心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2007年08月11日(土) Contempt prior to investigation - 調べもしない...

Contempt prior to investigation - 調べもしないで頭から軽蔑すること

ミーティング用お勧めテーマ #5, Contempt prior to investigation - 調べもしないで頭から軽蔑すること

<このプログラムの霊的な部分でつまずくことはまったくない。意欲と、正直さと、開かれた心こそが回復に必要な核心である。これらなしに回復はあり得ない。
 「あらゆる情報をはばむ障壁であり、あらゆる論争の反証となり、そして人間を永遠に無知にとどめておく力を持った原理がある。それは調べもしないで頭から軽蔑することである」〜ハーバート・スペンサー> 付録2「霊的体験」P299

湾岸戦争を覚えていますか?
1991年、経済的に困窮してクェートに侵攻したイラクに対し、アメリカを筆頭とする多国籍軍が反攻した戦争でした。そうした事実よりも、「テレビで中継された戦争」として人々の記憶に残されているように思います。

僕は酒を飲みながらその戦争をテレビを見ていました。巡洋艦から(わざわざ反対方向へと)発射され、空中で回頭する巡航ミサイル、そのミサイルに搭載されたカメラの映像。ヘリコプターや戦闘機の照準に橋や建物が合わされ、次の瞬間にそれが崩れ落ちる様子。そして夜のバグダッドの対空砲火。

僕にはその戦争が、ユダヤ・キリスト教国家と、イスラム教国家の間の宗教戦争にしか見えませんでした。宗教の名の下に殺し合っている彼らより、僕の方がまだ幸せだと思いました。そうやって自分を慰めるしかなかったのかも知れません。

前にも書きましたが、当時僕の住んでいた地方は、新興宗教の勧誘がとても盛んでした。その中には後にサリン事件を起こした団体もありました。神や仏について話を聞かされるのに辟易していた僕は、

「神仏に頼るのは、心の弱い人間のすることだ」

という信念を強めていきました。

が、その年の夏に僕は(酒が原因で)手首を切って自殺未遂をします。自分が当事者になるまでは、

「自殺未遂は、心の弱い人間のすることだ」

と思っていたので、図らずも「心の弱い人間」の仲間入りをしてしまった僕は、ひたすらそのことを隠して生きるしかありませんでした。
さらに4年後にAAにたどり着いて、「神」だとか「偉大な力」について話す人々に囲まれたときは、ちょっと前までマトモな生活をしていた(?)自分が、何でこんなところに通う羽目になったんだろう、と内心で嘆いていました。素直になるには、もうすこし酒で打ちのめされなければなりませんでした。

AAに数年通えば見えてくることがあります。しばらく酒が止まったのに、ぼろぼろと脱落していく人間の多さです。そしてある程度長い期間無事にやめている人たちは、多かれ少なかれ「自分より強い力」について語っているという事実です。
もちろん世の中には「神」に煩わされずに(?)飲まないで過ごせる人もずいぶんいるのでしょう。でも、自分がそっちの仲間に入れる自信はもうありませんでした。僕のソブラエティの年数はたいした長さではありませんでしたが、それでも失敗してもう一度やり直すにはもったいない長さでした。だから僕は安全策をとることにしたのです。

断酒の成功と失敗について、その理由を探るのに十分な数のサンプルデータが集まっていました。僕は飲まないで生きるために「自分の理解できる神」「自分専用の神」を探すことにしました。今でもそのころの判断に間違いはなかったと思っています。
僕は科学的な手法が好きだと言いながらも、十分な数のサンプルを集める前に、信仰は役に立たないと決めつけていたのでした。今でもそのことを考えると、恥ずかしさを感じます。

話は変わって、僕より後にAAにつながった女性が、「私は家にいるのが辛いから、AAミーティングに毎日通うのが楽しくて仕方がない」という発言をしていた時期がありました。僕はそれを聞いて「12のステップはAAの中だけでなく、家でも実践すべき事だから、いつまでもそんなことを言うのはいかがなものか」という批判をしてしまいました。
彼女の家にもいろいろと事情があることを、他の仲間から、また本人から聞かされたのは、僕が非難の言葉を何度も重ねた後でした。

「人を批判する前に、その人の靴を履いて長い距離を歩いてみろ」

という言葉が「どうやって飲まないでいるか」の中にあったと思います。
相手の立場に立ってものを考えてみろと、スポンサーから(うるせーよ)と思うぐらい言われていたにもかかわらず、こんな具合です。

自分に対して理知的という理想像を求めてしまうだけに、「知りもしないで批判してきた過去」を思い出すと、なかなかに恥ずかしいのであります。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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