ジャパニーズ・ナイト - 2002年10月13日(日) 連れてってくれるはずだったお寿司やさんは、日曜日はお休みだった。 Dr. チェンはくやしがって、「でもおいしい日本料理の店はこの辺りにたくさんあるから」って、ジェニーとわたしを引っ張りまわす。わたし別に日本料理にこだわらないのになあって思ってたけど、 Dr. チェンは日本料理にまで「味にうるさい」そうで、日本人のわたしを驚かせたいって一生懸命だった。次に目指したお蕎麦やさんは外まで人が並んでる。「yakiniku」の看板を見つけて、「あーっ。ジャパニーズ BBQ だ」ってわたしはお店に走り寄る。なつかしい、なつかしい。「ここにしよ」って言ったけど、そこも1時間半待ちだった。 結局、違うお寿司やさんに行く。 わたしったら、この街に来てから一度だって日本のレストランに行ってない。前の街でも、知り合いのお寿司やさんに年に一度行くか行かないかだった。とてもおいしいお寿司やさんだったけど。 「ニューヨークのお寿司なんて、絶対信用出来ない」なんて言ってたら、おいしかった。ほんとにおいしかったよ。びっくりしたよ。 Dr. チェンは得意げに、「ここのスシも悪くないけどね、ここがそんなにおいしいって言うなら、最初に行く予定だったとこできみは死ぬよ」って言った。 わたし、この街に来てから、日本のものから故意に遠ざかって来てた。 もう帰れない日本に固執するのが悲しかったから。 カダーが地中海料理に執着してて、オリーブやナントカってソースにこだわってて、お母さんの手作りのお料理を恋しがって、そういうのを聞かされると、そんなふうにわたしも自分の国の食べ物を素直に好きって言えたらいいのにって思ってた。昨日も MoMA の帰りに行ったレストランでそう思った。カダーなんてわたしよりもっと自分の国に帰れない人なのに、なんでわたしにはそれが出来ないんだろう。それは今でもわからない。 だけど今日、思った。 カダーとカダーのルームメイトを、この界隈に連れて来てあげようって。 カダーがいつも自分の国の料理を誇らしげに話すみたいに、わたしも自慢しようって。 お寿司は嫌いだって言ってたし、お蕎麦の味なんかわかんないだろうし、やっぱ焼き肉かな。焼き肉がいいよね。コリアン BBQ とは違うんだよって、教えてあげよ。・・・いつのことになるか、わかんないけど。 Dr. チェンは、日本の食料品のスーパーマーケットにそのあと連れてってくれる。「きみが自分が持って生まれたカルチャーと、よりを戻すために」だって。 さやえんどうのスナックとルックチョコレートを手に取った。それから、「チョコレートパイ」っていう箱入りのお菓子を見つけて、「ああー思い出した。あのね、こういうのでマシュマロがサンドイッチになったのがあって、ふたつ入りのちっちゃい箱があるの。大好きだったんだー。なんて名前だっけ? あれぇ、ないのかなあ」って、わかるわけない Dr. チェンとジェニーに向かって言いながら探してたら、日本人の店員さんがエンゼルパイを指さしてくれた。買っちゃった。 そのあと行った日本のバーは、シックで素敵だった。アルコールの種類が少なくてつまんなかったけど、「トラディショナル・ジャパニーズ・オードブル」ってのを注文したらおせんべの盛り合わせだったのにも笑っちゃったけど、クリームチーズがまん中に入ったロール型のおせんべがおいしかった。日本人の男の人ふたりがアコースティック・ギターでジャズを演奏してて、それもよかった。 結局、「大阪でどこに行ったらいいか」って話は殆どしないで、わたしは Dr. チェンに日本語の大阪のガイドブックを手渡されて、うちで選んでくるようにって宿題にされちゃった。 楽しかった。「あたし、今日のこの夜をあたしの『ジャパニーズ・ナイト』って名付けることにした」って言ったら、ふたりが拍手した。「アンタはもっと日本人になっていいよ」ってジェニーが言って、「日本を好きになりなよ」って Dr. チェンが言った。 明日あの人が電話をくれるとき、エンゼルパイ送ってって頼んでみようかな。 天使が送ってくれるエンゼルパイなんて、ちょっといいアイデアじゃない? -
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