
語られるのは、全てほんとうの言葉。

ユートピアでは、ないかい?

そこには、不幸も幸福と同じ分量だけ、存在するけれど。
悲しみも絶望も存在するけれど。
ああ、それにしても。

ほんとうの言葉しか、なく。
ほんとうの言葉を、話せるならね。
ほんとうの手しか、なく。
ほんとうの手で、触れ合えるならね。

――そこは、ユートピアだよ。

ねえ、考えたことはありませんか?

我々は嘘と沈黙と偽りと真実を織り交ぜて、何をしているのかと。
それは――けっして現出しえない「ほんとうの手」を、
暗示するためなのでは、なかったろうか?
外側を――なぞって。

「ほんとうの手」――「永遠の手」
――あなたに、触れたい。


-

- 2001年11月27日(火)

料理の話、火力は控えめに。

1:
私が小学校一年生の頃、父方のばぁさまが、うちに来たことがあった。
というのも、母上がお産で入院していたからなのだが。

ばぁさま、わしら(私と姉)に、言った。
「何か食べたいものあるのか?」
……私が答えたのだったか、姉が答えたのだったか。
「カレー!」
明治生まれのばぁさまは……しばし黙したのだった。

しかる後に。

ばぁさまは、おもむろに、煮干でダシを取り始めた。
できあがったのがカレーだったのか、
はたまた名前のない食物だったのかは、もう覚えていない。

子供って、残酷よね(ふぅ)


2:
数年前、母方のじぃさまんちで、鍋パーチーをやった。
主催は私よりひとつ年上の従兄弟Aで、
メンバーは、私とその従兄弟以外は、小学校高学年の年少従兄弟連中だった。

さて。

既に四年間の自炊経験のある従兄弟A、
おもむろに昆布を土鍋に放り込んでダシを取り、
そして味付け……そう、ちゃんこ鍋だったので。
その手つきもなかなかに鮮やかで、
私は安心して白菜などザクザクやり、つみれを作り……

しばし。

なんか……ヘンなにおいが。
ふと、見ると。
鍋の横に、薄口醤油との瓶が……。

即座に従兄弟Aの後ろどたまにツッコミ入れた。


3:
↑のばぁさまがお亡くなりになったとき、
我ら血縁者一同、葬式に出席した。
ばぁさまの息子+娘だけで8人、その配偶者だけで同数、
そしてそれぞれ、平均2,5人の孫を生産……。
ともかく、参列者は多かった。

そして、火葬場。

最後のお別れをして、ばぁさまの棺を火葬の炉に入れ、
わしらはしばし、休憩していた。

ウン時間後。

お骨になったばぁさまと、対面。
一番上の伯母が……ポツリ。

「――焼きすぎね」

ああ、諸行無常……。(合掌)


-

- 2001年11月26日(月)

深く静かに。

1:
ねえ、夢は、悲しいから、嫌いだ。

だって、誰も知らないんだもの。
そんなことがあったんだよ、私の夢の中で。
私はそんなことをしたんだよ、そんなものを見たんだよ。

でも、ねえ、それは私しか知らなくて。

私はなにひとつ満足に説明する方法を知らなくて。
証明するなにもなくて。連れて行ける場所もなくて。
そうだったよねえ、と、一緒に思い出してくれるひともなくて。

だから、私も忘れてしまうことにしたんだ。

(かわいそうだね。ああ、かわいそうにね)


2:
ミヒャエル・エンデの『果てしない物語』で。
ファンタージエン国の土台をなすのは、忘れられた夢なのだよ、と。
それらは層をなして積もっているのだよ、と、鉱夫ヨルが言っていたんだ。

私の忘れた、私の夢も、そこにあるの? ねえ、ヨル。

かわいそうな、かわいそうな、私の夢たち。
私にさえ、裏切られて。捨てられて。忘れられて。
でも、一人では、なにも持てないよ。
一人では、どんな宝物も、重いばかりなんだよ。

だから、ごめん、私の夢たち。
ファンタージエンの深い地層の中で、眠っておいで。
おまえたちがどこかにあるということで、私は少しばかり、気が楽だよ。

(こーりんぐ・はうりんぐ・むーん)


3:
ゆめのこども、わたしのこども。

――なにを見ているの?
ああ、雪だね。夜の空から、雪が降ってくる――

――泣いているのだね?
いいよ、私だけは、おまえを邪魔にはしないから――


誰もおまえを、必要とはしない。
おまえの涙など、おまえの悲しみなど、おまえの絶望など。

(誰も私を、必要とはしない。
 私の涙など、私の悲しみなど、私の絶望など)

おまえの涙を、おまえの悲しみを、誰一人受け入れることはない。
それは人間には不可能なことだよ。
だって、人間は誰も寂しいのだからね。

(私の涙を、私の悲しみを、誰一人受け入れることはない。
 それは人間には不可能なことだよ。
 だって、人間は誰も寂しいのだからね)


私はおまえを哀れむ。

(私は私を哀れむ)

私が必要としているものを、おまえに与えよう。
私はおまえの全ての感情を分け持とう。
おまえの悲しみを悲しもう。
おまえの涙を流そう。
おまえと私は、同じ寂しさの輪の中に住む。

(それで私もわずかに慰む)


どうすれば、出られるのだろうね?


-

- 2001年11月25日(日)

反語的自我:非論理的独言的:よみにくーい。

1:
私の言葉は、関わりないのです。
私の心とは。
私の想いとは。

あなたは私の言葉を聞いてはならない。
私の行動の一挙一動に動かされてはならない。
私の全ての表出を信じてはいけない。

私を見てください。
私ではなく。

私を聞いてください。
私ではなく。

私に騙されてはならない。


2:
私の言葉を信じてはならない。
それは私の言葉に過ぎない。

それは嘘ではないにしろ、真実そのものでもないのだから。

重ならないんだ、重ならない。
言葉と、ココロ。
想いなんて、口には出せない。

ねえ、私に騙されないで。


3:
ねえ、私に騙されないで。
ねえ、お願いだから。
泣いている子供に気づいてください。

私だって、あなたに理解されることを、必要としているんだ。
あなたと同じく。

(そんなこと叫ばないよ)


4:
思うように生きる許しをください。
嘘がつけないようになればいい。

――嘘をつきうる、というのが。

私の呪いだ。


5:
誰の手も届かない場所で、私は泣くんだ。
誰の手も届かない場所でしか、私は泣けないんだ。

だから、私を死なせて。干からびさせて。
こんなもの、いらない。

見せる手段は知っている。
見えるとおりのものに、なる、方法がわからない。

お金があれば、何にでも化けられるけど。
毛皮のコートは重いんだ。ムートンの死骸は、重いんだ。
牛の死骸と豚の死骸を噛み砕けというの?
それでは、私はすぐに疲れてしまう。


6:
内側から外側へと。
この水をあふれさせたいのに。
開かれれば祝福となるはずのものが、その鍵が開かない間は呪詛です。

己がそれであるところのものに、なりきる手段を。
自分自身に対する絶えざる注視を忘れる手段を。
出口を、出口を、出口を。

――結び目を、ほどいてしまおうか。


-

- 2001年11月24日(土)

お・く・り・も・の。

1:
現在、便利かつ形美しいので愛用している栞がある。
とあるひとが、誕生日プレゼントに、と、くれたものである。

数度だけ会ったひと、というのは。
私はあまり、顔を覚えない。
ひとの顔を覚えるのは、得意じゃない。

しかし、彼女に関して、記憶は。
その栞を使うごとに新たにされるわけで。
結果として、彼女の顔を、一日数度は思い出している。
覚えてしまった。

そして私が「誰かと会いたくなる頻度」は、
純粋に、「思い出す頻度」×0.001くらいなので、
多分、そのうちに、「どこかへ行きませんか」、と、
彼女に連絡をいれることになるのではないかと思う。


2:
「よすが」というのは、大きなもので。
それだけに、「おくりもの」を受け取ることは難しく。
滅多に私は受け取らず、受け入れず。でも受け取れば。

十年たっても、私は、大切にしている。
私はおよそ、ものをなくすということがないからだ。
それは眠る心臓、「よすが」もなくなり、
その脈拍は間遠となっても、止まることはけしてない。


『――あなたにとって、私の名前が何になろう?』


私にそう問うひとがいるとしたら、そうだ、私は答えよう。
あなたの名前は私の内に住み着いている――私の一部となり。

――心の臓器であり、ひとつの宝石であり、
ひとつの幸いであり、ひとつの季節――だと。


3:
忘却という言葉を。
私はかなり変則的に使う。

――香水において、華やかな果実の、花の香りを裏打ちするのは麝香。
気づかれるのは果実の甘さ、花の清涼な軽やかさ。
長く残り、人々の官能に触れるのは――麝香の方だ。

記憶においても、なべて鮮やかな喜怒哀楽は忘却の前に脆い。
静かに深く残り、鼓動するのは。顔を忘れ、名前を忘れても――残るのは。
深いムスクの香り、あなたへ向けた深く色濃い――

それはにおいに似ている。
ふと、わけもなく物悲しく、胸狭まり、胸苦しい。
それは、あなたの名をした一つの想いが私の中に回想されているからだ。
ひとつの名で、あなたの名で、私はその想いを呼ぼう。
その名を忘れたら――それでもその想いは死なない。

それが忘却だ。私の。
忘れて、忘れない。
忘れるほど、忘れない。

忘却と表現の手だてを持たないもの。
言葉にならないもの、表情ともしえないもの。
ただ予感として自らのうちに閃いて存在を知らせるばかりの。

それが私の「ほんとう」。
出口など、もとよりない。だからこそ深まってゆくばかり。


4:
私が恋愛をしないのは。
恋愛をできないのは。
その感覚を理解できないのは。

つまりきっと。

――そのせいだ。


-

- 2001年11月23日(金)

会話の諸段階5

1:
愛することと憎むこと。
私は、最も愛するとき、最も多く憎む。

わかるだろうか?

