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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2005年03月31日(木) ドライドランクな日常 1月半ばから休職して、1月・2月は病状が好転の兆しを見せなかったのですが、「そのうち良くなるさ」とまあ半分開き直っていました。3月に入って、花粉症の人には申し訳ないけれど、暖かくなったせいか、なんとなく「やる気」が出てきました。
ニュース検索のスクリプトをいじったりし始めたのもこの頃です。
いろんなことがやりたくなって、「これは4月には復職できるかも」なんて自分で勝手にスケジュールをたてたりしていました。
でも、子供が春休みになったあたりから事態は暗転を始めます。医者とも「波はあるから焦らないで」と話し合っていました。
ことの起こりは兄からの電話でした。彼は僕が昨年まで勤めていた会社のお客さんとの間に入った商社に勤めています。その顧客の一社がまた同じような機械を大量に入れたいので、仕入れ先を探してほしいと言い出したのです。でも、僕のいた会社は倒産してしまったし、今は休職中とはいえ別の会社の社員なので、そのもうけ話に乗ってあげることができません。
「だから、代わりの会社を探してくれ、頼む」
身内でなかったら、こんなわがままな話はすぐに断るところですが、僕も婚家を追い出されたら実家を頼らざるを得ない身の上です。
明け方に寝たばかりなのに、10時前に電話でたたき起こされた僕は、極端に不機嫌でしたが、妻がそこへ「せっかく起きたのなら、片づけと掃除がしたいから、どいてくれ」というので、僕は布団をたたみパソコン部屋に移動して、毛布にくるまってまた寝たのでありました。
起きてみるとすでに午後3時でありました。
「昼飯はどうなったんだ! どうしてそのときに起こしてくれなかったんだ」と、僕は腹を立てて妻を責めたのですが、相手の返事は「私だってお昼も食べずに、一生懸命片づけをしていたので、私はふらふらなのよ」というものでした。
この「昼飯抜きで、一生懸命で、ふらふら」という主張に、僕はむかっ腹がたってしまいました。
オークションの発送のために郵便局に寄る用があったので、食事もせずにでかけ、よせばいいのについでにディジタルカメラで撮った写真のプリントに写真屋に寄りました。ぐっすり寝ているところをたたき起こされた上に、「一生懸命」の人のせいで空腹でクラクラの僕は、すっかり恨みの虜になっていました。
そしてすっかり「仕事モード」になって電話をかけ続け、なんとか仕事の引き受け手を見つけた時にはすっかり夕方になっていました。「一生懸命」がんばっていた妻は、体がだるくて辛いと言っていましたが、「俺もハンガーノックで倒れそう」と言って、家事の手伝いを放棄した結果、「どうして男も女も辛い時に、女だけが家事をしないといけないの」と恨み言を言われる羽目になりましたが、黙ってそれを聞き逃すしかありませんでした。
「一生懸命」の人は、いつも一生懸命になった翌日そうなるように、翌日は倒れて寝ていました。毎度同じことが繰り返されることに、またむかっ腹がたったものの、しかたないので子供たちのために昼食を作り、夜のことはジジババに頼んでAAミーティングに出かけました。
ミーティングで司会を頼まれてしているときに携帯電話が鳴ったので、出てみると一生懸命の人が「体中が痛くてたまらない、すぐに帰ってこい」という用件でした。ミーティングを最後まで済ませ、それから兄にあって仕事の件をすませ、買い物をして帰ると10時過ぎでありました。
「昼飯抜きで一生懸命になるから、結果としてそうなるんだ。いつも同じじゃないか、反省しろ!」と言ってみたものの、相手は反省する様子も謝る様子もありませんでした。熱を測ってみると38度あったので、風邪だろうということで風邪薬を飲んで寝て貰いました。
僕ももうなんだか疲れ果ててしまったので、寝ることし、その前にちょっとだけDVDでも見ようとテレビのリモコンを探したのですが、みつかりません。「一生懸命片づけて、なんでテレビのリモコンも見つからないぐらい散らかっているんだ」と思うとなんだかやりきれません。意地になって40分ぐらい探し続けていたら、妻が起きてきてすぐにみつけました。
なんだか興奮して眠れないので、コンビニに食べ物を買いに行ってきて、冷蔵庫に買ったアイスクリームを無理矢理つっこもうとしたら、冷凍シャケの袋が破れてしまいました。ラップでくるんで入れようとするものの、今度はラップがみつかりません。悪態を付いて探し続けた結果、また妻が起きてきて処理してくれました。
「いつも一生懸命になってそして倒れているおまえは、気が狂っているよ」と言ってみたものの、気が狂っているのは自分のような気がしてきました。酒を飲んでやろうかと思ったものの、ソブラエティがもったいなくて、実行する気になれませんでした。いっそ死んでしまおうかとも思いましたが、親が自殺した子供の自助グループの話が思い出されて、それもかないませんでした。
風邪を引いた妻の世話は放棄して、一日寝ていました。それでも、夜になって自分が風呂に入るついでに、子供も風呂に入れてやる役回りは避けられませんでした。洗ってやるのに、自分の体がだるくてきつかったです。
世の中は灰色なのだ。白や黒に決着をつけようとするから苦しくなる。妻も反省している(白)でもないだろうし、していない(黒)でもないだろう。自分のやっていることも、良いこと(白)でもなければ、悪いこと(黒)でもないだろう。そう思うと少し楽になりました。
娘に「ひげを剃っていない」と怒られたので、ひげそり・歯磨き・緑内障薬の点眼と、自分の体のケアをすると、すこし気分が良くなってきました。
いま、子供たちを寝かしつけて、そしてこれを書いているところです。確かに飲んでいない時間は長くなっても、回復なんかしていないです。回復していないから、AAにつながっているのです。「アルコール依存症からの回復者」なんて言葉だけは使えないと思うこのごろです。
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