神さまの話 - 2002年11月30日(土) ゆうべは朝の5時まで起きてて、目が覚めたらお昼の2時だった。 ディーナに昨日会えなかったから今日会えるかなと思って電話したけど、いなかった。 それからカダーに電話してみた。会いたいと思ったわけじゃなかった。 カダーはうちにいて電話を取ってくれて、「これから来る?」って言った。 お財布を昨日病院に忘れて帰ったことに気がついて、取りに寄る。 病院の周辺の道がすごく混んでて、カダーのところに着いたのは約束の時間より1時間あとだった。 カダーは夜にシティに行くって言ってた。 たくさん時間はなかったけど、それでもよかった。 カダーはやっぱりわたしを抱いて、ついてたテレビをなんとなく一緒に見ながらオレンジを食べて、カダーはオレンジの皮の剥き方をわたしに教えて、わたしがやって見せたオレンジの切り方をカダーは嫌いだって言った。シアツ・マッサージをしてよって言うからしてあげたら、カダーは「今日は手抜きしてるだろ」って怒って、わたしは「ホントだ。手抜きしてる」って思いながら笑った。ずっと前に日本の食料品のお店でカダーにあげようと買ったサヤエンドウのチップスを持ってってて、カダーはそれをおいしくないって言いながら食べる。おいしくなけりゃ食べなくていいよってわたしが怒って取り上げたら「腹が減ってるから食べる」ってカダーは取り返す。 恋人みたいでもなんでもなくて、ロマンティックでもなんでもなくて、でもわたしが信じてる「友だち」に近づいたと思えたわけでもなくて、戻ったわけでもないみたいで、なんだかよくわからなかったけどただそうやって胸に痛みを感じないで過ごしてた。 カダーには相変わらずたくさん電話がかかって来た。そのうちのいくつかは女の子で、その中のひとりはきっと特別な女の子なんだろうなってわかった。わたしによく言ってたみたいに、「心配するなよ、ちゃんとあとでかけるから」って優しい声で言ってたから。それが少しだけ淋しかったけど、淋しくない、淋しいはずない、って自分に言い聞かせてた。 「神さまを信じてる?」って聞いたら「神さまは信じてるよ」ってカダーは言った。 クリスチャンだけど敬虔なクリスチャンってわけじゃなくて教会には行かない不真面目な信者って前に言ってた。 「もし人が間違ったことを選んじゃったら、神さまはどうやってそれを教えてくれるの?」 「さあ。僕は間違ったことしたことないからね」 「もし人が悪いことしたら、神さまはどうするの? 修正してくれるの?」 「僕は彼とは友だちだから。許してくれるだろうなあ。でも悪いことしたことないからな」。 全然お話にならない。それからジョーク言い合って笑いながら神さまのことをいろいろ話して、カダーが聞いた。 「きみは神さまを信じてるの?」 「あたし、人の心とか感情とか向かう方向とかそういうのを全て支配してる大きな力を信じてるって前に言ったでしょ? 神さまは信じてなかった。でも『それが神さまなんだよ』って教えてくれた人がいて、それからそれを神さまだと思って信じることに決めたの」 「誰が教えてくれたの?」 「あなたの知らない人よ。あたし、宗教は信じない。あれは人が創ったものでしょ? だから宗教を巡って人がいがみ合ったり、戦争まで起こしたりするじゃない? そんなのおかしいよ。どんな宗教を信じてたって、神さまはただひとつ存在するだけのはずなのに。違う? あたしは宗教じゃなくて、神さまっていうそのたったひとつの力を信じてるの」。 わたしが「神さま」なんて言い出すから半分からかってるみたいだったカダーが、ものすごく真剣な顔して聞いてくれた。 そしてわたしはカダーに話した。 「あなたは笑うかもしれないけど」。きっと笑わないと思ってそう言った。 わたしの信じてた大きな大きな力を神さまと呼ぶことにしてから、毎日お祈りしてること。そしたら、いつもいつも心の底にあった痛みが消えたこと。わたしが幸せになれる正しい方向があって、そこに向かうように神さまが導いてくれてると信じてること。ときどきまだ痛みが戻って来るけど前と比べたらそれはなんでもないってこと。 「笑わないよ。信じられるよ。いつからお祈りしてるの?」 「最近。2週間くらい前からかな」。 カダーはほんとに全然笑ったりしないで、わたしの目をじっと見つめてた。 「あなたのこともお祈りしてるんだよ。あなたのことは前からお祈りしてた。でもね、それは自分の勝手なお祈りのしかたで、多分間違ってた。今はね、神さまが導いてくれると信じてお祈りしてるの」。 カダーは肩にわたしを抱き寄せて、それからきつく抱き締めてくれた。 一番話したいことはほかにあった。でもそれはまだ話せなかった。いつかまたここに来られて、そのときに話せる。そう思った。そう信じられた。 -
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