あなたに向いたベクトルなのだ、どちらも。
あなたへと向ける私の視線なのだ。


2:
会話は私にとって、
受け取るまい与えるまいと身悶える、その苦痛の身じろぎだ。

ああ、どうか、許してください。

私はそのように弱いのです。
長くいれば、あなたを憎みます。

逃げ損ねて受け取ってしまったものが。
ついうっかりと与えてしまったものが。

たまってゆけば。

ねえ、混じりけなく愛する術を教えてください。


3:
愛しているのです。
憎んでいるのです。

この体をゆすいで空っぽにしない限り。

輪縄のように食い込んでいる。
憎しみを伴わせずに、愛するてだてを。

――教えてください。


4:
私は。

あなたが私を愛させたという理由だけでも、あなたを憎むことができる。
あなたが私を愛しているという理由だけでも、あなたを憎むことができる。

憎んでいるというそれだけで、愛する理由には十分なのです。
憎まれているというそれだけで、愛する理由には十分なのです。

この二重の罠を、抜け出る出口を。


-

- 2001年11月22日(木)

歌。

1:
カラオケに行く。

と。

面白い。


2:
うまくない人がいい。
あるいはちょっと癖のある人がいい。
ちょっと「ハズれた」ときが聞き時だ。

「ハズれた」ことに、どのように気づくか。
どうやって、戻すか。

人間性って、出るよなぁ……。

神経質に、「マズった」と音を引き戻すひと。
ちょっと笑って、自分流で押しとおす人。
気づかれたかな、というように、誰かの視線を見まわすひと。

――ほんの、瞬間なんだ。


3:
マイクを回しても、絶対に受け取らないひと。
気持ちばかり遠慮してから受け取るひと。
自分から、よこせと手を伸ばすひと。
気がつけば、マイク握ってるひと。

曲を入力するとき、自分のペースで入力するひと。
とりあえず回りに勧めてから、じゃ、と、入力するひと。
一回りしたのを見計らって、「リモコンおくれー」と、端的に要求するひと。

ひとが歌っている間は一心不乱に画面に見入っているひと。
関係なく喋ってるひと。
時々隣と言葉を交しながら、曲譜をめくるひと。


4:
おそらく、他の人は、無意識に、やってる。
その程度には、しょうもないこと。

それだけに見ていれば面白いのだけれど――
「場を楽しめる」ためには、意識の下で行わなければならないこと。

私は。

意識的にでなければ、できない。
この場では、どう振舞えばいいのかと。

つまり。――つまるところ。

意識というのは、絶えざる意識化というのは。
そういうことだ。度が過ぎれば視界が白くなる。

私は恐らく、ひとよりも、疲れやすい。
――『地下室の手記』を読んで、共感を覚えるような。
ああ、そうか。

自意識過剰?(笑)


-

- 2001年11月21日(水)

会話の諸段階4

1:
与えること。
受け取ること。
好意。
誠実。
信頼。


2:
好意から出る誠実だけを信じられる。
与えられると確信しているときにだけ受け取れる。

これはつまり、吝嗇なのだ。
より少なく生きようとする意思なのだ。

あらゆる矛盾と欠陥を内包する自体として生きることができず、
姑息に少なく、警戒心ばかりつのらせて神経を尖らせる、
そういう生き方なのだ。

自らを枠にはめ、視界を狭め、笑わずに生きることなのだ。
見えない感情をいつも計算し、帳面につけ、戦々恐々と生きることなのだ。


3:
出口はわかっている。
血を流して生きることだ。
受け取ることも与えることも好意も善意もなにも。
――惜しまずに生きることだ。

笑い飛ばすことだ。
帳面のプラスもマイナスも、念頭に置かずにあらゆることを
踊るように素早く行うことだ。

一つの主体として、限界を知ることだ。
十全には生きれない、と、声高に言うことだ。
借金と負債と債権を数えることなく大股に歩き、笑うことだ。

目の前の全てを。
一切を。
打ち負かし、打ち負かされ、
差し伸べられる『ほんとうの手』を泣きながら取ることだ。

「それがどうした」と唸り、吼え、奪う代わりに、
「それでもいいではないか」と、笑い、受け取ることなのだ。
星だけでなく泥さえも。


4:
私は。
どうすればいいのかは、いつでも、知っているのだ。


-

- 2001年11月20日(火)

会話の諸段階3

1:
礼儀からでも、誠実であることはできる。
「ほう、それから?」と、慇懃に言葉を促し、
相槌を打ち、要所要所で笑い、
さも興味深そうに目を輝かせることはできる。
好意をほのめかすことさえ、できる。
全くの礼儀からでさえ。

いったいどれほどの会話を、
本当の好意、本当の興味をもって我々は行っているだろうか。
礼儀という無色透明の動機からさえ、
我々は好意を装う必要を覚える。
――利害が絡めばなおさら。


2:
何も持っていない人間だけが、全ての好意を信じられる。
礼儀にも値しないと思われたときにだけ、
何も必要とされていないと感じられたときにだけ、
向けられる全ての好意に対して、私は純真になれるだろう。
――子供のように。
そうとも、子供の幸いとは、まさにそこにある。

だが、そうだ。
そのときにさえ、警戒するべきものはある。

「自分をこのように見せたい」という相手の願望、それに巻き込まれることだ。
それは正に私を道化にさせようという意図だ。それを正に私は憎む。

慈善家には慈善を施す相手がいる。
道徳家には諄諄と諭すべき卑劣漢がいる。

見せかけの好意だ――そこにあるのは。

善人になりたいなら、一人で勝手になるがいい。
王様になりたいなら、一人で勝手になるがいい。
私は私、その役回りをお頂戴するほど落ちぶれてはいない。
――私はそう、叫ぶ。


3:
私は、腹立たしげに投げつけられる好意だけを受け取ることができる。
限りなく羞恥に満ちた、おまえのせいだと言わんばかりの、
あるいは――事務的を装ってさも惜しげに――差し出される好意だけを。

これは高すぎる自尊心なのか?
奪ったものだけだ、私を幸福にできるのは。

受け取ることは難しい。
対等のものを返せるというのでなければ、
与えられるばかりの関係は――苦痛に他ならない。
与えられるということはともかくも、敗北だからだ。

恐ろしいのは『ほんとうの手』だ。
その巨大な恩寵、限りない慈悲、恐るべき許しだ。
返礼もならないと知りながら、握り締めたくなってしまう。泣き咽びながら。

だが、この敗北を受け入れられない。

私は――限りなくそれに憧れながら――
  ――だが同時に、それが私の死だということを知っている――


-

- 2001年11月19日(月)

会話の諸段階2

1:相手。
一番簡単に好意を買える話術は、何も言わないこと。
つまり、聞くのに徹することである。

もっとも、相槌の打ち方は難しいし、
話を引き出すことに至っては、タイミングと笑いと冗談口、
そして疑問符と反語、呼び水としての反対など、
微細な技術の使用に習熟する必要がある。

だが、やはり、聞くことは、相手の好意を買う第一の手段である。
人間はすべからく、話したがる生き物だ。


2:聴衆。
話し相手ではなく、周囲にある種の印象を与えようとする会話がある。
見せる、聞かせる、会話である。
ショーとしての会話、聴衆のいる口喧嘩はこれに属する。

誠実と論理は重要とされない。
曲解もはぐらかしも、ここでは正当である。

見せ、また勝つためには、相手の論理をねじまげることは常套、
論旨をすりかえ、誘導を用い、のってくれば嘲り、のらなければ兆発し、
反論をジョークにまぎらわして発展を妨げる。
重要なのは主導権を握ることだ。
相手を翻弄し、自分の用意した結論に落とし込むのがこの会話の勝利。

言葉など、どうとでもなる。
誠実を眠らせてしまえば、どこからでも、どこへでも、行きつける。


3:議題。
対話がある。
相手よりも、話の内容に主眼をおくそれである。

感情はあってはならない。
相手がいないように振舞うことだ。
論理だけを積み重ね、裏付けと問いと検証で積み立てる。
それはむしろ、建築に似ている。

論理に対する誠実と、熱意を。
言葉はわかりやすさよりも正確を。
自分がいないように振舞うことだ。


4:
あなたはわたしをさみしくさせる。
それとも、さみしくさせているのはわたしなのだろうか?

このさみしさは、わたしのものなのだろうか、それともあなたの?

