心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2005年04月30日(土) 台北(その3)

9時半まで寝ていました。ホテルの屋上で朝食を食べていると、隣の小学校から拡声器の音楽が聞こえてきます。覗いてみたら、校庭でダンスをしていました。運動会なのでしょうね、土曜日だし。この運動会という文化も日本が持ち込んだものなのかもしれません。

今回あいだに入ってくれた商社の人が、偶然台北に寄ったそうで、昼飯に飲茶をおごってくれました。こういう恩を受けるので、今回みたいな無理な話も断りにくいのであります。明日は香港で、あさっては東京だそうです。人と人をつなぐ商売も大変だなと思います。

今夜泊まるホテルに荷物を預けて、歩いて行天宮という(三国志の)関羽をまつったお寺に行きました。自分は観光だけれど、参拝している人たちは敬虔です。こういう雰囲気だと、なかなかカメラを出して写真を撮る勇気がでません(撮ったけど)。
そのあとは、目的もなしに適当に路地裏に紛れ込んでみました。押井守が映画「攻殻機動隊」で描いた架空の未来の日本は、表記言語に漢字だけが使われています。まさにその世界に紛れ込んだみたいに、漢字だけの世界をさまよってみました。市場に紛れ込んでみたり、公園で老人が麻雀を打っているのを覗き込んでみたり・・・。

ホテルにチェックインして、シャワーを浴びてコンビニまで買い物にでました。途中で露店街があったので寄ってみました。海産物を売っている隣で女性の下着を売っていたりします。生臭い臭いと流行が混じり合っている不思議な世界であります。
某メーリングリストでドリアンの話がでていたので、露店で売っているのを買ってみることにしました。まるまる一個買っても包丁もないので、中身だけ売っている店で、最小限の量だけ買いました。一切れで90元というのはぼられている気もしましたが、札しか持っていなくてどうせおつりをもらわないといけないので値切りませんでした。

一口食べてみて「プロパンガスの臭い」が鼻についてはき出してしまいました。ゴミ箱に入れておいても臭うのでトイレに流してしまいましたが、入れ物の袋だけでバスルームがLPガス臭いです。まあ、日本人観光客相手に中身の腐った果物を売っている店もあるので、ひょっとしたらそういうのにひっかかったのかもしれません(前回は黴びたマンゴスチンを買ってしまったのでした)。

夕方まで寝ました。AA会場の病院は歩いていける距離なので、6時半に起きれば十分です。今年一番の暑さで真夏並みだという外を歩いた身に、冷房の効いた部屋は快適でした。PHSのアラームにたたき起こされて、時計を見るとなぜか5時半です。PHSは日本時間のままなのでした。思いっきり不機嫌になって、もう一度寝直しました。

病院はすごい大きな病院でしたが、夜とあってもう受付も閉まっていて「AAの会場」がどこだかわかりません。警備員には日本語も英語も通じません。これは部屋がわからずじまいでお仕舞いかなとあきらめかけましたが、ERという文字を見かけたので、救急の入り口へ回ってみました。警備員に止められましたが、彼は英語で書かれた住所が確かにこの病院であることを認めて、奥の人間に僕が「AA」を探していることを伝えてくれました。
AAといっても全然理解してもらえないので、試しに紙に禁酒会と書いてみたら、看護婦さんに9階の会議室まで案内してもらえました。そして、僕はそこで台湾人のAAメンバーに会うことができたのでした。

日本には日本語でAAをやっている共同体と、日本に住んで英語を話す人が英語でAAをやっている共同体のふたつがあります。日本のように現地人の共同体がある国も多いのですが、数から言えばEnglish Speakerたちが身を寄せ合っているAAしかない国のほうが多いのじゃないでしょうか。
NYのGSOが出しているContact Listにも台北の項目にEng.とあったので、僕はてっきり英語ミーティングに紛れ込むものだと思っていたのです。

でも集まっていたのは台湾人たちでした。中に一人英語を話す人と、一人日本語を解する人がいたので、僕は日本から来たAAメンバーとして紹介され受け入れられました。

ミーティングは公用語であるマンダリン(北京語)で行われているので、人々が話していることはまったく理解できませんでした。しかし、序文や第5章を読むところでは、繁字体中国語の本を一生懸命おいかけてみました。人数は十数人。土曜日は伝統ミーティングらしく、今日は伝統4でした。

途中で小さな子供が紛れ込んできました。後でわかったのですが、別の部屋でアラノンをやっているようです。台北では10年前から日曜日を除く毎日AAミーティングが開かれているのだそうです。そして英語ミーティングはそれとは別に存在するのだそうです。

1時間のミーティングが終わったら、ダンキンドーナツでアフターミーティングを楽しみました。「もう二度と会えないかもしれないけれど、霊的な共同体の中でいつも一緒だよ」と(一応英語で)言って別れました。この原理は言語も国境も越える、そう信じることができました。

ホテルのレストランのラストオーダーの時間が過ぎてしまったので、山田珈琲店という日本食の店で定食を食べました。こうして油っこくないものを食べてみて、はじめて自分の胃が疲れていることに気づくのであります。

読むものがないのでビッグブックを取り出して、たまたまフライヤーの挟まっていたページを開いたら第4章でした。何らかの形の霊的体験が僕に訪れたような気がします。自分を取り巻く世界と自分とが何かでつながっている実感があります。
「来てよかったな」と思いました。

名古屋空港で、お守りがわりに海外旅行保険に入りました(3000円たった)。お守りは大事であります。幸い今のところ、けがも病気もなく、あとは日本に無事帰るだけであります。

大汗をかいて歩き回って、体はすごく疲れています。でも、いまのところすべてがうまくいっています。おやすみなさい。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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