落ちこぼれ天使 - 2002年11月19日(火) ゆうべ。夜中の2時頃だった。 あの人以外にそんな時間に電話をかけてくるのは、いつまでたっても時差が計算出来ない母しかいない。11時頃に父がかけてきて、30分前にはあの人からかかって来たばっかりだった。 電話を取ったら、無言だった。 ずっと無言だったけど、カダーだと思った。絶対カダーだと思った。 間をあけて何回か「Hello?」って言ったあとに名前を呼びそうになった。もう一度「Hello?」って言ってから黙ってたら、切れた。 20分くらいして、また電話が鳴る。 カダーは今度は返事した。それから、 「寝てた?」って聞いた。 「まだ起きてたよ。」 「明日仕事じゃないの?」。 「仕事だよ」って笑った。 「仕事なのか」ってカダーは言った。 「今日はお休みだったけどね。週末働いたから」 「今日休みだったのか」ってカダーは言った。 なんとなくわかった。わかったけどわかってないふりした。 「あなたもまだ起きてたの?」って聞いたら、 「寝ようと思ったんだけど、寝られなくなった」って言った。 ほらね、って思った。でも悲しくもなかったしイヤだとも思わなかったし、電話くれたからそれだけで嬉しいなんても思わなくて、ただものすごく優しい気持ちがした。もしかしたらわたしも天使なんじゃないかって思うくらい、優しい気持ちになってた。だから全然平気だった。 「あたしのことが恋しくなったの?」って笑って聞いたら「No」って言われた。 「なんでそんな意地悪なのよ?」 「それが事実だから」。 「別に恋しくないけどさ、今度会いに行くよ」 「何のために?」 「ヤリに」。 それでも悲しくも淋しくも痛くもなかった。 なんでそんなに優しい気持ちになれるのかわからなかったけど、天使を通り越して女神さまなんじゃないかってくらい、優しい気持ちだった。 日曜日の夜、突然どうしてもどうしてもあることを聞いて欲しくなって電話して、カダーは電話を取ってくれて前みたいにちゃんと「元気?」って優しい声で言ってくれて、でも「今ちょっと忙しいからあとでかけ直すよ」って言ったままかけて来なかった。何度おんなじバカやってるんだろってちょっとだけ痛くなったけど、いつもみたいに信じて、こころを落ち着かせながら信じて信じて信じてるうちに平気になって、信じながら眠れた。 「昨日はごめん。かけ直せなくて。今忙しいんだ」 「勉強?」 「そう。今週ミッドタームがふたつあるし来週はペーパーの期限だし」。 今大学は試験の時期だ。ジェニーもカダーも仕事しながらマスター取っててほんとに偉いと思う。それも両方フルタイムで。 「あなたに聞いて欲しいことがあったの。でも今度会えるんならそのときに話すよ」 「今話してくれないの?」 「話さない。だってどうせ意地悪言うもん」。 「サンキュ」ってカダーは笑った。もう意地悪じゃなかった。 「おやすみ」って前みたいに言ってくれた。それから「ありがと」って言った。 「そんなことに『ありがと』なんて言わないでよ。悲しくなるじゃん」って笑って言ったら、「そう?」ってカダーもまた笑った。 「おやすみ。勉強頑張んなよ。あなたはちゃんと出来るよ、試験」 「どうかな」 「うん、出来る出来る。じゃね」 「うん、おやすみ」。 会えるのが嬉しいわけでもない。だって、セックスだけしたがるヤツ。 でも会いたい。抱かれたいんじゃなくて。 来週じゃなくて再来週じゃなくて、その次でもなくていい。 ちゃんと、意識のうんと奥底で無意識にすっかり信じられるようになってからがいい。 そしたら多分、「セックスしたいだけ」って言われたりしても、そんなこと言ってたってほんとは違うんだよ、前に戻るんじゃなくて前よりずっと素敵な友だちになれるんだから、って今日よりもっと優しい気持ちになれて、それから今度こそもう絶対に泣かない。いっぱい笑って、わたしの笑顔が好きってまた言わせてみせる。 女神だなんてまさかとんでもないから、ちょっとオツムの弱い落ちこぼれ天使ってことにしとこ。 使命を与えられたわけでもないのにどうしようもない悪魔を勝手に救いたがろうとする落ちこぼれ天使。 オツム、だいぶ弱いかな。 -
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