その人になりたい - 2002年10月06日(日) カダーのルームメイトは恋人がいない。「誰か紹介してやってよ」ってカダーが言う。「あたしは?」「あいつとデートしたいのか?」「聞いてみてよ」。カダーがルームメイトに聞く。「ヤーって言ってるよ。きみがいいときいつでもってさ。いつがいいのさ」「あなたが忙しいとき」。カダーったら笑ってる。 カダーのルームメイトは愛情の深い人って気がする。恋人に愛をいっぱい注いで、愛を大切に育もうとする人。ひとりの人を愛し抜く人。きっとそうだ。あんな人を愛したらいつも幸せと安心に満たされてるんだろうなって思う。 ここに来るとき、5年間恋人だった人と別れて来たって言ってた。遠い国に離れて暮らしながらその人を縛ることは残酷だと思ったからって。そばにいられる相手と巡り会って幸せになって欲しかったからって。そしてここに来てから最初の一年、毎晩毎晩彼女の夢を見て苦しんだって言った。淋しくて恋しくて気が狂いそうだったって言った。今でも愛してると思うって言った。 カダーも愛情の深い人だと思う。愛なんか要らないってうそぶいてるけど、本当に愛せる人に巡り会ったら、カダーだってきっとその人を大切にする。愛を大切にする。とても大事にする。そして、いつかカダーが見つけるその人に、わたしは嫉妬してる。わたし、その人になりたい。 その人になりたい。 電話してきて、「僕の声わかる?」なんて言う。 「何言ってるの?」って言ったら、「昨日電話しなかったから忘れてないかと思ってさ」なんて言う。 そんなこと言うから愛しさが募って、「会いたいよ」なんて甘えてしまう。 こういうときにクールを装えたら、カダーに同じ言葉を先に言わせられるのかもしれない。そう思ってみるけど、出来ないからしかたない。 「アンタってばどうしてそう簡単に恋に落ちるのさ。ほんっとバカなんだから」。 先週、アニーが彼と上手く行ってるのかって聞いてきたとき、呆れて言われた。 「ボーイフレンドじゃないよ、そう言われた」って答えて、理由を言ったから。 「ちょっとは学習しなよ。簡単にプシーをあげるんじゃないって言ったでしょ」。 だから、そういう言葉を大きな声で言わないでよアニー。 それにそんなのが原因なんかじゃないよ。ティーンズじゃあるまいし。 「簡単に抱かれるから自分ばっかりのめり込んじゃって、だから逃げてかれるんだよ」。 アニーはそう言うけど・・・。 わたし、簡単に恋に落ちたの? 恋に落ちるのに、大した理由なんかいらない。 理由よりも、それはもっと肌で感じるものだと思う。 だけど、好きになるのには理由がある。 理由をひとつ見つけるたびに、わたしはカダーを好きになってく。 そして、どんどん見つけてく。 「あたしあなたのこと、たくさん理由があって好きだよ」。このあいだカダーにそう言った。愛してるって言えないけど、「好き」なら愛を込めて言える。カダーも好きだって言ってくれるから。 「どんな理由?」ってカダーは聞いたけど、それはわたしの秘密。 「ベッドの中でいいから?」「そうでもないよ」「じゃあベッドの中でちょっといいのと、このハンサムな顔」。別にハンサムじゃないとは言わないけどさ。あのハンサムドクターのせいで、ちょっとやそっとのハンサムじゃハンサムと思わなくなったんだから。 「心があったかいから?」。あったかい心を持ってる人だと思うよ。だけどわたしには、ときどき氷みたいに冷たいじゃん。 「きみを幸せな気分にしてあげることを言えるから」。でしょ? 喜ばせようと思って言うんでしょ? 乗せられて喜んでるわたしもわたしだけど。まんまと幸せな気分になってるけど。 違うんだ。そういうんじゃないの。 「いつか教えてあげるよ。あなたのことを好きじゃなくなったときに。『あたしがあなたを好きだった理由はね』って」。 そう言ったら、「Itユs not nice」ってちょっと悲しそうな顔見せた。 だから慌てて言った。「そんな時、来ないよ」って。 そんな時、来ないよ。愛は消えても理由は消えない。だから好きは消えない。 「こういうとこが好き」とか「こういうときのこの人が好き」とか、そういうのもあるけどさ、もっともっと深い理由がある。 こんなこと思ってるってことが、「恋に落ちてる」ってことなのかな。 でもやっぱり違うと思うよ。 あの人への愛は、あの娘への愛とおなじに、それ以上に深い愛はないけど、 あの娘への愛が消えないように、あの人への愛は消えないけど、 それでもわたし、ずっとカダーのそばにいたい。 カダーがいつか愛するその人になりたい。 -
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