わたしはグラスをのぞきこみ、あなたはこっそり嘆息する。
そしてわたしたちは途方に暮れるのだ、このさみしさ、居座った招かれざる客に。

ほんとうに言葉と心を交し合うことの、なんと困難なことだろう。

わたしたちは双子のようによく似ている。
わたしたちは、その日暮の会話しかしらない。

必要なのは、出口です。
――『ほんとうの手』を、ください。


-

- 2001年11月18日(日)

聞こえますか、見えますか。

1:
「それがどうした」という言葉は。
一切の価値をはねのける――劇薬だ。
分量を間違えては、いけない。

でないと。

町を歩きながら、無限の荒野を歩くことになる。
我が家のベッドで眠りながら、無限の宇宙の真中に横たわることになる。
酷薄な星々の光を全方位に見ながら。

私は時々、多く服用しすぎてそんなハメになっている。


2:
ニーチェは、精神の三つの形態について述べている。
その変身について。

駱駝、から、獅子。そして、幼子。

一切の既成の価値、一切の道徳律をその身に引きうけようとする駱駝。
背負うものの重さに自らの力を知るもの。
一切の既成の価値、一切の道徳律を引き裂き、反抗する獅子。
敵の力をもって、自らの力を知るもの。
そして、幼子。
既成のものを、なにひとつ、持たない。
創造する、もの――。


「それがどうした」と、駱駝も獅子も幼子も言う。


駱駝は言う。それがどうした。
――それは重いだろう。私の背骨をへし折るかもしれない。
  それがどうした、私は背負う。背骨は折れれば折れるがいい。

獅子は言う。それがどうした。
――それは無数の人々にとって道標であり誇りであり至高のものだったろう。
  それがどうした、私は引き裂く。非難したければするがいい。

幼子は言う。それがどうした。
――わたしはなにも知らない。
  それがどうした、わたしもまたひとつのものである。
  わたしはこの目で見るだろう、この耳で聞くだろう。


私はまだ、幼子のようには、それがどうした、と、言えない。
少なくとも、純粋には。


3:
私はまだ駱駝であり、獅子なのだ。
他者によって自らを知るものなのだ。

否。

私は駱駝であり獅子であり、幼子なのだ。
全ては同時に存在する。

存在しうる。
対立項ではない。
あるいは、それが病なのか。

自らを一つの主体として立つことは困難だ。

私ははじめてこの足で立ったときのことを思い出す。
そのとき私はなんとあぶなかしく、頼りなく、そしてまた――
この足の裏で自らの重さを完全に支えるということに――
どれほどか喜びを覚えたことか。
それは、生涯で、最初の歓喜だった。確かに。


4:
「それがどうした」という言葉は。
耐える力を持つ。
――打ち壊す力を持つ。
一切を。何もかもを。全てを。合切を。

だから、廃墟に立たないために、
服容量に気をつけよう。

それとも。

いっそ、廃墟の中に立ってしまえばいいのか。
何もかも打ち壊し投げ捨てて。
そこからしか、作り直せないのか。

それには。

私はまだ、ふんぎりがつかない。


-

- 2001年11月17日(土)

食卓での会話。(備考:おかずはイカとチンゲンサイの炒め物)

母>イカはイカが?
私>うまイカどうか、それが問題だ。
母>イカにも。
私>(食う)……イカしてます。
母>それはイカった。

乗る私も私だが、言い出す母も母だ。
いや、止めろよ親父、弟。
……実話だけに寒い。


1:
会話の諸段階について。

Q:どっか食べに行こうか?
A:うん、行く。

この問答について、考えてみよう。
一見、この問答は正しい。
「する?」と聞かれれば、答えとして、
文法的には「はい」「いいえ」しかないからだ。

しかしながら、このAを現実の会話とするなら、
無限のバリエーションがある中の、非常に退屈な一つでしかない。

文法的に正しい会話の流れをチャートしてみよう。

1「どっか食べ行く?」
2「行く」(もしくは「行かない」)
3「どこ行く?」
4「中華がいい」
5「俺はイヤだ」
6「じゃあ何食べたい?」
7「昨日中華食べたから、イタリアンがいい」
8「いいよ」
9「『パスタでほい』に行く?」
10「行かない」
11「じゃあどこ行く?」
12「『パスタでどん』はどう」
13「行こう」


2:
文法的に正しい会話は、
私だったら、間違いなく4か5でブチ切れる。

1「どっか食べに行く?」
2「どこ行く?」
3「昨日中華食べたから、イタリアンがいい」
4「『パスタでほい』に行く?」
5「『パスタでどん』はどう?」
6「行こう」

この程度のテンポのよさがなければ、
その会話は、鈍重である。

全ての否定は、否定の理由と新しい提案を含んでいるべきであるし、
肯定の後には、会話を次の段階に進める問いがあるべきである。


3:
会話の段階を「とばす」こと、あるいは「短縮」することは、
単に時間の節約になるだけではなく、
テンポよく互いに提案をし、応否を交換して
双方の満足に行く方向を探ることによって、
一つのことを「しようという」意思・熱意があるということを
表示することにもなる。

何を言っても、「はい」「いいえ」、
あるいは「どっちでも」「なんでも」と答えることは
相手に対して主導権を渡すというだけではなく、
相手を侮辱することになる。

なぜならそれは相手とともに一つのことを「しようという」
意思・熱意がないということを表示しているからである。


4:
嘘を言わずに、嘘をつく方法。

A>怒った?
B>どうしてそう思うわけ?
A>だって、手ぇつないでくれないんだもん。
B>今日みたいに暑い日に、手なんかつないでいられるかよ。

Bは、怒っているのである。
だが会話の「とばし」を応用して、怒った、と、言わずにすませている。
嘘をつかなくても、嘘はつける。

疑問形で。
あるいは、会話の狭間の沈黙で。
嘘はつける。
一言だって、嘘を言わずに。
あるいは、自覚することさえなしに。


-

- 2001年11月16日(金)

Open your eyes, and see it.

1:
あなたが私の方を向いているかどうか、
私の目を見て私の声を聞き言葉を聞いているかどうか。

私にはそれとわかります。

あなたが少しでも別のものに気を取られていれば、
始めからはねのけようとして耳に覆いをつけていれば、
あるいはある特別なことしか聞くまいと耳に角度をつけていれば
私に対してある種の歪みを持っていれば。

私にはそれとわかります。

あなたが少しでも、自分自身のスタイルに固執していたり、
自分で信じていないことを言ったりしたら。
たとえそれが文字だったとしても。

私にはそれとわかります。

嘘ほどわかりやすいものは、ないんです。
障壁ほどわかりやすいものは、ないんです。


2:
嘘に出会ったとき。
障壁に出会ったとき。

私は考えます。
考えないときもありますが。
それは相手になんの興味も持っていない場合で。

私は考えます。
歪みから類推し、読み解く方が、いろいろなものが見えるから。
ほら、言うでしょう、相手がどんな人間か知ろうと思ったら、
そのひとが何に対して怒るか、知れ、って。

極端な部分から、理解を始めます。
そのとき、私は聞くのです。
あなたから発せられる「私・ハ・誰?」という問いを。


3:
私の目は私の目に過ぎません。
あなた自身を見ようと努力はしますが、
私が持っているのは私という一つのいびつなものさしだけなのです。

だから。

あなたもいびつに見えます。
私はその歪みを、できるだけ是正しようとしますが、
全てを正しく引き写すことは不可能です。

私は。

あなたの嘘を咎めない。
あなたの障壁を、フィルタを、咎めない。
そのようなものとしてあなたを理解するだけです。
なぜならそのフィルタ、その嘘、その障壁は、
確かにあなたなのですから。

そして。

私もまた、私自身の持つ障壁について、
フィルタについて、嘘について、
洞察し、知りたいと思うのです。
知ろうとするのです。



あ、だめ。眠い。
補足するかもしれんし、しないかもー。
おやすみ(ぐう)


-

- 2001年11月15日(木)

closed circle.

1:
ミステリ用語。
いわゆる閉鎖空間。
ひなびた村や、城館なんか。
つまりは容疑者の限られる、そういう場所。

うっかりヘタな作家が使うと
とたんにうさんくさくなるが、
うまくすれば緊迫感は鮮やかに浮かび出す。


閉じられた輪は。
閉じられた輪を。


2:
私はひとつのclosed circle。
箱の中のものは、重さをはかるのは簡単だけれど、
その中身の構造を知るのは難しい。

開けてしまえば壊れてしまう。
開けなければ見えない。
取り出せばそれは同じものでありながら同じものでない。


閉じられた空間を。
閉じられた構造は。


3:
この閉じたものを。
開き失う許しがほしい。
世界に向けて開き、空の底をあらわにする許しがほしい。

結び目はどこに行くの?
ここに、この紐の上に確かにあるのに、
ほどけばどこにもない、その破片さえ落ちてはいない。

謎はどこへ行くの?
ここに、目の前に確かにあったのに。
解かれればそれは、はじめからなかったよう。


スピンクス、結び目にして謎なりし、おまえ。
曲がれる爪持つ乙女、有翼の魔物よ。
おまえは確かにここにいたのに。


私もまた、消えたい。おまえのように。
――オイディプスを待とう。


-

- 2001年11月14日(水)

全てにおいて、自信喪失中。
どこやったっけ、おーい、自信〜……

あぁ、旅に出たい……


-

- 2001年11月13日(火)

きゃらくたら。

1:
彼らは私の破片。
自分の破片だってことは、
自分と同程度にわかんないってこと。

だけど。

純粋に観念だけの存在である以上、
キャラクターのが、ボロが出るのははやい。
だって、彼らの感情について、
私はどこまで敏感であろうとしなければ、
ロールが回せないから。
絶えざる言語化の中では、なにも誤魔化せないんだ。

つまり。

自分に対して抑圧していたものの輪郭が、
キャラクターの中にあまりに鮮明に浮かび上がり、
そこではじめて自分の中にそうしたものがあると
気づかされることも、多いってこと。


2:
ここでゲロを吐くのを、許してください。
私はここしか、知らないんだ、自分を書きつける場所を。
もっとカウンタのめぐりの悪いページだったらよかったのに。
誰も私に、このことについて訊いてはいけない。
私はそれに耐えられないから。

辛い。

私はこれまで目を背けてた一つの陸地を、
私の中に見つけたところだ。
なんて、暗いんだろう。

苦しい。

それでも、私はもう見つけてしまったのだから。
この陸地を、ゆっくりと、見なければならない。
その隅々まで。


3:
一つの地平、一つの孤独。妄執?わからない。
ねえ、誰でも、こんな風景を内側に持っているのですか?
私だけではなくて?

