ドアを開けるのはわたし - 2002年11月23日(土) 雨は降らなかった。陽差しが強くて、ものすごくあったかそうな窓の外。 外に出たら、顔中に冷たい風が突き刺さった。 急いで車に乗る。そして、走る。 車の中で、「Hot in Herre」が流れる。カダーと一緒によく聴いた。 カダーったら、「Hot in, so hot in, so hot in heerre~♪」って、相変わらずキーはずして歌ってた。ワラリルビラ・ア・ア・アンダリルビラ。なんでこんなのキーはずれるんだろ。 車を降りて、歩く。 長いマフラーをぐるぐる巻きにしても寒い。 ジーンズを通して風が足にも冷たい。 ドアはロックされていて、わたしはベルを鳴らした。 帰って来たら、突然睡魔に襲われる。 ズブズブと音を立てて眠りに落ちて行く。 目が覚めたら、窓の外はもう暗かった。 5時。3時間は眠った。 りんごをひとつ食べて、アーモンドティーを飲んで、また眠る。 携帯の音で目が覚める。 10時過ぎ。一体どれだけ眠るんだろって驚いた。 カダーのルームメイトだった。 ちょっと躊躇ったけど、取った。 一週間ぶりかな。 「ずっと電話ないからどうしてるのかと思ってた」ってルームメイトが言った。 「ごめんね。かけたかったんだけど、ちょっとかけないでいようと思ったの。あなた忙しいし、カダーといるときには電話取れないって言ってたから」。 「かけたかったんだけど」は嘘。かけなかった理由は半分しか言ってない。 「大丈夫なの?」って相変わらず聞いてくれて、「大丈夫だよ」って前とは違う気持ちで答える。 「よかった。時間が最良の薬だからね」ってルームメイトは言う。 時間も癒してはくれるけど、最良の薬とは思わない。 時間が癒してくれる傷は、いつまでもいつまでも痕が残るから。それを見てなつかしいとさえ思えるようになったとしても、それはなくならない傷痕。そして、痒みほどの程度だったとしても、痕が疼くこともある。時間は癒してくれても完全には治してくれない。だから、時間だけに頼って痛みをこらえながらただ待つのは嫌だ。 「違うよ。時間は最良の薬じゃない。最良の薬はね・・・」 「何?」 「Belief」 「どういう belief ?」 「あたしは大丈夫になれる。全てのことが大丈夫になる。あたしは大丈夫。そういうこと」。 「Cool!」ってルームメイトが言った。 まあいいや。今はまだ何も話せないから。 いつか全部話してあげる。カダーにも。 「あたしさ、こんなに苦しむと思わなかった。すぐ平気になれるって思ってた。まだ頑張ってる途中だよ。すごい努力してる。ほんとに一生懸命なの。でもね、もうすぐだから」。 それだけ言った。 ほんとに、なんでカダーのことがこんなにも大きいんだろう。 そのせいで自分で治す方法を見つけたけど。 ううん、自分だけの力じゃない。それに、傷を治すだけじゃない。カダーのことだけでもない。 すべての痛みを取り除く。いつもいつもこころの底にあった痛み。 「元に戻らなくていいんだよ。僕が違うきみにしてあげる」。 いつかのあの人の言葉。あれから一年以上経ってる。 天使の力が回りまわって、やっとここに辿り着いたのかもしれない。 わたしは違うわたしになる。 明日も扉を開ける。ドアを開けるのはわたし。 わたしは間違ってない。 もう怖くない。 -
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