あんな抱かれ方 - 2002年12月22日(日) 元気になって、夕方ルーズベルトフィールドでショッピングしてたら、カダーが電話をくれる。 「ごはん食べたの? 一緒になんか食べに行こうよ」って言ったら、おなか空いてないって言われた。「じゃあここにおいでよ」って言ったら、モールに行きたくないって言われた。 ショッピングが終わったら電話してって言うから、大家さんへのプレゼントをやっと決めて買ってから、電話する。カダーったらシティに友だちと飲みに行く途中だった。会ってくれるのかと思ってたのに。 「そんなに長い時間飲まないからさ、あとで電話するよ。うちに帰ってるだろ?」って言った。 飲んでからうちに来るんだろうなって思った。セックスしたいんだ。わたしとしたいことは、それだけ。 教会のキャンドル立てを出掛ける前に素敵にラッピングしたのを、予定通りにカダーんちに届けに行く。 予想が当たってなかった場合のために。リビングルームに灯りがついてたからルームメイトはいるんだと思った。でもドアはノックせずに、ノブにプレゼントを入れた袋をぶら下げて帰って来た。 電話がかかって来ないから、化粧を落として寝る用意を始めてた。 もう具合が悪くなるのはヤだから、今日は早く寝ようと思った。そしたら電話が鳴る。今シティを出たとこって言う。「今から行こうか?」「来たいの?」「行って欲しい?」「あなたは来たいの?」「行くよ」。10分くらいでカダーは来た。「何か飲む?」って聞いても何もいらないって言って、抱き締めてキスしてベッドルームにわたしを連れてく。「ハイ出しました、オシマイ」みたいなセックスだった。 ベッドサイドテーブルに立ててるフレームのひとつをカダーは見てた。 まだ前のアパートに住んでたとき、カダーの国の言葉を書いてって渡した薄いグリーンの紙に、カダーが書いてくれたカダーの国の詩。引っ越しに紛れて失くさないように「大事なもの入れ」の箱にしまってたのを、少し前にシルバー色のフレームに入れて、ほかの写真のフレームと並べて立ててた。 「あれまだ持ってたの? 僕が書いたヤツ」 「え? ああ、あれ? 気がついた?」 知っててそう言う。 「覚えてるの? あなたが書いて読んで聞かせてくれたの」 「You are crazy」 カダーは笑ってそう言う。 「だって素敵じゃん、あなたの国の文字。なんて書いてあるのかわかんないけど」 ほんとは少し覚えてる。英語で意味を教えてくれたの。愛をうたった詩だった。 「愛の詩だよ。有名な詩人なんだ、最近死んじゃったけどね。僕は彼の詩が好きだから。女の子に人気があるんだけどさ」 カダーは、自分の国のおうちにその詩人の詩集を殆ど全部もってること、いつかカダーんちでわたしに読んで聞かせてくれた詩集もその詩人のだってこと、持ってるうちの一番お気に入りを持って来たつもりが荷物の中に違うのが入ってたこと、そんなことを話してくれた。 「今日、何買ったの?」って、それからわたしのクリスマスショッピングの中身を聞いた。大家さんにあげる日本酒の徳利とおちょこのセットを見せて、「綺麗だね、でも何に使うの、それ?」って聞くカダーに説明してあげた。お揃いの綺麗なピンクの花柄の四角いお皿も見せた。気が利いてるね、おしゃれだね、いいプレゼントだよ、って言ってくれた。食器にしようって決めて探しに行った Pottery Barn で見つけたものだった。カダーがいいって言ってくれて、嬉しくなった。 前に買った母と妹へのプレゼントも見たいって言うから見せた。 母に選んだセーターをジェニーが「あたしも欲しいなあ、これ。いいなあ」って言ってたから、サプライズにジェニーにそれを買った。ちっちゃいサイズと大きなサイズのおんなじセーターを見て、カダーは大笑いした。「ジェニーに言うなよ、きみのママとお揃いだって」「ジェニー知ってるよ、これお母さんにあげるの」。カダーはまだ笑ってる。可笑しいよ、きみのママとジェニーがお揃いのセーター着るってさ、って。 「あなたにも何か買ってあげたかったの。でもあなたって好みがウルサイでしょ? だからやめた」「いいよ、僕はプレゼントは嫌いだから」。知ってるけど、あげたかった。帰り際に「あなたんちにもプレゼントが届くんだよ」って言ったら「え? 送ってくれたの?」って嬉しそうな顔してた。「あなたにじゃないんだけどね」って慌てて言った。そんなに嬉しそうな顔するならカダーにもあげればよかった。あげたかった。 愛を綴った詩が好きなカダーを、わたしはほんとのカダーだとまだ信じてる。 そして、わたしが買ったプレゼントを見たいって言ってくれるカダーをほんとのカダーだと思ってしまう。誰かに「やめなさい」って言って欲しい。でもほんとはやめたくないから誰にも言えない。 今更みたいに悲しかった。虚しかった。自分が可哀相になる、あんな抱かれ方。 初めてあの人に対して「ごめんなさい」って思った。わたし、こんなバカな女だよ。 -
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