3番目にいい男 - 2002年09月26日(木) 買ったばかりの携帯電話に誰かから電話がかかるはずもなくて、つまんないからカダーに電話してみる。 カダーは「Hello」って言わずに、いきなりわたしの名前を呼んだ。それから、「今買い物してるとこ。今日これから僕はスープを作るからね、親愛なるルームメイトときみを、僕のスープに招待してあげよう」。招待って、ルームメイトは一緒に住んでるんじゃん。またただふざけてるんだと思って、「冗談?」って聞いた。「冗談なんかじゃないよ。今からおいでって」「ほんと?」「ほんとほんと。そのかわり、遅くなるなよ。待たないからね」「うん、行く行く。出来るだけ早く行く」。 急いで用意する。明日の仕事の用意とお泊まりの用意。途中で携帯が鳴って、「今どこ?」ってカダーが聞く。まだ高速に乗る手前だったけど誤魔化して、「あと20分で着くから」って言った。それからぶっ飛ばした。びゅんびゅん飛ばした。それでも20分で着くわけがなく、多分30分はかかったと思う。 ドアの窓から中を覗いてカダーに手を振る。カダーはドアを開けてくれて「Wow! 早かったじゃん。ぶっ飛ばした?」って言った。「飛ばした飛ばした。車の中でわたしも走った」。そう言って、おなかに抱きつく。リビングルームに座ってたルームメイトがにょっきり立ち上がって「Hi」って言った。 スープが出来上がるまで、ルームメイトがイタリアンブレッドをスライスして、わたしはコーンビーフをスライスした。 トマトとリマビーンズのスープは、すっごくおいしかった。全然期待してなかったのに。 ルームメイトは「ちょっと塩入れていいでしょうか、サー」ってカダーの許可を取って塩をがんがん振ってたけど、わたしにはパーフェクトな塩かげんだった。「旨い。めちゃくちゃ旨い。すごいよ、これ。いや、ほんとに旨い」。カダーは自分もちょっと塩を振りながら、そう言って食べてた。それからボウルを両手で抱えて「ほら、こうやって食べな。その方が旨いから」ってわたしに言う。大きなボウルに入れてくれたスープを全部平らげたら、「おかわりは?」って聞く。「おなかいっぱい」って言ってるのに、もっと食べなきゃだめってスープをわたしのボウルに注ぐ。食後にクッキーをほおばりながら、わたしにひとつ渡す。「ほら、デザート。遠慮しないで食べな」って。遠慮してない。おなかいっぱいなんだって。 「いいなあ、このおうち。あたしすっごくくつろげるよ。大好きだよ」って、リビングルームのカウチに座って言ったら、カダーが「僕はきみのアパートが好きだよ」って言った。 朝仕事に行くときにラジオで聞いた「女が求める男のクオリティー・トップ8」ってやつの話をしてあげたら、その話で延々盛り上がる。ナンバー1は、「自信」だった。カダーはそれを聞いて、「なんだ、僕はあるよ、自信」って言った。「知ってるよ。聞いたとき、カダーだ、ってひとりで笑った」。自信家だから、誉められるのは当然で、誉められなかったらちょっと気にする。「カダーはあたしが今まで出会った男の中で、3番目にいい男だよ」って言ったら、もう話題がほかのことに移ってしばらく経った頃に「ねえ、僕はほんとに3番目なのか?」って、真面目な顔して聞いた。「だめじゃん、カダーらしくないじゃん。自信あるんでしょ?」って言ってやった。 3番目なんて、適当。そんなふうに思ってない。わたしはもうカダーを誰とも比べてない。カダーは素敵な人だと思う。ときどき意地悪で冷たくて、わたしは振り回されてるけど、自信のあるところが好き。どういう男が好きかって聞かれてひとことで答えるなら、「自信のある人」ってわたしも答える。自分に自信のある人は輝いてる。内に秘めた自信は内側から輝いてる。でも、わたしはカダーが自分では知らないカダーの素敵なところを、ほかにいっぱい知ってると思う。そこが全部とても好き。 カダーはわたしの携帯電話のゲームで遊び始めて、わたしはカダーのルームメイトとおしゃべりしてた。夢中になって話してたら、カダーは自分のベッドルームに行っちゃった。ルームメイトに「あたし、歯磨きしてくるね」って言って、それから顔も洗って、カダーのお部屋に行った。カダーはベッドに入ってた。シャツとパンツを脱いで、カダーの腕の中に滑り込んで抱きついた。カダーの体はあったかくて、わたしの体は少し冷たかった。「寒い?」ってカダーが聞いて「うん」って言ったら、「すぐあったかくなるよ」って大きな体で足の先まで包んでくれた。 「スープ、おいしかった?」ってカダーは聞く。「うん。すごくおいしかった。変に凝ってなくてシンプルでそれでいてコクがあって素材が生かされてて。あたし、そういうの好き。あんなの全然期待してなかったよ」。カダーは返事の代わりに目をつぶって嬉しそうに微笑んだ。 わたしは、カダーのほっぺたとおでこと鼻の頭と眉間と、くちびるの端っことくちびると、あごと喉と、目とまぶたと、耳たぶと耳の横に、ゆっくり順番にキスした。おいしいスープのお礼に、愛を込めて。 「3番目」をちょっと気にしてるカダーに、愛を込めて。 1番目はあの人。2番目もあの人。だからカダーは3番目ってことにしとく。 -
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