説明なんか要らない - 2002年09月01日(日) 「新しいとこ、どう?」。あの人は聞いた。黙ってたらまた、「ねえ、どう? 新しいとこ」。全然変わんないあの声で、まるで昨日まで毎日電話してたみたいに。「そんなことしか聞かないの?」。わたしは拗ねた声でそう聞く。 2週間以上も電話しなかったのに、なんでそんなに平気なの? あーあーもう。あんなにあんなに我慢してたの、何だったんだろ。 あの人がまるで平気そうで、力が抜けた。なんでかわかんないけど、ほんの少ししか悲しくなくて、それより安心して、なんだか愛おしくなって可笑しくなってくる。だけど拗ねてるふりして絡んでた。 あの人は話をはぐらかしてる。 そのうち誰かといるんだって分かった。 しばらくして誰かに何か言って、それから急に普通のあの人に戻った。 「ヘンだっただろ? 仕事の人と一緒だったから。」 「ヘンだった。別に電話しなくてもどうでもいいんだって思った。」 「違うよ。前の番号にかけたんだよ、何度も。」 「ほんと?」 「ほんとさ。何度もかけた。もう繋がらないってわかってからも。」 「新しい番号、テープで言ってなかった?」 「え? 新しい番号テープで流れるの?」 「そうだよ。」 「・・・そこまで行き着いてない。テープの声聞いてすぐ切ってたよ。教えてくれないの? 教えてよ。」 やっぱり忙しくて、「もう仕事に戻らないと」ってあの人が言って、わたしは「やだ、だめ」って甘えて拗ねてわがまま言ってる。「ちゃんといっぱい話がしたい」って、もう泣きそうになってる。わたしも、まるで昨日まで毎日電話してたみたいに。 一体ほんとにわたしって、何のために電話するの我慢してたんだろう。昨日はいい子になれると思ってた。カダーの電話で頑張ったから、そのままあの人にも素直で聞き分けのいいわたしになれる気がしてた。クールを装える気さえしてた。カダーにするみたいに、うんと甘えたい気持ちも泣きたい気持ちも抑えて。大好きな気持ちさえ抑えて。 出来るわけない。出来るわけなかった。 3週間我慢したって、2ヶ月我慢したって、1年我慢したって、きっとおんなじ。 わたしはあの人にどんな気持ちも隠せなくて、だからいい子になんかいつになってもなれない。そしてあの人は、わたしのどんな気持ちも受け止めてくれて、どんなに時が経ってもわたしの愛を信じてくれてて、いつが来てもいつでも真っ直ぐな愛をくれる。 変わらない。絶対に変わらない。「この気持ちは変わらない」。あの人が言ってた言葉の意味が分かる。それは、小難しい哲学でも考え抜いた理屈でも甘い愛の言葉でもなくて、ただ、確かなこと。理由なんかなく、確信出来ること。 ねえ、カダー? 愛するってことに、説明なんか要らないんだよ、きっと。 謎解きみたいに、解いて行かなくてもいいんだよ。 それともそんなこととっくに知ってて、だからわたしを愛せないって言ったの? わたしへの想いには説明が必要だから? わたしはあの人にまた電話番号を教えなかった。 待たないことにもう少し慣れてみよう、なんて思ってるんじゃない。 悲しんでくれるかどうかであの人の想いを試したかったわけでもない。 前の番号にかけて AT&T のテープに録音された新しい番号をあの人が書き留めてくれるのを、待っていたいんでもない。 ちょっと意地悪したかっただけ。 大好きだから。 -
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