TENSEI塵語

2006年11月08日(水) 生き物たちの知恵

昨日・一昨日見た「皇帝ペンギン」の余韻がまだ残っていた。
北海道で発生した恐怖の竜巻の報道に接しても、
一方で「デー・アフター・トゥモロー」の前兆かと不安を感じつつも、
猛吹雪の中で、身を寄せ合って寒さをしのぐペンギンたちに思いを馳せた。

生き物のドキュメンタリー番組を見るたびに驚かされる。
その不思議さに心打たれ、感動する。
身を守り、種を存続させるさまざまな工夫をさせるのは、どんな能力なのか?
また、そういう工夫を子に伝える方法は、
決して教育と学習と言えるほどのものではない。
繰り返し教え、学習するわけではないのに引き継がれる、
その能力はいったい何によるものなのだろうか?

皇帝ペンギンの場合だと、まず彼らは一定の時期に営巣地に集まる。
この地は、苛酷な条件は変わらないが、
地面となる氷の条件や外敵から身を守る点で、稀有な好条件なのだそうだ。
生まれたペンギンは、まだよちよち歩きの時から4年間海で生活するが、
大人になると、ちゃんとこの営巣地への行進に参加する。
そうして、配偶者を求め、出産・子育てに専念する。
我が子を無事出産し、守り育てる術もちゃんと心得ている。
オスは、妻がが産卵を終えてから食料を得る旅に出ることを知っているし、
妻が帰るまで、孵化して生まれた子を育てなければならぬことを知っている。
その努力たるや、敬服に値するものである。

特典映像では、アデリーペンギンの出産と子育てが描かれていた。
こちらは南極の春になると集まってくる。
皇帝ペンギンとは対照的に、暖かくなってから、山の上の岩場である。
そこで、小石を集めて巣を作る。
この小石集めにはかなりのご執心で、こっそり留守中に盗んだりもする。
この小石集めのおかげで、生まれた子を雪解け水に濡らさずに済むという。
配偶者を迎える前からオスが熱心にやっているこの小石集めも、
種の保存に欠かせない知恵だというわけだ。

こういうことを、彼らは言語を用いて論理的に考えたわけでもないし、
言語を用いてさんざん子どもに言い聞かせ教育したわけでもない。
なぜ彼らは、言語も理性・悟性もなしにこのような工夫を編み出し、
それを子々孫々に伝達することができるのだろうか?
こういう自然界の知恵の仕組みは、不思議だ。まったくもって、不思議だ。

人間は、言語・知性・理性・悟性、、、すばらしい能力を得た。
しかし、知恵は次第に退化しつつあるようだ。
さまざまな理屈をこねくり回し、自滅への道もたどりかねない。
いや、自滅にとどまればいい方で、知恵に満ちた自然界も破壊しかねない。自然界から見たら、人間ほど愚かな存在はないのかもしれない。


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