ねえ、それならなんて、
この世界は見かけ通りのものでないことだろう。

このような暗い地平を彷徨したことのあるひとへ。
時折胸の内で彷徨するひとへ。

教えてください。

あなたがたはどうやって、それに耐えているのですか?


(答えてはいけない)


-

- 2001年11月12日(月)

人間嫌い

1:
今年の夏、
悪友Kと阪神百貨店屋上の
ビアガーデンに行ったときの会話。
夕方から飲み始め、暗くなりはじめた頃。


私>ああ、もう暗くなってきたね。
K>向こうのビルの明かりがよく見えるよ。
私>ほんとだ。人影がいっぱい動いてるのが見えるや。
K>私あんまり見えないわ。あなた、目、いいものねえ。
私>うん。なんか、ほっとする。人の生きてる町だなあって。
K>あなた、人間が好きなんだね……。


Kの口調は、お上品である。
関西ではちょっと名の知れた女子大の院生で、
繊細な感じの、ぱっちりした目が印象的な知的美人、である。
しかしてその実体はっ……

……いや、それはおいといて。

私は、このとき、
人間が好き、と、評されて、びっくらこいた。
Kはゴーストタウンのように人影のない町のが好きなのだろうか?
人影揺らめく窓や灯り、行き交う人の流れにほっとするのは
人間が好きでないとできないことなんだろうか?


2:
私は人間が好きなんだろうか。
今年の7月から、延々と考えつづけている。
ほーら、私に余計なことを言わない方がいい。

ちなみに、この同じ友人Kと梅田を歩いていて、
道に迷っているふうの老夫婦を見かけたことがある。

はっきり言って、私はあんまり、梅田はわからん。
難波や心斎橋がわかるのかと言われれば、それもわからんが、
しかし……

気がついたら、どうかしましたか、と、声をかけていた。
脊髄反射と思ってくれていい。
果たして私はわからず、うっかり先へ行きかけていた
梅田を遊び場にしているKが戻ってきてテキパキ説明した。

老夫婦は、ありがとうございました、と言って道を急いでいった。
私とKは何事もなく喋りながら歩き出し、
しかしこのとき、Kは私に、「人間が好きねえ」とは
言わなかったのである。

どういうことなのだろう?


3:
遠景としての人間と、
見知らぬひととしての人間と。

彼女は何を言いたかったのだろう?
彼女の言う人間とは、なんだったのだろう?


好きキライ、は、感情の領域だ。


町の灯を見てほっとするのと、
困ってるひとに脊髄反射で声をかけるのと、
彼女は自分に引き比べ、私に何を思ったのだろう。


わからないよ。


わからないよ、K。
あなたは町の灯にどのような感情を覚えたのですか?
あなたは立ち往生しているひとに、どのような感情をおぼえたのですか?


あなたの言う人間とは、誰ですか?何ですか?
あなたは私に何を見ましたか?


4:
複雑なプリズムをたくさん持っている、彼女の目は。
私にはよくわからない。
私は結局、私の知っていることしか理解できないから。

何かが内部で渦巻いて、外に出れずに泣いているように思う。
これは勝手な憶測だろうか?

彼女は誰かと約束したのだろうか、何一つ語らないことを。
一つの秘密を隠して、静かに閉じていることを。
スフィンクスのようにそこに座り通すことを。


ねえ、私はあなたの言葉を聞きたい。



そーいや、いっぺん、泣かしたな……(こそこそ)


-

- 2001年11月11日(日)

1:
実家に帰ってた、この週末。
駅につく前から、なんか変だなー、と、
……思ってたんだ。

いつもは迎えに来てくれるお袋さんが、来れない、と、言うから。

代わりに迎えに来た親父の車に乗る。
お袋さんの車どうかしたの、と、聞いた。

……親父の答えが、妙に歯切れが悪い。

根掘り葉掘り、聞く。
ちなみに私はしつこい。
しまいに、親父が折れた。

――事故を起こしたので、しばらく乗らないように言ってある。


2:
事故そのものは、大したことはなかったらしい。
急いでいたお袋さんが高校生をちろっとひっかけて、
足に軽い打撲を負わせてしまった、らしい。

問題は。

ほぼ一週間前に起こったその事故を、
誰も私に知らせなかった、ということだ。
そう……

誰も、

私に……

知らせなかった!

……と、いうことだ。(怒)
ああ、ムカつく。


3:
示談で済んだから……

(ほう)

あんたに言ってもどうしようもないし……

(そーですな)

おじいちゃんにも言ってないし……

(それがどーした!)

……ああ、ムカつく。


4:
文句は言わなかった。
最近気づいたが、私は文句を言うのが苦手らしい。

論理的に、親父とお袋さんは正しい。
だが、私はムカつく。

論理的に、私は文句を言えない。
だが、私はムカついている。

どーしろというのだ!(うがー)

ああ、ムカつくー……

(そしてオチないまま終る)


-

- 2001年11月10日(土)

Man in the mirror.

1:
あなたの前の私と、あなたの前の私とでは、
おそらくまるで異なる。
振るまいも、表情も、言葉も、なにもかも。

これをあなたは、奇妙なこととはしないでしょう。

TPOなる言葉は便利、
そうとも、友達といるときと仕事仲間といるときと、
まるきり同じように振舞うわけにはいかない。

あなたはこれを、奇妙なこととはしないでしょう?


……だが私は、奇妙なこととするのです。


2:
「死の後に自分自身をそれと見分け得るだろうか?
 そのようななにものか、永遠性を人間は持つだろうか?」
             キェルケゴール『死に至る病』


永遠を問うひとがいる。神と生と死を問うひとがいる。
私はも少しつつましく、現在にその問いを移し返そう。


――私のすべての局面に渡って、
  紛れもなく私と見分けえるなにものか、
  統一的ななにものか、すなわち『私』自体は存在するのか?――


3:
私は思考する。
思案する。

記憶、は、連続している。
だが私はあたかも複数の人間であるかのように見える。――振りかえれば。
私は断片の集積に過ぎないのだろうか?

私は一つの主体ではなく、
私は一つの人格ではなく、
ただ単に――


幾つかの『性格』と『記憶』の集積に過ぎないのだろうか?


それは焼けつく問いだ。
「私などいない」と認めたいものがいるだろうか?
論理的な帰結がそのように示したとしたら?


いいや、私はいる。


私はここにいる。――ここに!


4:
私の親友は私のある側面について証言するだろう。

――はい、彼女は私の高校時代の友人でした。
――はい、彼女はある種の本を読んでいました。
――はい、彼女はそのように語りました。

私の母は私のある側面について証言するだろう。

――はい、あの子は私の生んだ子供です。
――はい、あの子はそこへ行きました。
――はい、あの子はそうした食べ物を好み、そのように行動しました。

私の姉、私の父、私の悪友たち、私の弟、
彼らはそれぞれに証言するだろう。

それらの証言は膨大であり――
おそらく正確でさえあり、
しかもそれらは少しづつ齟齬するだろう。
そんなことをするはずがない、と、誰かの言うそのところのものが、
他の誰かの証言でまさに私がやっていたことだと証明されるだろう。
しかも誰一人間違っていないだろう。

そして。

それらの証言をすべて集めても、そこに私はいないだろう!
私の全局面についての証言を集めたとしてもだ!
私は相変わらずそこにはいないだろう。
私の魂はそのむなしい箱には宿らず、
誰も私を見なかったことが明らかになるだろう!


――私はどこにいるのか?誰が私を知るのか?私とは誰なのか?


5:
ならば私は私を知っているのだろうか?
だが、そもそもの始めから言われてはいなかったか?

そうだ、自分のことが一番わからない――

私の証言が一番支離滅裂だといわれることになるだろう。
そんなことはわかっている。
だが、わからないなら――

わかるようにするまでだ。

諦めるのは性に合わない、牙と爪を剥き出して吼えよう。
この問いがいかに巨大であろうとも、
私はただ進むだけだ。私はただ、殺すまで止めないだけだ。


わかるだろうか?


6:
ここに書きつけているのは、
すべての証言の真中にあいた穴、
私による私自身への洞察だ。


――血だらけの爪と牙。



(ああ、神を信じることができさえしたら!)


-

- 2001年11月09日(金)

げぇむ・れびゅう3
ばっどえんでぃんぐーっ!!(涙)

1:
ミラ○ル・ハート、なる、
いかにもヤヲイゲームくさいタイトル。
インストール、起動。(ぷち)

ぎゃあ。

タイトル画面が、いかにもショタっぽい少年二人、
ちゅうしている絵である。
絵柄は……ソフトなクランプ、だろうか?

