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2011年09月01日(木) アディクションからの回復とは何かを定義する

Faces and Voices of Recovery(回復の顔と声)のニューズレターを読んだところ、こんな記事が載っていました。

What is Recovery? 回復とは何か
http://www.facesandvoicesofrecovery.org/publications/enews/2011-08-17/recovery_definition.php

SAMHSAというアメリカの政府機関があります。「薬物乱用精神衛生管理局」とでも訳せばよいのでしょうか。そこが「アディクションからの回復の定義」に関するパブリック・コメントを募集しています。・・いや、8月26日までだったからもう過ぎちゃったのか。

「依存症からの回復」とは何を意味するのか、それに興味をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

きちんとした翻訳は提供できませんが、内容をざっくりと紹介します。
SAMHSAのスタッフ Alexandre Laudet が、なぜ回復を定義する必要があるのかブログで語っています。

Recovery Defined - Give Us Your Feedback
http://blog.samhsa.gov/2011/08/12/recovery-defined-%E2%80%93-give-us-your-feedback/

回復中の人たちは、「回復とは何かを定義する必要はない、なぜなら私たちはそれが何か(経験上)知っているからだ」と言います。それは100%正しい。回復中の人たちは、自分のことを回復中だと言うことができるし、他の人についても、また家族でもそれは同じです。

さてアディクションに対して様々なサービスが提供されるようになってきたのは良いことです(ここでいうサービスとは回復施設やカウンセリングなどを言うのでしょう)。ということは、回復を提供するサービスに対して、納税者の支払った税金が使われるようになるということです(助成金という形で税金が分配されたり、行政がサービス提供業者に業務委託することを指しているのでしょう。日本の施設でも助成金や自立支援の仕組みを利用して税金が投入されています)。

そうした業者は、政府や社会に対して「販売」しているサービスの質に責任を持つ必要があります。私たちがガンや心臓病について病院や医師の治療実績を比較したいと思うのと同じように、アディクションからの回復を提供する業者AのサービスBを評価するためには、まず回復とは何かを定義する必要があります。

良いサービスを提供するためにはそうした評価基準がどうしても欠かせません。多くの業者(施設)が回復サービスを提供するために公的資金を獲得しようと「競争」しており、私たち(政府)が最善の業者を選ぶためには、彼らの治療実績を調べ、どの施設が良い仕事をしているか知らなければなりません。

「回復とは何か」を定義するのは、より良いサービスが提供されるようにするためです。そのためには、回復に必須の要素が明らかにされねばなりません。どうやってそれを得るか(12ステップ、瞑想、治療など)ではなく、回復に含まれなくてはならない ingredients (成分)のことです。症状がおさまることだけでなく、それに何を加えましょう? 社会への貢献? 人間関係や家族関係の改善?

ここまでが、Faces and Voicesの記事です。紹介されているブログの記事に飛んでみると、SAMHSAではすでに以前の調査で、回復に欠かせない要素のジャンルわけをしているようです。

・健康 - 身体的、精神的に健康に暮らせるように、疾病を克服あるいは管理できていること。
 (ときどきスリップしています、というのは回復とは言えないわけだ)

・住居 - 安定し、安全な生活の場所。
 (酒を飲んでなくてもホームレス状態では回復とは確かに言いづらいですね)

・目的 - 日々の意味のある生活、例えば仕事、学校、ボランティア、家族の世話、創造的な努力。そして自立、収入、社会参加するための財力。
 (酒は飲んでなくても、引きこもってゲームばっかりでは意味のある生活とは言いづらいかも)

・コミュニティ - サポート、友情、愛情と希望を提供してくれる人間関係や社会的関係。
 (かならずしもそれが自助グループでなくても良いのでしょうけど)

この4ジャンルについて基準が決められていくのでしょう。
アメリカの回復に関する議論を読んでいると、必ず登場するのが「住居」の話です。向こうではホームレスになりやすいのかもしれませんし、シェルターの必要性の議論にもつながります。

個人的にコメントを加えると、このジャンルわけには「スピリチャリティ(霊性)」は入っていません。スピリチャリティはそれ単独で計れるものではなく、より実際的なこと(例えば上の四つのジャンル)に反映されるべきものだからです。

そのうち雑記で紹介しようと思いながら、忙しがっているうちにパブコメの期限も過ぎていました。アディクションの世界では、アメリカで形作られた概念は5年後、10年後に日本に入ってきています。おそらくその頃日本でも「回復ってこういう定義だとアメリカでは決められている」という話が広がっていくのでしょうね。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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