I hate you - 2003年01月26日(日) カダーのルームメイトに貸してあげてる CD 2枚を、もう返してほしかった。 MoMA にカダーとルームメイトと3人で行った日の帰りに、ルームメイトがわたしから借りてった CD。それから何回かカダーのアパートに行ったとき、CD はいつも暖炉の上に置いてあった。「持って帰りな」ってルームメイトに言われたけどそのまま置いていたのは、それがカダーのアパートに行くためのパスのような気がしてたから。 だけど、パスはもう要らないってやっと思えた。「要らない」の意味が自分でもよくわからないけど、とにかくもうパスは要らない、そう思うようになった。 ルームメイトに電話して、取りに行く。 出迎えてくれたルームメイトが優しい笑顔でぎゅうっとハグしてくれて、 CD もらってすぐ帰るつもりが、あのアパートとルームメイトのあったかさに引き止められてしまった。 ルームメイトとおしゃべりしながらリビングルームの方に行ったら、「Hi」ってカダーの声がした。びっくりした。カダーはいないと思ってた。立ち上がって抱き締めてくれるカダーに、ルームメイトにあげたハグよりずっと力を込めて抱き締め返した。 もうこの前来たときみたいにナーバスじゃなかった。 カダーは「元気にしてた? どうしてた?」って何度も聞く。「元気だよー」って笑って答えたら、わたしの名前を何度も呼んで、「ちゃんと話してよ、どうしてるのか」って言う。別に取り立てて話すことなんかない。「最近のあたしはね、ハッピーライフ満喫なの」って、また笑って答えた。わたしのジーンズの膝の少し上を掴んで、「何だよ、この足。痩せたんじゃないの? ちゃんと食べてないんだろ。太らなきゃだめだよ」って言う。痩せてなんかもない。 電話がかかって来て、自分の国の言葉でしゃべる合間に「Itユs too late to go to City now, man」って英語が混ざってたから、「出掛けるの?」ってカダーが電話を切ってから聞いたら首を横に振る。「これからシティに行くにはもう遅いから?」って笑って、「イッティフ・ダウ」って意味もなく言ったら、「何それ?」って言われた。「電気を消して」っていう意味のカダーの国の言葉。のつもりだった。「イッフィー・ダウ」って直されて、「一体誰がきみに教えてるのさ? 言いなよ。誰だよ?」ってわたしの腕を掴んで引き寄せる。 「何飲む?」って聞いてくれてホットチョコレートをリクエストしたら、カダーも自分の分を作って一緒に飲んだ。ルームメイトがおなかがすいたって言って、カダーが「何か作ってよ。料理はきみだろ。なんにもないけど」ってわたしに言うから、もうどこに何があるか知ってるキッチンで GOYA のインスタントのカレーピラフを見つけて作った。作ってる間にカダーがお鍋のふたを開けて覗く。「ふた開けちゃだめじゃん」って怒る。 いつかみたいに3人でキッチンのテーブルでごはんを食べて、楽しかった。 それからテレビで「東西売春婦対決」なんてバカな番組見て、「男がセックスのあとに一番にやりたいことは何?」とか「男がやりたがるセックス行為は?」とかしょうもないクイズに一緒に答えて大笑いする。もう夜中の1時だった。 論文書きで忙しいルームメイトが、首と肩が痛くてしょうがないって言う。得意のマッサージしてあげてるうちにルームメイトはカウチの上で眠ってしまって、カダーは自分のベッドルームに行ってしまった。「ベッドで寝なよ」ってルームメイトを起こしてカダーのお部屋に行ったら、ベッドに座って本を読んでた。 カダーの国の言葉の本だった。「何読んでるの?」ってそばに座って不思議な文字の並んだ本を覗き込んで、これは何? これはなんて意味? とかじゃましてるうちに、「もうおしまい」ってカダーは本を閉じてわたしのからだを引き寄せる。胸を掴むから「キスして」って言ったら「キスしたくない」って言われた。「いやだ。じゃあやめて」。あんなセックスもういやだった。「なんでだよ」って強引にまだ引き寄せるカダーの腕をふりほどいて、「帰る」って言ったら「じゃあ帰りなよ」って言われた。 靴を履いてコートを着てバッグを持って、引き止めてくれるかなってちょっと期待したのに、カダーは「運転気をつけなよ」ってベッドルームを出て来て言った。思いっきりアッカンベーをしてやった。それからルームメイトのお部屋をノックした。「まだ起きてる?」って聞いたら「起きてるよ」ってルームメイトが答えた。ルームメイトのお部屋のドアを開けながら、「大嫌い」ってカダーに向かって言ったら「僕は大嫌いじゃないよ」ってカダーが言った。「あたしは大嫌いよ」って言って、ルームメイトのお部屋に入った。 ルームメイトにバイを言うつもりだったのに、クリムトのわたしの大好きな絵のポスターを壁に見つけて、「これ、あたしも好き。クリムトの中で一番好きなやつなんだ。いつから貼ってるの、これ?」って言い出したら、絵の話が止まらなくなって、コートを着たままルームメイトが横になってるベッドの端っこに座った。 「大丈夫?」ってルームメイトは聞いた。「平気だよ」って答えた。ほんとに別に平気だった。カダーと本気で喧嘩して気を紛らすために必死でおしゃべりしてるとルームメイトは思ったみたいだったけど、そういうわけじゃなかった。でも帰りたくなかった。 ルームメイトは「着替えなよ」ってTシャツを貸してくれた。「何もしないよ。喧嘩の腹いせに僕と寝るなんていやだろ?」なんてルームメイトが言う。「あたしは『やりたがり女』じゃないよ」って自分でもよくわかんないこと言ったのに、「わかってるよ」ってルームメイトが言った。 腕枕してくれて、ずっとおしゃべりしてた。カダーのことは何も話さなかった。ルームメイトの論文の難しい話とか聞きながら殆ど眠りかけたころに、ルームメイトがお手洗いに立って、それからカダーの様子を見に行ってるのが開いたドアからわかった。 「カダーはまだ起きてるの?」って聞いたら、「いびきかいて寝てる」って笑った。 なんとなく安心して、眠った。 -
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