天使の策略 - 2002年09月03日(火) 電話した。 あの人は寝てた。 ものすごく久しぶりの寝ぼけ声。 わたしの好きな寝起きの声。 寝ぼけ声でいきなり聞く。 「ねえ、アルコールって、英語でちゃんと発音したらどうなるの?」 カッコつけて言おうとするからあの人はホのところがフォみたいになって、 「ちがうちがう。フォじゃなくて、ホ」「コホッて咳するときみたいに言うの」「ホのあと伸ばすとき R が入ってるよ、カッコつけないでふつうに伸ばすの」「んーだいぶ上手くなった」「そうそうそう」「あ、またもとに戻った」 とかやってるうちに時間が過ぎてく。 「もうやだ。話ししようよー、ふつうに」 「あ、じゃあもうひとつだけ。『ムラムラしてきました』は?」 「何聞いてんのよ。まあいいよ、教えてあげる。Iユm getting horny.」 「もいっかいもいっかい。フォーニー?」 「違う、またフォって言うー。ホだって。あなたちょっとホに弱いよ。だからさー、もうやだってば」 「じゃあさじゃあさ、『勃起しました』は?」 「うるさい。もう教えない。なんでそういうのばっか知りたいわけ?」 「わかったわかった、じゃあ『きみ勃起してるよ』にするよ。これならいい?」 そんなことばっか言ってるうちに、あの人は「仕事行く用意しなきゃ。うそ。ほんとはうんこしたくなった」とか言い出す。バカみたいにしょうもないことで笑って笑って、1時間以上も話したのにちっとも素敵な会話なんか出来ないまま終わった。 ねえ、これって何? わたしさ、ほんとにほんとに真剣に深刻に、 もうあなたのこと待たずに生活しなきゃって、 あなたと話せなくなることに慣れなくちゃって、 一生懸命考えて考えて我慢して我慢して でもやっぱり愛してて大好きで心配で、 どうしても声聞きたくて我慢出来なくなって、 だけどなんとなくもう大丈夫な気がして そんな気がしたからこの間とうとう電話しちゃって、 そしたらやっぱりわたしあなたが大好きだって思って あなたもわたしのことやっぱり大好きでいてくれてるんだって分かって、 でも思ったよりあなたが平気そうだからちょっとつまんなくて、 だから意地悪して新しい電話番号まだ教えないでいて、 このあいだより少しは分かってくれて また魔法の言葉くれて素敵なおしゃべり出来るかなって思って、 そう思って今日また電話したのにさ。 ねえ、もしかしてちっとも分かってない? そういうわたしのものすごい複雑な葛藤。 絡んでもつれて必死になってほどこうとしてるうちによけいこんがらがっちゃったけど 落ち着いてほどいたらほどけるかもしれないって思えてきて きっとそうだ、大丈夫、ってそう思い始められるようになったまでの奥深い過程。 引っ越すこと決めてから今日までの、わたしにとってはそれは長くて険しかった道のり。 大げさじゃないんだって。 「大好きだよ」って言いたかったのに。聞きたかったのに。 そしたら飛び越えられると思ったのにさ。 分かってないんだろうな、ちっとも。 まあいいかな。これでいいのかな。 楽しかったから。 あなたとじゃなきゃ、あんなふうに心底バカになれないし笑えないしそのバカさ加減が愛おしいなんて思えないよ。 だからこれでいいのかな。 でも何がいいのかな。 ほんとにいいのかな。 それともまた苦しむのかな。 わたし何を飛び越えられると思ったんだろ。 それとも何かをもう飛び越えたのかな。 ほんとは分かってて、一緒に飛び越えてくれたの? 無邪気に笑いながら、手を引いてくれてたの? だったら、もうなかったことにしてもいいや。 ひとりで少しだけ離れてみようって思ったこと。 出来そうな気がしてたこと。 ねえ、めちゃくちゃ楽しかったね。ね。 -
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