一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。


My追加
目 次過 去未 来


2004年02月02日(月) 第二部   その9


第二部   その9


会長は立とうとして、隣に座ってる息子さんに止められた、息子さんは父に言った、

「一度も釣ってない一平さんに、またつらい思いをさせる事になるで!」 

会長は・・・

「このチヌ研に一年もいて、一度も釣ってないって、ワシは自分が許されへんのや!何の為のチヌ研なんや!」

「みんなで知恵を出したらなあかんのや!行く度に坊主(一匹も釣れない事)で、辛かったと思う!」

「ずーっと一年間、みんなの釣った事の自慢ばなしばっかり聞いてきたんやで、よく頑張ったと思う!」

息子さんが・・・

「みんなわかってるよ、最近、みんなで一平さんの店に食事に行って帰りに

 は、必ず一平さんを釣らせなあかんで!と、話して帰ってた・・・みんな教

 えたくてウズウズしてたんやで、やっぱり最初のチヌは自分で仕掛けて釣る

 事に意味があるんやと思ってた。みんなそうやで!一平さんの横で釣る人は

 自分の事より一平さんのことが心配でソワソワしてた。こんなこと一平さん

 の前で言いたくなかった・・・」

私は、ガーンと頭を打たれた!自分の商売のことしか考えてなかったし、みん

なが店に来てくれてた事に満足してた自分がとても、恥ずかしい思いがしたの

を、今でも憶えています・・・。

みんな、素晴らしい釣り人たちでした、そんな大きな思いやりの中で楽しませ

てもらった事に今でも感謝しています。

あれから・・・店も人手が足りなくなって、結局、チヌ研を辞めざるえない事

態になってゆきました。

時々、その頃の連中が今でも食事に来てくれます、必ず言うことは・・・

「最初に逃がした、あの・大きなチヌは、あれは、もったいなかった!」


       (ありがとう!忘れないで下さいよ・・・涙)




           またこの次









一平 |MAILHomePage

My追加