そう……顔の半分が目のアレである。
頭蓋骨の構造はどうなってるんだ!?
後ろからドツイたら、その目ン玉ポロッて落ちるだろ!
始める前からつっこみつつ……
いったい最後まで私はこの絵に耐えられるだろうか……(ゼェハァ)
半分くらい自虐的に、ゲーム・スタート。


2:
すごいよ、すごいよマサルさん!
幼馴染だって!(ウププ)
「結婚しようね」だって!(ププゥ)
引越ししても忘れないでねだって!(プフゥッ)
変身薬だって!(ゲフゥ)

……。

ごめんなさい、しちゃおうかなー?(首傾げつつかわいらしく)

……。

学園モノ定番、高貴で冷たい生徒会長。
腹黒そうな副生徒会長。……影の生徒会長かぁ……。
親衛隊、寮のお隣さん、化学部部長は……
ヘンな中国人……

……。

ごめんなさい、しちゃおうかなー?(魂魄抜けかけ)

……。

生徒総会、ああ風紀委員、服装の乱れで減点ッスか……。
生徒会長、ちゅうしたら変身ッスか……。
マッド・サイエンティストの父親ってどうよ……。
ぼーっとしてたらゴールポストに正面衝突、おまえはドリフか主人公……?

……。

ごめんなさい、しちゃおうかなー?(るーるー)

やっぱショタはダメだよー。
俺はむいてねぇよー。
ごめんよー。

と思いきや……ん?

保健室に入っていった主人公……。

ん?

やあよく来たねとお迎えくださるのは保健室のセンセイ。
ナニユエ、かすり傷なのにベッドに寝かせますか?
ナニユエ、なめますか?
ナニユエ、脱がしますか?

そこに誰か入ってきた!
ヘルプミー!(泣き入り)

そこで選択肢が。
→(○×先生が入ってきた)
→(生徒会長兼幼馴染が入ってきた)

えーと、えーと……
確か○×センセイは保健のセンセイの恋人だったはず!
止めてくれぇ!(ぽち)

○×センセイ>おまえは、俺に飽きたのか?>保健のセンセイ

……は?

○×センセイ>許してくれ、俺は保健のセンセイには逆らえない……

…………はいぃいいい!?(ぎゃーす)


3:
あえなく3Pに発展……
どこに必然性が!?
これまでの伏線はぁあああああ!?

そしてなんですか?

(もっと刺激がほしい……)

画面の下に出るのはなんですか!????

とらい・あげぃん………?(ひでぶ)

あなどった……
ショタ絵だと、あなどった……
ヤヲイゲームだとあなどった……

SMネタのバッド・エンディング掴まされた……

とらい・あげいん?
とらい・あげいんですと……?


……………。



短い命だった、さらばミラクル・○ート!!

(ぷち←あんいんすとーる)


-

- 2001年11月08日(木)

げぇむ・れびゅう2
ネタバレあります。いりますか?

1:
炎○留をやってみる。
インストール、起動。(ぽちっとな)
シュミレーション・ゲームのようです。

主人公はごく普通の大学二年生。
ただホモなだけー。
一人暮しの部屋もなかなかきれいです。感心感心。

一日目は、しすてまちっくに進行。
自由度、あんまナシ。
引越し屋に行き、幼馴染クン家に行く。
幼馴染くんは爽やか少年系?
引越し屋さんはスーパーマッチョ系?

ニ日目、朝。
とりあえずクラブに行く。
サッカー部ね、健康的だこと。

……。
……。

惚れました。
ごめんなさい、あとのキャラどーでもいいです。

池島センパーイ!(きゃー)


2:
知らないひとのために、注意書きを書くと。
この池島センパイというのは、

脳味噌までサッカー。

なヒトです。
このヒト、22年ほど生きてきたうちの、
25年くらいはサッカーしてたでしょう。

性格は、ものごっつ天然。
黙ってにっこり笑ってるから、ああ、わかってるのかと思ったら
ちっともわかってないいうタイプ。

顔? うーん、スラム○ンクの、ゴリかな。
とってもキューッ!(←シュワちゃんラヴなヒト)

上目遣いで見上げるゴリ
視線を逸らして顔を赤らめるゴリ
ああ、なんてかわいいのっ!(←類人猿好きなヒト)

池島センパーイ!(きゃー)


3:
というわけで、他のキャラには目もくれず、
学校にのみ通い詰める。
クラブにのみ出席し続ける。
ヒロイン(?)らしき幼馴染クンのコールも無視。
親密度はどんどんアップ。
イベントは起こりまくり。

ホモのためのホモゲームという肩書きに嘘はなく、
極限まで濃い描写とエロ絵。
免疫のない私はしまいには胃が空えづき
しょせん私はただのヤヲイ娘ねーと思いつつ、
それでもやる。(←バカ)

池島せんぱーい!(きゃー)


4:
ちなみに、受け攻めを選べるスグレモノなゲームシステム。
私は、当然攻め。
どうせなら、ねえ……(ふっふっふ)

「おまえとひとつになれてよかった……」
とはにかむように上目遣いで言われては脱力し!

「おまえ、俺のこと、さ……いや、いい……」
と、気弱に視線を逸らされては椅子からずり落ちる!

サイコーだよ!
サイコーだよ、ゴリ!

池島せんぱーい!(きゃー)


5:
というわけで、無事エンディング。
部の存亡を賭けた試合を二人で勝利に導き、
果たして主人公は無事にセンパイをゲット。

「恋人なんだから……」
という甘やかなセリフになんとなくホロリとし、
名前で呼び合う二人はほほえましく……

エンディングに流れたイメージ映像に空えづく私……

私が悪うございました。(土下座)







*ゲーム、よくできてました。
 ヤヲイ娘の神経がやわだっただけです。(うむ)
 美少年狙えばよかったのか?
 でもなあ……(←マッチョ好き)


-

- 2001年11月07日(水)

げぇむ・れびゅう。

1:
風呂から出て、部屋へと帰ろうとすると……
後ろっから、大家さんに呼びとめられた。

「小包、届いてますよ」

小包!
おふくろさんから食料が届かなくなって久しく、
通販をしなくなってから久しく、
当然へんな宗教にも入っていない!

だが私には、心当たりがあった。
その前の日辺りに、オンのお友達が、
送るよーと、言ってくれてたのである!

喜び勇んで部屋に戻り、
パッケージをびりびり開ける!
だって待ちきれないもんね〜!!

え?中身?

エロゲー

それもホモゲー。ヤヲイゲー。
わーい、ありがとTさーん!(手を振り)


2:
さて、喜び勇んで中身を見て、
かわいい包み紙だなー、
ああ、こんなかわいいヌイグルミー!
などと喜び……

しかしともかく、なにはともあれ。

エロゲーホモゲー♪

たっくさん送ってくれたので、
どれからしようか、迷う迷う〜♪
婦女子じゃなくって腐女子だからい〜の〜♪
ど・れ・に・し・よ・う・か・な〜♪

……うーん。

とりあえず、上から順にやってくことにする。


3:
タイトル『蒼○の月』。
インストールして、はい、スタート。
すげー、絵、キレー。
キャラかわいー。
音楽、キレー。

ストーリー……めっちゃ都合ええでやんの。

ああ、突っ込みどころ満載!
なんでやねーん、んなアホなー!
だっははははは、そーきたかー!
おっちゃんおっちゃん、必然性って言葉知ってんかー?!
わーはははははは、ごっつオモロイわー!(←怒るとき・笑うとき大阪弁)

しているうちに。
エンディングまで行ってしまった。
所要時間、四時間くらいか?(←バカ)


4:
ごっつおもろかったー腹イタイわー。(注:ファンタジー善悪のたたかひの物語)
このイキオイで次のゲームもやったろかー、と、思いつつ。

ん?

最初のメニュー画面、
『はじめる』
『続ける』
『思い出』
『終了』

ん?『思い出』?
ぽち、と、押してみた。
作品中に出てきた画像が一覧で表示されるらしい。
よくできたエロ絵だったよねー、と、感心しつつ、見る。

……見る。
…………見る。

見れないのが、ある。
正確には、サムネイルが並んでいる画面の中に、
タイトルだけ入ったものが幾つかあるということだが。

うーん?(首捻り)

……ああ、そうか。
ゲーム中の選択肢いかんでストーリー変わるのか。(あたりまえ)
で、そっちの選択肢を選ばないと見れない画像もあるのね。
なるほど。

って。

見れないの、多いじゃんかよー。
あたし、三分のニくらいしか見てないよー。
しかも続きで見れてない画像むっさ多いやんけー。

は。


5:
もしかしてもしかすると。

私は……もしかして。

エロ画像

かなりの頻度で見落としていたのではないだろうか!
エロできないPLの汚名はダテじゃないぞ!
十分ありえるぞ!
そうだ、あのときあの選択肢を選んでれば
絶対エロになってただろうというのを、

サクッと無視した記憶があるぞ!

