何かが確かに違ってきてる - 2002年11月28日(木) 仕事が終わってから、ジェニーがおうちに招待してくれる。 ジェニーんちは最近引っ越した。はじめて行った新しいおうちは、大きくてかわいいオレンジの煉瓦のおうちだった。親戚の人たちがサンクスギビングのディナーに集まる。おじいちゃんが膵臓癌って診断されて、ここんとこ親戚中がテンスな状態だってジェニーは言ってた。そんなとこに招待してもらって平気なのかなって心配だったけど、ジェニーのママは「ほんとに久しぶりだね。来てくれて嬉しい」って、変わらない笑顔で抱き締めて迎えてくれた。 大勢の食事の用意をお手伝いする。ナイフを手にしたわたしを、ジェニーのお父さんが心配そうに見てる。「あたしのこと、15くらいの女の子だと思ってるでしょ。それより10は年取ってて、お料理の経験は豊富なんだから」って、日本人の包丁さばきを披露してあげる。それ聞いてたジェニーの従兄弟は、ほんとにわたしが25だと思ってる。やった。 トントントントントンってナイフを素早く滑らせながら、人参の細切り。この「トントントントントン」は日本人の文化の誇りなんだよ。絶対ここじゃあ驚異と尊敬のまなざしを勝ち取れる。それだけで「お料理上手」のタイトルがもらえてしまう。 わたしはまたジェニーんちの娘になりすまして、たくさんお料理してたくさん食べてたくさんくつろいだ。 「また来てね。いつでも来て。ほんとにいつでも来てくれていいのよ」ってジェニーのママがまた抱き締めてほっぺたにキスして送り出してくれる。いつもと違うふうに嬉しかった。うちに帰ったのは夜中の1時。 あの人に約束の電話をかける。 ゆうべ夜中に電話をくれたときは「まだ普通に話が出来ない」って沈んでた。 今日は昨日より少しだけ元気になってた。そしてたくさん話をした。 「会いに行くよ」って言ってくれた。 会いに行ったらそこでしばらく過ごして、それからいつも仕事で行くとこに一緒に行こうよ、って言ってくれた。春に自分で始めた新しい仕事は順調だけど大変で、でも上手く行ってるからもう少し頑張れば時間に余裕が出来るからって言ってくれた。「また嘘だって言うんだろ。絶対行くから。だって僕は行きたいんだから。絶対会えるから。会いに行くから」って言ってくれた。「会えるよ」って何度も言ってくれた。 「今度電話するときまでに、もうちょっと元気になっとくよ」って言ってた。 自分で命を絶った人はどうして天国に行けないっていうんだろ。 わたしはどんな人もみんな天国に行くって信じてる。 天国は、どんな人も幸せになれるとこ。 この世でどんなことをしようとも。 だけどそれは言わなかった。わかんないけどなんとなく、あの人をよけいに悲しませるような気がしたから。 携帯のバッテリーが切れてることに、仕事が終わってから気がついた。 充電したら、メッセージがふたつ入ってた。 ひとつはカダーのルームメイト。 「I wish you happy thanksgiving, and hope you are okay」って。 もうひとつはディーナ。 やっぱり「I wish you happy thanksgiving」って。それから「これ聞いたら電話してね」って。バッテリー切れてたから聞けなかったしかけられなかった。 明日、会いに行く。 ドアを開けて、階段をのぼって、 わたしはもうどんなことも受け入れられる。 何かが少しずつ変わってる。 わたしの中で変わってるのか、わたしのまわりで変わってるのか、それはまだよくわからないけど。 でも、何かが確かに違ってきてる。 -
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