| 2006年12月28日(木) |
脳の中は1000億人の対話 |
朝出勤したら、昨日本屋が置いて行ったらしい図書館用の雑誌が数冊。。。 その中の「ニュートン」が脳の働きを特集していた。 いつもなら、今度読まなきゃな、、と思ってそれっきりになるのだが、 幸いきょうは追試の答案を待つだけで、2時間以上ゆとりがあるので読んだ。
大学時代に、一般教養で取った生物学が、脳の働きについての講義で、 たいへん興味深かった。 卒業後も大体のところは覚えていて、生徒に勉強の話をする際に、 簡略した形で説明することもあった。 しかし、そうしょっちゅう話すことでもないし、だんだん曖昧になった。 2〜3冊の本を熱心に読んだこともあるが、 知りたいことや確認したいことが、どうも腑に落ちない感じだったので、 大学時代に知り得たことが曖昧になっていくままになっていた。
ニュートンの特集は、見開き2ページいっぱいにリアルな図が広がり、 その上に白抜きで解説がされていて、図の中に各部名称も書かれている。 その見開き2ページごとに、実に要領のいい筋立てでテーマが展開し、 実にみごとな説明である。 せっかくだからきょうはメモしておくことにする。
脳には1000億のニューロン(神経細胞)がある。 世界の人口が65億だとすると、世界の人口の15倍ほどということになる。 脳のニューロンは、本体というべき「細胞体」から突起が何本も出ている。 その突起の1本は「軸策」と言って、信号の送り手となる。 その他の何本かは「樹状突起」と言って、信号の受け手となる。 1本だけの「軸策」は、枝分かれしつつ、 他のニューロンの「樹状突起」につながる。 そのつなぎ目を「シナプス」と呼び、その数はひとつのニューロンにつき 数千から数万にも及ぶという。。。
・・・うーん、、気が遠くなるような膨大な話だ。 ひとりが、数千から数万人と関わりをもち連絡をとっているようなものか? このひとつのニューロンが、細長い軸策などを含めても1ミリ程度だと言う。 たった1ミリ四方の範囲の中で、万単位の結びつきとは。。。
シナプスが、軸策と他のニューロンの樹状突起のつなぎ目だと言っても、 実はシナプスには隙間がある。 ここが、大学時代最も興味深かったところで、その隙間を物質が通ることに よって、ニューロンの回路が成立するのだと言う。 その結びつきが強固になれば、より強い記憶となる。。。
この点をもう少し詳しくまとめておこう。
ニューロンの信号には「電気信号」と「化学信号」があり、 「電気信号」は軸策と樹状突起で、「化学信号」はシナプスで働く。
信号の送り手である軸策は、図で見ると、つながったままの腸詰めみたいな 格好をしていて、ソーセージとソーセージの間に開閉式の複数の穴があり、 その穴を「ナトリウム・チャンネル」と言う。 この「ナトリウム・チャンネル」は、軸策の中に生じた電流を感知して開く。 すると、電気を帯びたナトリウム・イオンが細胞の外から流れ込み、 軸策内部に電流が発生する。 するとまたその先のナトリウム・チャンネルがそれを感知して開き、 ナトリウム・イオンが流れ込み、、、という連鎖によって、 ニューロンの中の電気信号は、長い軸策の先端まで、 弱まることなく伝達され、シナプスに送られる。
軸策の先っぽには「カルシウム・チャンネル」という開閉する穴と、 グルタミン酸などの化学物質を蔵した「シナプス小胞」が複数ある。 軸策の先っぽまで電気信号が達すると「カルシウム・チャンネル」が開き カルシウム・イオンが、外から軸策の先端内部に流れ込む。 すると「シナプス小胞」が先端表面に運ばれ、 化学物質をシナプスのすき間の部分に放出する。
対岸の樹状突起側には、「受容体」という開閉式の穴が待っている。 軸策先端から放出された化学物質が「受容体」に結合すると穴が開き、 細胞外のナトリウム・イオンが流れ込み、 こうして、電気信号が次のニューロンに伝達されるというわけだ。
このように、シナプスというすき間を飛び越えつつ、 次々にニューロンからニューロンへと信号がつたえられ、、、と、 単純に進んで行くわけではないようだ。 ひとつのニューロンには、数千から万単位の信号がひっきりなしに集まる。 だから信号の量が一定量を越えないと「発火」せず、無視され、 次のニューロンに送り出されることはない。
・・・こうして、書いたり読んだりしている間にも、 このめまぐるしいニューロンの活動が私の脳の中で行われているわけだ。 こういう不思議で精密な機械を、いったい誰がどうやって創り出したのか? 想像を働かせれば働かせるほど、不思議の念にくらくらして来るのだが、 そうしている間もやはり、この活動を彼らは続けてくれているわけだ。。。
さて、こういう基本的な脳の働きを明確にしつつ、 もっとも興味深いのは、記憶と忘却のメカニズムについてなのだが、 今夜はもう長くなってしまったので、またの機会にまとめるとしよう。
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