……。

…………。



も一回、やるか。(にひる)


-

- 2001年11月06日(火)

困った。
福岡県庁発の郵便物がまだ届かない。
あれがないと、論文、進まないんですがー!(九州の方向いて○村係長に叫ぶ)
というわけで、現実逃避。

1:
探しているのは、夜の静寂。
誰も住まない心の闇。

(あまりにも多くひとのために明け渡した)

耳を塞ぎ、目を閉じて。
私は私を見つめる。

(誰にも泣き顔を見せれずに押し入れの中で泣く子供)

おまえ・私にはなにもやらない。
飢えて死ね、と、いじめてみる。

(闇をください、どうか闇をください)

誰もがみんな、こんな暗い場所を持っているなら。
それならなんと、世界は見かけどおりのものでないことか。


2:
あなたは私を見ない。
私がそれを見せないから。

(そうしてそれがつまづきだ)

私の背けた顔を、あなたが見なければならない。
あなたは私よりも私を愛さねばならない。

(でないと私が愛せない)

ここにあるのは背理、一つの奇跡が必要なのです、
この世の外のルールで歩いてください。

(そうでなければたどりつけない)

足を上げて下ろすことだけではたどり着けない場所もある。
ニュートンの法則が届かないところではアインシュタインが支配する。


3:
時々、言ってしまおうかと思う言葉がある。
気狂いじみていても、かまわない。
時代遅れでも、かまわない。

(信じますと)

時々、叫ばずにはいられないかと思う言葉がある。
この血管が破裂しそうで。
この脳味噌が弾け飛びそうで。

(信じます、信じます、あなたがそこにあることをと)

それでも、叫ばない。
私はだだっこだ。不信心者であることで、
あなたの目を私の上につないでおきたい。

(この背でしか叫べない。背けた顔でしか)

つまりこれが、アインシュタイン?
……違うよ、ボーアだ。

それとも?

そうとも、名前のない――。


あ、郵便、きた。
よかった……郵便事故でなくって(涙)


-

- 2001年11月05日(月)

湯の山レポート3.
最終日。最後までだれだれ。

1:
ごはんですよーと起こされる。
……九時まで寝てたのだよ。

そして、相変わらずうまい朝飯。
鹿肉の佃煮グーッ!(親指)
ほかほかのオムレツ、グーッ!(親指)
蕪とえびのほこほこの煮物、グググ――!!(親指涙)
ああ、幸せ……。

幸せすぎて、飯の後、またもや寝る。

起きたら昼でした。
横でnanaiさん、本読んでました。
だらけ人間でごめんよぅ……。

ちなみに、布団、二枚並べて敷いたのであるが。
足下から見て、右が私、左がnanaiさんだったと思いねえ。
私は右脇を下に、丸まって寝るクセがある。
nanaiさんはうつぶせに、右に傾いで寝るクセがある。
……夜中にふっと目を覚ますと、顔、間近(笑)

一瞬、このひとはわたしんちでナニをしているんだろう、と、
思ってしまいますな。頭が寝ぼけてると。
約一秒ほど、見つめてるうちに、あ、そっか、温泉だ、と、理解。
また、寝る。(笑)

まあ、背中あわせで寝るよりは仲良しっぽくて、よい、ということで(うむ)


2:
さて、昼!
そろそろ部屋を出ないといかん、というわけで、
ごそごそしてごそごそしてごそごそする。

バスに乗って、駅に着。
ありゃ、電車、出たとこだわさ。
近くの喫茶店に入り、コーヒー頼む。

ぱ:コーヒー、いろいろあるねえ。
  アメリカン、ブレンド……温泉……温泉!?
N:……温泉。謎、だね……。(うーむ)
ぱ:……頼んでみようか。
(かくして注文。ややあって到着)
お店のひと:お待たせしました、温泉コーヒーです。
N:ありがとう。
ぱ:温泉コーヒーって、温泉のお湯で沸かすんですか?
お店のひと:いいえ、そういうわけでは……。
(そそくさと去る、お店のひと。見送るわしら)

なんだったんだ、なんだったんだ温泉コーヒー!?
わかんないぞ、ブレンドコーヒーとの100円の値段差はなんだったんだ!?
誰か教えてくれ、温泉コーヒー!!!!


さて、うっかり二時間ほど喋りこみ、ようやく外に出る。
ちなみに雨である。昨日のお天気が嘘のようだった。


3:
電車は普通、ゆらゆらと四日市へ。
このまま別れるのももったいないし、どっかで遊ぼうか、と、話してた。

カラオケなど、どうだろう。
とか言ってたのだが……
四日市駅を下りたとたんに、
ポスター発見「古代ペルシア展」。

行く行く行くー、と、私がダダこねて、行くこと決定。(笑)
このとき15:00くらい。

四日市市立博物館。
なかなかにハイカラだが、雨の月曜日とあって、人影ナシ。
独立法人化されたら潰れるね、まず。
という確信を抱きつつ、特別展示室へ。

陶器土器ばっかりというのは、ある意味地味かもしれない。
が、見るのが私とnanaiさんである。
もうなんか、つっこみどころ満載、二時間半ほどかけて見て回る。

陶器、土器、コイン、装飾品。
生きては死んだ人々の、その記憶。
その手がこね、その手が使い、その手が埋めた。
なかなか、いいもんだ。

だが、コバルトブルーの器にいったいナニを盛ったんだろう……
肉盛ったら、絶対、まずそう……だよねえ。


4:
さて、ハラヘリヘリハラ。
四日市についてのわしらの知識は皆無だった……
なんかグルメ本はないかとコンビニに行く。ナイ。(即答)
本屋を探すか、と、外に出る。

あ、にんにく屋。

三重県以東の人は知るまい、神戸にんにく屋。
そしてこれだけで、関西のグルメ世界の方が強いと思う私。
悔しかったら行ってみろ(えへん)

とにかくにんにくを使ったメニュウだけなこの店、
ヘルシーでスパイシーで、ともかくうまいのなんの、
それだけに人気も高く、
うっかり梅田や難波の店に行くと、優に一時間は待たされる。
が、ここは雨の月曜日四日市。

Sサイズ(二人前)で、三品頼む。
ガーリックとほうれん草のサラダ、
さくさくエビ春巻き。
パスタ、ワタリガニの生クリームソースかけ。
うまいのなんの、ええもう、ご満悦。
特に、パスタ。
生クリームの深みの下に、カニの濃厚な味がじんわりと広がる。
宿の野趣に富んだのとはまた違う、繊細ゴージャスな味覚の幸福(うっとり)

デザートは、私→白ゴマと黒ゴマのアイスクリーム、抹茶ソース。
nanaiさん→自家製杏仁豆腐苺入り。
うまいって、うまいって〜……。(くぅ)

さて、かくするうちにも、時間が時間である。
ああこの、あらゆる意味で舌を使い倒した温泉道行きも終わりなのねえ。
味覚の方はもう、さんざん書いたが、
どれくらい喋ったかというと、ちょっとログがないのでわからない。
しかし、多分、1000KBくらいにはなるだろう、
テキストファイルで保存しても。
それっくらい喋った。それでも尽きてない。

私は基本、無口なひとだが、
それは単に、喋ることがないから喋らないだけである。
こんなに自分に喋ることがあったのかー……と、
かなりの程度、びっくらこいた。

しかし、時は無常にも過ぎ去るのであった。
ああん、名残惜しいよnanaiさーん。
と、最後にまだ喫茶店に入って喋り倒し。
そこにおいてあったメモ帳に怪しい絵を描き。

そして、時間であった。
ホームは別々、駅でお別れ。
あんまり名残惜しいのでnanaiさんの頭撫でたら、怒られた……(くすん)
次はスキー行こうね、あたし滑れないけど。


5:
帰宅したのが、21:00過ぎ。
ウーロン茶飲みつつ、パソコン、開く。
パソコンの画面には、三文字、浮かんだとさ。

おわり。

……どっとはらい。


-

- 2001年11月04日(日)

湯の山温泉レポート2

1:
あさごはん。
海の幸! 山の幸!
またもや……

うーまーいー!!(感涙)

というのはおいといて。
いやー、ほんとに食い物のうまい宿だわ……


昼まで寝てた。
何をしに行ったのかというツッコミは却下。
そのまま一日寝ててもよかったのだが(……)
まあせっかくだから、というわけで、宿を出る。


前日の雨が嘘のよう。
雲一つなく晴れて、空は青く、光が清い。

着いたときから気になっていた、ロープウェイに乗ることにする。
このとき既に……14:30。


並んでるよ、並んでるよヲイ。
待ち時間1時間だよヲイ。
どっからこんなに人間、湧いて出やがった……。
と、発着所について、愕然。

ちなみに、湯の山温泉というのは、イイ感じにひなびた温泉街で、
多分一番デカかったであろう旅館が閉館してたり、
よくわからん廃墟が一つ二つ三ついや四つくらい
あったりして……ひなびたっつーか、すたれた?これって禁句?
なんて言いますか……このままいったら、ちょっと怖いかな?
というようなトコなのです。

だから、余計に、あの人ごみは意外だった次第。
しかしまあ、聞いてみればなんのことはない、
前日の雨で行けなかった人々が今日にズレこんだから、
二日分の人出になったということらしい。

とにかく、なんか意地でも乗りたい気分だったので、並ぶ。
いや、nanaiさんに並んでもらう(……)。
いや別に、私がどっかに座り込んでのうのうとしてたわけではなく……。
発着所脇の店屋で売ってた『大石焼き』を食べたくて、
そっちに並んでたのである。

が。

一度に六枚しか焼かない、ガンコおとっつぁんの大石焼き……。
待てないよ、待てないよおとっつぁん!(涙)
結局、ロープウェイの方で待ってくれてたnanaiさんが入り口まで既に進んで
困り顔できょろきょろしているのに気づいて、途中で断念。
いつか食ってやるぅう……。(涙びたびた)


