ブラック・ベルベット - 2003年02月02日(日) 昨日もおとといも細かい雨が降ってたけど、今日はものすごくいいお天気だった。 今日ならアイススケート日和なのにって思った。 チビたちの缶詰ごはんが少なくなってきたから、前のアパートの近所に買いに行く。 行く前にニーラムに電話してみる。2週間インターンしに来てたニーラムが、わたしの前のアパートの近くに住んでることを思い出した。「遊びに行っていい?」って聞いたら「おいでおいで」って言ってくれた。 週に一度は車を飛ばして行きたくなる場所。 なんにもいいことなんかないって泣いてばっかりいたのに、今はすべてがなつかしい。 ニーラムのおうちには、ラブラドールとシェパードのミックスの犬がいた。 犬は犬の好きな人間を一目でわかる。スーティはいきなりわたしに飛びついて、人間の子どもみたいに立ってわたしの腰に抱きついて離れない。しゃがんで「Hi、スーティー」って抱き締めてあげる。音を立てながら顔じゅうぺろぺろぺろぺろ舐められて、ハアハアハアハア息を荒げながら肩やら頭に飛びつかれる。 また図々しく晩ごはんをごちそうになった。でも、14歳の男の子と11歳の女の子のいるおうちで「ここんちの子」になりすませるほど図々しくはなかった。わたしの中のフィードバック・システムはそこまで狂ってないらしい。その代わり、スーティのお姉さんになりすましてた。 晩ごはんの前に、ニーラムのだんなさんがお酒をすすめる。 カボードに並んだ瓶の中に、カナディアン・クラブを見つけた。飲めないくせに、これがいいなんて言う。「カナディアン・クラブが好きなら、こっちを試してごらん」って、ニーラムのだんなさんは素敵な筒に入った瓶を取り出す。やっぱりカナダのだった。瓶が気に入った。名前が気に入った。水の混ざったウィスキーはその匂いだけで気持ち悪くなるから、氷を入れてもらわずに少しずつ少しずつ舐めるみたいに飲む。香りが気に入った。飲めないくせに、これおいしいーなんて言ってる。 そしてまた「バカ」がわたしを触発した。 これあげたい。バレンタインズ・デーをちょっとはずして持ってこうかな。 ハーブティーにどぼどぼ入れてもらって一緒に飲みたい。 今度はコーヒーがいいかな。 ブラック・ベルベットなんて、素敵な名前じゃん。 帰ってからあの人に電話する。 女の子が仕事場に突然現れてぼうっと立ってることはここ何日かなくなったけど、夜中にひっきりなしに電話をかけてくるのは続いてるらしい。「ねえ、治るのかな、そういうの。もう自分がノイローゼになりそうなのはちょっと治まったけどさ。疲れたよ。寝る時間がない」。電話の内容がわけわかんなくても、相手にしてあげなきゃいけないんだろうなとわたしも思う。「抱っこしてあげたい」って思わず言った。「休み取って行きたいよ、ほんとに」。それから「嘘ってまたきみは言うんだろうけどさ」って言い足した。 「ううん。言わないよ。あたし、もう信じてるの。絶対来てくれるって」 「うん、行くよ」 「ねえ、あなたが来てくれたらね」 「何?」 「・・・。いろんなとこ連れてってあげるねって言おうと思ったけど、まだいろいろは知らないんだった」 「勉強しといてよ」 「うん。まだ時間いっぱいあるもんね」。意地悪で言ったんじゃない。会いたいけど待てる。 「大丈夫だよ。あなたが一生懸命その人のためにしてあげてるんだから。だから大丈夫。えらいよ。普通出来ないよ」 「えらかないよ」 「でも、ほんとに大丈夫だから。あたしお祈りしてるから」 「ありがと」 「信じてないでしょ。神さまがちゃんと導いてくれてるんだよ、正しい方向に。神さまがそうあたしに言ってくれたの。もうすぐ全部大丈夫になるって」 「うん」 「信じてないでしょ」 「うん。なんでわかった?」 「そんなの誰も信じないじゃん。でもいいよ。あなたは大丈夫ってだけ信じてて」 「うん、わかった」 「楽しいことだけ考えて、ね?」。それから「あたし今日いい子でしょ?」って自分で言ってゲラゲラ笑った。 「悪い子に戻らないでよ」 「さあ、わかんない。たまにしかいい子になれないもん。昔はもっといい子だったのにね」 「昔はもっといい子だったよな」。あの人が今度はゲラゲラ笑った。 ずっと困らせてばっかの悪い子だったじゃん、昔から。 でもね、ブラック・ベルベットなんかじゃとうてい語れない。あなたへの想いは。 -
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