なんで好きなんだろ - 2003年02月27日(木) 地下鉄を降りて外に出てから電話する。 約束の時間は20分も過ぎてた。 「今14th ストリートを六番街に向かって歩いてるとこ。もうそこにいるの?」 「いるよ。ビール飲んでる。ハンバーガーも注文した。おなか空きすぎて待てなかったから」。 それから道順を丁寧に教えてくれて、「走ってる?」って言う。 「走れないよ、あたしもおなか空きすぎて」って笑った。 交差点で信号待ってると、向こうの角のそのカフェの窓際の席からこっちを見てる人がいて、遠目だからわかんなかったけど、その人だろうなって思った。地下鉄に乗ってるときに気がついた。あんまり顔を覚えてなかったことに。だから、カフェに着いたらどうやって見つけようかと思ってた。 窓際で微笑んでるその人に手を振ってお店に入ると、その人は立ち上がって、それからテーブルに辿り着いたわたしに握手した。 わたしったら、最低。大笑い。 あの街の人じゃなかった。 ニューヨーク生まれのニューヨーク育ちだった。あのパーティにいたのは、あの街から来た友だちを通してそのソサイエティを知ったからだって。 ほんとにいいかげん。何が「あの街の人らしくてよさそうな人」だ。ほんと、人見る目ないじゃん。そんなことを人を判断する基準にしていいわけないか。「日本人だから」って言われるのが自分は嫌いなくせして。でもやっぱりちょっとだけがっかりした。 わたしはメニューに載ってない「今日のおすすめ」の中からチキンのお料理を注文して、先に運ばれて来たその人のハンバーガーを半分こしたあと、チキンのお料理もシェアした。チキンはとってもおいしかった。それから、ウエイターのおにいさんがまた「今日のおすすめ」のデザートを口頭で並べてくれたけど、今度はメニューに載ってる「あったかいバナナのタルト」をわたしが選んで、また半分こした。タルトっていうよりサクサクのちょっと厚めのパイ皮のシェルにつぶしたバナナが詰めてあって、それもおいしかった。 わたしたちのテーブルについたウエイターのおにいさんをわたしは絶対ミドルイースタンだって思って、その人は違うって言って確かめたら、やっぱりミドルイースタンだった。そして、カダーの国の人だった。 ときどきやっぱりコーニーで、それに「お席にご案内」係りのおねえさんをからかったりして、そういうのが好きじゃなかったけど、おしゃべりも一緒に食べるのも楽しかった。だけど、なんでかわかんないけど、楽しみ切れなかった。わたしはミドルイースタンのそのウエイターにしょっちゅう目をやってて、なんかすごくカダーに会いたくなってた。 一緒に地下鉄の駅まで歩いて帰るとき、その人は全然背も高くなくなかった。5フィート11インチありそうだった。なんでこのあいだは背が高くないって思ったんだろ。それに、ちっともグッドルッキングじゃなくもなかった。シャープなハンサムじゃないけど、キュートでチャーミングかもしれないと思った。誰かに似てるなって思いながら思い出せなかった。今でも思い出せない。そう言えばチキンの付け合わせに出てきた野菜の名前を思い出せなかったけど、今思い出した。リークだ。あの街でよくお料理に使ってた。 「楽しかったよ、ありがとう」ってその人は言ってくれたけど、なんとなくなんとなく、ダメな気がした。その人がじゃなくて、わたしが。面接を受けに行って、面接は上手く行ったのに終わった直後に「あーダメだろうな」ってなんとなく直感でわかるみたいな、そんな感じだった。なんかよけいなおしゃべりいっぱいしたような気がする。 地下鉄降りて、うちまで帰る道、カダーと会ったときのこととかカダーと話したこととか、そんなことばっか思い出してた。わたしはなんでカダーが好きなんだろ。この前ジェニーにまた聞かれた。「なんで好きなの?」って。理由を聞いてるんじゃなくて、咎めてるみたいに。「答えられないよ」って言ったり、「5フィート11インチだから」ってはぐらかしたりしてた。なんで好きなんだろ。なんで好きなんだろ。理由はわかってるけど、でもなんでだろ。 帰ってから、カダーの声が聞きたくなった。今日デートした人のこともウエイターのおにいさんのことも聞いて欲しくなった。もう夜中の1時で、かけられなくてよかった。 「ちょうどよかった。今新曲出来たとこ。聴く? 聴いてよ」ってあの人が言った。 すごく久しぶりだった、出来たての曲聴かせてもらえたの。スタッフがまわりにいるみたいで、誰かに「ちょっと聴いてもらっていい?」って聞いてた。「来年のグラミー賞の『楽曲賞』だね」って言った。 飛んで行きたい。 あの人の曲をそばで聴いていたい。 あの人がこんなに好きなのに。なんでだろ。 -
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