2:
さて、ロープウゥエイ。
どこに行くためのロープウェイなのか考えてなかった私。(と、多分nanaiさん*)

……。

御在所岳。
標高1000メートル級のおやまは、
その昔から、修験者たちの聖地だったそうな。(←いいかげん)

約十二分ほども、伊勢湾まで見渡せる絶景を楽しみながら、
ロープウェイに揺られ……揺られ……。
着いた山頂は。


寒かった。


気温が、下と10℃違うんだな、寒いんだな。
もう紅葉も終わってたんだな、寒いんだな。
風が福井県から滋賀県から奈良県から吹いてくるんだな、寒いんだな。


さみーよ、畜生!(涙)


それでも二人、山を見渡し。
断崖での会話。

ぱ:ここから飛び降りたら、下まで落ちれるかなあ。
N:うーん、ちょっと、ここに突き出てる木の枝が邪魔かもねえ。
ぱ:木に引っかかって助けられるのは、みっともないねえ。
N:だから、助走つけて……。
ぱ:こう(じぇすちゅあ)、飛んで出ないとダメか。
N:そうだね……。(こくり)
(沈黙)
N:落ちるときって、なに考えるんだろうねえ。
ぱ:明日の夕御飯でしょ。
N:そんなもんかもねえ。(こくり)

オチがついているのかどうかはおいといて。
他にすることもないので、
さあ帰ろうかと、発着所に戻り……あぁああああ。

やっぱり、すごいヒトの列でした……。


3:
山頂、沈みゆく夕日は金色にばら色に山々の上に燃え……。
そして、日が暮れた。

わしらは、列にも並ばずに、食堂にぶっすわって、喋っていた。
だって、寒いんだもん。
列、発着所からハミ出て、最後尾、外なんだもん。
外……いてつくような寒さです。てかむしろカゼひきます。
病み上がりです。ずびばぜん。(がたがた)

結局、乗れたのは最終の近くなった時刻――19:20。


ロープウェイは揺れながら下り行き……
伊勢湾を廻る光の輪は首飾りのよう。
街の明るさは昨夜にも増して鮮明。
その上にある月の――百万灯火を凌駕してなんとまばゆく巨大であること。
座り居る人々は声もなく、ロープウェイは下り、下り。


凍えた体で宿へと歩く。影二つ。


4:
とりあえず、フロ!

そして晩飯!
魚介類! おつくりよし、塩辛よし、酒蒸しよし!
肉! カモのロース!
てんぷら、卵のおつゆ、デザートはとろっとろの柿!

ああ、幸せ……(ほぅ)
しかし、食いすぎる……(ほーぅ)

そして喋る。
ええ、喋る。
抱腹絶倒、キャラ裏話……こんなんかもしれない、あんなんかもしれない。
彼らは砂漠でどんな生活を……海では……受け攻めの行方やいかに……。
しかしここではナイショ(笑)。
私のメモ帳には、幾つか、アヤしい絵が名残で残る……。

日付が変わろうがどうなろうが、喋る喋るでこの夜も更ける……。

次が最終日。続報を待て!


*知ってたわよ!と、読んだnanaiさんからクレームがついたので、訂正。


-

- 2001年11月03日(土)

湯の山温泉にだらけに行ってきた。
以下、レポート。

1:
大阪の家を出て、電車に乗ったのが朝8:30。
伊勢中川での乗り換えを経て、四日市に着いたのが10:59。


そこでnanaiさんと合流する約束をしてた。
先に駅についているはずの彼女を追って、ホームに上がる。
どこだろう、と、きょろきょろ、見まわし……
ふと目についた、タバコの自販機へと吸い寄せられるように歩む、
見覚えのある頭……。

(にやり)

自動販売機に魅せられたように動かない姿に、
そろーっと、後ろから近づいて。
がばっと抱きついた。
痴漢?というツッコミは却下である。

……。

――悲鳴が上がらない。
ひょいと見ると、硬直していた。(わっはっは)
飽きないヒトである。
それ以前に私はヘンなヒトである。


更に30分、近鉄電車に揺られ、
近鉄湯の山駅に着いたのが、11:45。
三交バスで約10分も揺られ、
ようやく温泉街にたどりついたのが正午頃だろうか。


2:
予約をしていた旅館は、地図によれば温泉街の一番どんずまり、
つまり、物理的に上の方にあった。
そう、湯の山温泉の旅館街は、三滝川に沿って
山の斜面に張りつくように伸びていたのである。

その日は雨だった。

水たまりをぱしゃぱしゃ踏んで、上る上る。
地図を出しては仕舞い、見ては見比べ、上る上る。
ほんっとに、どんづまりの奥の奥だった。
スゲェ、これより上って山だよ森だよ文明の外だよ。

部屋に通される。
さすがにどんづまりで奥で一番上だけあって、眺めはヨイ。
……ヨイのだろう。
…………ヨイのかもしれない。
名古屋まで見えると指差された方は、雨と霧で真っ白だった。

なごやかに茶など飲み、
なごやん(名古屋特産饅頭)など食い、
しばらくしてからおばちゃんの持ってきてくれた炬燵に潜り、
なごやかに喋る。
以下、対談風。

nanai(以下N):そういえば、八束で、しっぽまであんこは入ってません、
  ってロールを回したことがあったなあ。
パンダマニア(以下ぱ):あんこ! あんこか……。
N:そうそう、ぼったくりタイヤキ。
ぱ:八束くん、あんこか。うちのは『俺』だな。
N:俺?
ぱ:そうそう、隅々まで俺。髪の先まで俺。しっぽ(?)まで俺。
N:断面図が俺なんだね、きっと。細胞とかも、顕微鏡で見たら俺。
ぱ:うんうん、ジブなんかもう、皮もなくて全部俺。100%俺。丸ごと俺。
N:だからジブリールくん、ヒトの話、聞かないのか!
ぱ:うん、そう。散髪なんか行くと、切った髪の毛も俺主張。うるさいの。
N:床に散らばった髪が、全部「俺が俺が」言うのね。イヤだわ、それ……。

(笑)は多すぎるので、省きました。(うむ)


3:
さて、夕刻、フロに入る。
温泉に来てフロに入らないというのはさすがにウソなので、入りに行く。
私は旅館の浴衣とパンツ、タオルを装備。片手に持つ。
……nanaiさん、あーたの、あのデカイ袋には、いったいナニが……?
女性は神秘である。(そうか?)

フロはまあ、なんということもなくフロであり。
多少狭くはあってもフロであり。
温度調節の難しい蛇口であってもフロであり。
まあ、いいや。


晩飯!
牡丹鍋(イノシシ)を頼んであったので、楽しみに部屋を出て……。
食堂に入ってビックリ、でかい大皿いっぱいに、
イノシシの、あの独特の鮮やかな赤みの肉が、
てんこもり積まれているのである!

テーブルの真中には、味噌鍋がぐつぐつと煮えたぎり……
新鮮な野菜! 両掌を広げたような巨大なエノキ! シイタケ(涙)……
魚介類は甘蝦、ホタテの塩辛、その他豊かに海の幸……

料理自慢な宿、と、HPで謳っていた。
だが、イノシシが宿の主人の獲ってきた野生のイノシシだとか!
私なら5食分にあたるくらいのうまーい料理てんこもりだとか!
珍しいむかごや巨大なキノコ類を宿のおばさんが取ってきてくれるとか!
そんなことは書いていなかった!

うまい、うまいんだ!(感涙)

→というわけでオススメ『山峡荘』。
他の旅館よりお値段もちょろっと安いのです。(こっそり)
てか四の五の言わずにあのメシを食いに行け!


4:
さて、部屋に戻る。
スモーカーnanaiさんは窓の方の障子を開けて。

――夜景が。

昼には霧に閉ざされていた視界の向こうから、
名古屋の街へと続く明かりの大地が迫ってくる。

ああ、それは懐かしく。あまりに懐かしく美しく。
この世にありえざるユートピア、桃源郷、理想の国を思わせる。
かつて多くの青少年を街に誘ったのは、
このように遠く広がる光の海ではなかったろうか。

そしてそこに願ったものはそこでは手に入りはしなかっただろう。
それはただに夢の国、あこがればかりを教えて手に触れない。

……。

カサカサ、と、音がした。
トイレにて、ペーパーに手を伸ばしたときである。
『う”?』
いらっさるじゃありませんか、勢いよく引っ張り出したペーパーの裏。
掌ほどもある蜘蛛さんが……。
声も出さずに、紙の先っぽちぎり、用を足して出たという……。

パタパタ、と、音がした。
炬燵を囲んで歓談中。
なんか落ちた。
『……』
カメムシだった。
ティッシュで包んで窓に払う。
アヂュー…………。

……。

山の上、だし、な……。
さて、続報を待て。


-

- 2001年11月02日(金)

今日の夕方、性懲りもなくまたバイトに行き、
帰ってきて体温測ったら34℃。
あたし、人間だったよね……と、遠い思考に耽ってしまいました。

あたしの体温とかけてなんととく。
ブラックマンデーととく。
そのココロは……株のように乱高下。
……シャレにならん。


1:
絶交、と、書いた。
必ずしも絶交だけが一つの結論ではない。
もっとしばしばあるのが

相手に望むもののレベルを下げる、ということである。


大体において――
私は、『愛しすぎる』のである。

私は仏様ではない。神様では更にない。

多くを与えたいというスタンスに自分が立ったとき、
相手にも同じスタンスを期待する。
私が深く愛したとき、深く愛されることを願う。
だが、相手は必ずしも私と同じ位置に立っているとは限らない。

