大間違い - 2003年03月02日(日) 患者さんが手を差し出すからわたしも手を差し伸べたら、手の甲にキスされちゃった。 「ありがとう」って。 そんなの初めて。めちゃくちゃ照れた。 かっこいい患者さんだったし、患者さんと恋に落ちるのもありかな、だめじゃん奥さんいるじゃん、とかまたふわふわとんでもない空想しながら、そのまま次の患者さんの病室に行った。 手洗うの忘れちゃった。基本中の基本なのに。直接触れなきゃいいか、って、キスされた手の甲を白衣のお尻で拭いながら、次の患者さん診る。 すっごい悪態つかれる。手強い女の患者さん。でも診てるうちに普通に話してくれるようになる。わたしって子どもみたいな声だし、なんかぽーっとした喋り方らしいし、だから気が抜けちゃうんだろうな、ガンガン悪態ついてても途中で。最後には「ジュースが飲みたい」って甘えられて、そういうのが嬉しくなる。 ナースステーションに戻って「14-1の担当だれ?」って聞くのに、「あたしじゃないよー」ってそこにいるナースたちに言われて、「患者さんジュース欲しいって。持ってったげてー」って言うのに、担当ナースがいない。メディカルレコードの記入と検査数値のチェックいっぺんにしながら、わたしは手が回らない。「ねえ、誰でもいいから持ってってあげてよー、お願い」って叫んだら、「誰も言うこと聞いてくれないじゃん」ってすぐ後ろで笑い声がする。ドリーンだった。週末の大変なわたしのフロア、助けに来てくれた。 「コレだよ。あたしココでこういう扱いされてんの」ってふざけて言ったら、ナースたちがキャッキャ笑う。こんな忙しい日にからかわないでよ。 ドリーンにほかのフロアの患者さんのリスト渡して、わたしは急いでまた次の患者さんを診に行く。あの患者さん、結局ジュースもらえたのかな。 「最後の週末、アンタと仕事出来てよかったよ」ってドリーンが言ってくれた。 ドリーンは今週末で辞めちゃう。 旦那さんのジョンがアップステイトに新しい仕事を見つけて、ドリーンも新しいとこ見つかった。アップステイトはちっちゃなメグのためにも教育環境がここよりずっといいし、なんといってもドリーンのお父さんがアップステイトに住んでるから、パパとママが仕事から帰って来るまでメグは大好きなおじいちゃんに預かってもらえる。お父さんの援助でお父さんちの近くにコンドミニアムも買った。 去年の暮れは大変だった。ジョンは事業が上手く行かなくてバンクラプトを申告しなきゃいけなくなったし、ドリーンは病気になっちゃうし、メグもケガするし。 今全てのことがいっぺんに上手く行って、ドリーンのためにとっても嬉しい。 一緒に仕事出来なくなるのは淋しいけど、いつでも遊びに行けるもんね。アップステイトはわたしも好きなところ。 ローデスも1月に辞めて別の病院に行っちゃって、ビクトリアは先月から一年間のマタニティー休暇中。でもここには戻って来ないと思う。それから、ジェニーだって別のもっといい病院探してる。 わたしはしばらくこの病院にいるしかない。 淋しくなるばっかだけど、でもいいや。わたしにもきっとその時が来る。いつかそのうち、うんといいチャンスと一緒にね。時は順番に巡って来るものだから。神さまだって忙しい。 さっき約束の時間に電話をかけたら、「明日に日付けが変わったら、一番におめでとうコールしてよ」ってあの人が言う。「忘れたの?」って。 「忘れてないよー。ちゃんと一番に電話して驚かせてあげようと思ってたのに、あなたから言っちゃだめじゃん。だけど日本の今日はまだ3日でしょ?」 「そうだよ。今日は3日だけど、今日の夜には日付けが変わるんだよ?」 「あーっ。あたし間違えてたーっ」。 思わず叫んで、大笑い。 違うの。電話かける日間違えてたんじゃなくて、あの人のお誕生日間違えてた。 明日病院からかけなくちゃ。 いつもより早起きして、仕事の前にコーリングカード買わなくちゃ。 ごめんね、間違えてて。 でも間に合ってよかった。 お詫びに今日は Happy Birthdayユs Eve! そんなのないか。 -
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