雨の日はオカシクなる - 2002年09月02日(月) どしゃ降りの日曜日。一歩も外に出ないでいた。 雨の音を聞きながら、嫌い嫌い嫌い嫌いっていつものように雨に嫌いをぶつけてた。 夕方にバスタブにお湯をいれてお風呂に入った。引っ越して来て、初めてバスタブに浸かった。ブルーのバスタブに溜めたお湯にミルクのオイルを落としたけど、お湯はミルク色にならずに濁ったグレーになった。濁ったグレーがここの雨みたいなのがイヤで、スポンジにボディジェルを山盛りに絞ってごしごしからだを洗ってお湯を泡だらけにして、雨色のお湯を泡の下に隠した。バスタブの栓を開けてお湯を落としながらシャワーを一番強くして体中に打ちつけてたら、オカシナコトになってしまって気持ちよくなって気持ちよくなって気持ちよくなって、イッた。雨の日は、わたしはますますオカシクなる。 レイバーデーのお休み。今日も雨。仕事だった。 レイプされて運び込まれた患者さんを診る。綺麗なドレスを着てシルバーのネックレスを付けたままだった。顔も体も痣だらけだった。声が出ない。動けない。食べられない。水も飲めない。一言ずつゆっくりゆっくり、出来るだけ優しい言葉で接する。体中のエネルギーをぎゅうっと凝縮させて、わたしの口から出る息すら彼女にそれ以上痛みを与えることのないように、静かに、だけど安心をあげられるだけの強さは保って。妹らしい女の子が、お兄さんらしい男の人の胸にしがみついてずっと啜り泣いてる。ナースステーションに戻ると手が震える。犯した男を殺してもその男は天国に行く。殺したわたしも天国に行く。この世はそういうところ。 大家さんのフランクがベイクト・ズィッティとチキンとオリーブのお料理を持って来てくれる。「半分は明日食べればいいよ」って言ったけど、一週間持ちそうなくらいの量。食後にたばこを吸いに外に出たら、フランクもたばこ吸いに降りて来た。雨は小降りになってた。車の保険の話をして、明日フランクが手続きを手伝ってくれることになった。エスプレッソを煎れてくれるって言うからごちそうになりに行く。本物のエスプレッソ。レモンの皮をナイフで削ってカップに入れてくれる。スターバックスとはワケが違う。おいしい。でもわたしはスターバックスで11年生きてるから、スターバックスも好き。って言ったら、あんなのは水だって言われた。イタリア人はスターバックスのエスプレッソなんか認めない。イタリー街にまた行きたいとふと思う。ちょうど一年くらいになる。カリビアン・パレードの少し前だった。 カダーが新しいアパートに移って、電話をくれる。 どんなアパートか教えてくれる。本棚を組み立てながら「引っ越しのライブ」とか言って、やってることをイチイチ解説して笑わせる。「今右手だけで棚付けてるところ」って、荒い息づかいと一緒にウッとかアーとか「shit!」とか聞こえる。「You sound sexy」って笑ったら、「左手で何握ってると思う?」。黙ってたら、「バカ、電話だろ」。それから、「ちょっと待ってよ、これから肝心なとこだからライブ中継中断。この音楽いいから聴いてて」って、アフリカっぽい音楽を電話で聴かせてくれる。「聞こえる? 聞こえてる? じゃあそのまま待ってるんだよ」ってカダーはしばらくいなくなる。音楽を聴きながら、あの人みたいってちょっと思った。あの人の曲長いこと聴いてない。聴きたい。送ってくれた新しい CD、戻って来たって言ってた。聴きたい。聴きたいよ。聴きたい・・・。 エッチなこと話してはゲラゲラ笑い合う。そのうちカダーが「服脱いでごらん」って言い出す。今日は嫌がらないでいてあげる。嫌がらないで、昨日シャワーでイッちゃったこと笑いながら話して、服を脱ぐ。今度はわたしが実況中継してあげる。「今パンツ脱いだところ」「今シャツ脱いでるところ」「今下着だけになったところ」。「今左手だけでブラ外してるところ。右手で何してると思う?」「電話持ってるんだろ?」。クスクスケラケラ笑いながら、「見たい。触りたい。キスしたい。舐めたい。それから・・・くわえたい。それから・・・食べたい。それから・・・奥まで呑み込みたい。それから・・・」。吐息を混ぜていくらでも言ってあげる。「ビッ・ディ・ズィッ・バック。あってる?」。カダーの国の言葉で言うと、カダーが笑う。「You sound sexy」。「ビッ・ディ・ズィッ・バック、ビッ・ディ・ズィッ・バック。ビッ・ダ・クースィ?」「Yeah」。わたしはカダーの「Yeah」が好き。それからカダーがわたしに命令する。命令されるままに指を動かして、声をあげる。 「Do you miss me?」「Yeah...」「ちゃんと言って」「Yes...I miss you」「I miss you too, カダー」。 わたしは勝ったような気持ちになる。だけど負けたような声を出して、カダーのおやすみにおやすみを返す。雨の日の子犬みたいに、きゅうんと濡れた声で。 雨の日だから、わたしはオカシイ。こんなふうにオカシイならカダーは許してくれる。 -
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