相手の位置を知って、落胆し、幻滅し、腹立った。
もっと昔は、わずかな立ち位置のズレさえ許せなかった。
私の感情はそれほど我侭で、短絡的だった。
……単純だった。

だが、そうだ。

痛い目にあえば、人間、考えるものだ。
これではうまくいかないのでないのかということを。
絶交か親友かなどというニ者択一は、不条理ではないかということを。


2:
今は。

例えば、そうだ。

私は親友から電話がかかってきたらパソコンを閉じて会話をする。
そして親友にも同じことを求める。
つまり、私と会話するときは、他は置くことを。
どうしても差し迫った用事以外は置くことを。

悪友だったら、私は彼女が部屋に入ってきてもパソコンを閉じない。
彼女にも同じことを許容するだろう。
対話に支障を来さない限り。
同じく、用事を続けることも許容するだろう、対話に支障を来さない限り。

単なる知人であったら、ことはもっと簡単だ。
私と相手の都合のよい瞬間だけ、私たちはともにおり、
なにかをし、会話し、――だが、互いに一切の制約はしないだろう。
そこにあるのは最低限のマナーだけだ。(*)


優先順位、と、言うなら言えばいい。
だがこの優先順位は柔軟だ。


親友はかつて私にとってただの知人であったし、
次には悪友と同じほどの親密さしか持たなかった。
私にとって彼女の存在が大きくなったのは、
それはつまり、交した会話の蓄積であり、
互いに取り交わしたものの蓄積であり、
なにより――彼女の人格と感性、知識への好意である。


3:
互いにとってこの優先順位の程度が同じであることは望ましい。
それが上昇するにしろ下降するにしろ。
だがそういうことはまずないだろう。

私の好意がガス欠になることもあれば、
相手が私に愛想を尽かすこともある。
私ばかり相手の優先順位を上げていくこともあれば、
相手の視線から感じられるものばかり大きくなってゆくこともある。

ひずみは、双方にとって、苦しい。
とりわけ、相手に愛されていないと感じるとき、苦痛となる。
――多く愛しすぎることの苦しさ。
もっとも、相手に応えられない心苦しさも、苦痛には代わりないが。
だがそれは、前者の裏返しのようなもの。影のようなもの。
反響にすぎない、と、私は思うが。


だが私は、どちらかといえばやはり「愛しすぎる」方がいい。
理性がナンと言おうと、私が本当に、好きなら。
苦しさを逃げようと感情をケチるのは、性にあわない。
ああ――そんな器用なことはできない、という説もある。
だいたい私は感情が先行しているのだ。理性は後知恵に過ぎない。
――いつでも。


(*)マナーの概念が違うひともいる。
   私よりもマナーの悪いのはまあ、いい。多少いらつくかもしれないが。
   だが、よすぎるヒトは、勘違いのモトになるから、困る。
   価値観の違いって、これではないかな。

―――――――――――――――――――

眠いので、続きは後で……
書くかもしれないし、書かないかも、しれない。

―――――――――――――――――――

以下、補足。


1’:
もっとも、相手にとっての自分の正確な位置を知るのは、
言う以上に困難である。

やや接触恐怖症の気味のあった私にとって、
普通のテンション(笑)のときに自分から触れに行くのは、
非常に親密な相手にしかできないことだが、
スキンシップをしなれているひとは、そうでもない。

私は会話の間相手の目を見ることを習慣とする。
それは私の習慣であり、我が家の習慣であるが、
そうでないひともいる。

家族のことを尋ねることを、ごく普通の家庭に育った私は
あまり考えずにするが、そうでないひとはそうでないだろう。


2:
全ての行為、全ての言葉、全ての問い、全ての接触。
それはそれぞれにとって違う意味を持つ。

だから、もしかしたら、
私が自分を「愛しすぎる」と考えるのは間違いなのかもしれない。
私が何気なく聞き逃す一言が、
相手にとっては深い深い感情の表出であるのかもしれない。

私はその可能性を忘れない。

多くの愛の形があることを常に念頭に置いていたい。
聡い目を持っていたい。
注意深い耳を持ちたい。
相手の形に対して注意深くありたい。


4:
目の前に咲く花の美しさ、
感情の形を見落とさないこと。
人間の形象のその無限の様態を見落とさないこと。
それが私の願うこと。

そして多分――来年春からの、私の職業に選んだこと。
研ぎ澄まそう、この目を。
この耳を。
この心のあらゆる器官を。

そしてそれでもなお、「愛しすぎる」ことができればよい。
人間に対して。世界に対して。
そうだ、もはやこの感情は憧れではない。
私はこれを、深い根を持つ愛情に変えて行こう。



ありゃ、オチがついてしまった。(のか?)


-

- 2001年11月01日(木)

ただいま37℃(ちーん)
ちなみに平熱35℃半。(低温動物)

1:
風邪引いた……んだろうか。
昨日の昼くらいからなんとなく熱っぽく、
夕方、バイト行く前にはもう本格的に熱っぽく
がしかし学園祭で他のバイトの子が休みがちだし、
なにより私は休むのがキライである。(←律儀バカ)
ので、出勤。

そーいや、うちの一族は皆ガンコで、
従兄弟は10歳当時、40℃の熱でも水泳教室に
行ったという前科がある。
帰ってきたら病院に直行だったとか。あっはっは。
……笑い事じゃありません。伯母さん泣いてたよ。

さて、行ったはいいけど
やっぱりあんまり仕事にならず。
帰ってきてしばらく眠ってから
熱はかったら39℃。
何年振りだろーなぁ、こんな熱出したの……。
などと、ぼんやり思う……。

以下、ノーミソのイカれてるときの自分反省記。


2:
1階の住人、悪友Aは看護婦の免許と薬箱を持っている。
昨日は幸い夜勤ではなかったらしい。
ごそごそする気配があったので、薬をもらおうと下りてった。


部屋の前まで行くと、電話で話しているらしい声が聞こえた。
ノックする。返答ナシ。
……。
ガチャリと扉を開けて、すまんが風邪薬くれないか、と、要請。
悪友A、電話で愚痴をこぼしていたらしい。
電話を切らないまま薬箱を探り、パブロンを取り出す。
……。
ありがと、と、パブロンを受けとって、部屋に戻る。


パソコンを開いたままパブロン飲む。
ややあって、ノックの音が。
どうぞ、と、言うと、悪友A。
「熱っぽいんやって?」「んや、熱出た」
「そうなん? 計った?」「39℃」
「寝なさいよ!」「ヤダ」
「……おかゆかなんかつくったろか?」
「イイ」「……ムリしいなよ」
悪友A、退室。


さて、ホントのことを言おう。
Aの時点で、絶交してやろうか、と、思ってた。
ノックしても無視されたのが気に食わず、
こっちが死ぬほどしんどいのに
電話を切らない相手の態度が気に食わず、
更に普段から延々と尽きない愚痴をこぼしに来るのまでがふいに
腹に据えかねた。(思いだし腹立ち、と、言うのだろうか)
それがB時点でのそっけない対応となったのである。


しかし、現在37℃の脳味噌でも、
電話に熱中してるときの悪友Aにノックの音など聞こえるはずなく、
電話というのは相手のあるものだから、私にだけ配慮できない
ということくらいはわかるのである。
よほど私の調子が悪そうに見えればさすがに電話を切ったかもしれないが、
だいたい私は顔に出ないタチだから、調子が本格的に悪いというのも
見ただけではわかるまい。
また、普段からの愚痴に至っては……私は普段気にしていないのだから、
そんなときばかり怒るのはお門違いというもんである。


とすると、Bの私の対応は非常に自分勝手で、
八つ辺り的であったということになる。


3:
私は、あまり友人が多くない。
し、そんなにたくさんはいらないと思う人間でもある。
そして一度友人となっても、
理不尽な扱いを受ければいつでも絶交しうる、
そういうスタンスでありたいと思う。

惰性での友情などいらない。
利用されるだけの扱いに甘んじるつもりはない。
そのように他人を扱いたくもない。

個人として魅力を感じ、
与えるものがあり、受け取れるものがあり、
そのときがくれば離れることも肯えるが、
互いへの愛情によって離れずにいる、
そういう関係でありたいと思う。


離れる、と、決めるのは簡単であってはならない。


一時の感情に流されかけることもある。
例えば昨日のように。
ほんのわずかのことでも、私の未熟な感情は揺らぐ。
だが幸いながら、私は、理性も持っている。
感情が収まるまで待って、そこから自分の感情が正当であるかどうか、
そう考えることができる。

もし私が自分の現状を正確に伝えても彼女が電話を優先していたら、
私は確かに彼女と絶交しただろうが。
しかし、私は風邪ひいた、としか言わなかったのであるから、
絶交は不当である。
むしろ、後から心配して訪ねてきた彼女に対して
私があまりにもそっけなかったことについて、謝罪する義務がある。

以上、結論。
おやつでも持って、謝りに行こう。
せいぜい愚痴でも聞いてあげよう。


4:
あと、えーと。

風邪っぴきがネットに出て、
ウロウロして、皆さん心配させました。
ごめん……。


-



 

 

 

 

ndex
past  next

Mail
エンピツ