TENSEI塵語

2006年10月06日(金) 古典文法教育

全日制の学校で教えるようになってから23年目になったわけだが、
現代文でも古典でも、結局のところ国語の授業では何を教えるべきなのか、
いまだにちゃんとした答えを出せずにいる。
生徒たちと関わっているうちにわからなくなったのである。
このことについて書き始めると、これでひとつの大きな話題になるが、、、

古典の授業でどれくらい文法に力を入れるべきかについても、
長年の悩みになっている。
それが悩みになったのは、それだけ生徒が理解してくれないからである。
動詞の活用さえなかなか定着しないし、助動詞の活用も覚えられない。
努力して理解しようとする生徒もいるから、
一握りのわかる生徒とちんぷんかんぷんの生徒の差が大きくなる。
実は動詞の活用や、助動詞の意味と活用を暗記できたところで、
それらが文章の中でどう生きて働いているかがわからなければ意味がない。
だからそれらの暗記は、ほんの初歩の必須であって、
こんなところでつまずいていては、文章の理解に入るのは至難なのだ。
ところが実際の話、2年生になっても3年生になっても、
まったくわからないまま進級している生徒がおおぜいいる。

若いころは、きちんと順序立てて教えれば理解してもらえると思い込んで、
工夫してプリントを作って教えたものである。
確かに、その教えた時にはちゃんと理解はしてくれるようである。
問題は、その理解が長続きはしないということである。
生徒たちの多くは、復習して自主的に覚えようとしないからである。
我々は、生徒たちのそういう習性を見落としがちである。
そこでしばしば小テスト攻勢に入るわけだが、
結局は、主体的な努力派とぼんやりな怠惰派の差を広げるばかりである。

いっそのこと、文法はなしにして、単語と文章の内容さえ教えればいいか、
とか、文法は後回しにしてまずは古文の音読に徹しようか、とか、
いろいろ試みたが、どうも具合が悪い。
私は高校時代、勉強というよりは趣味のように古文の音読をしていたが、
生徒たちはそう積極的に音読などしない。
それに、1年生の教材になっているような古文は、
そう内容的におもしろいものではないし、味わい深いものでもない。


10年ほど前に私は、まず動詞の活用を教える際の大革命を行った。
まず、何はともあれ、「かきくくけけ」から入ることにした。
それを口真似させ、サ行で言わせ、タ行で言わせ、、、
まず、耳と口でこのパターンを覚え込ませる。
次いで「ききくくるくれきよ」を口真似させ、サ行、タ行、、、
次いで「けけくくるくれけよ」を口真似させ、サ行、タ行。。。
それに慣れてから、実際の動詞の活用に入り、しばらくは毎時間練習。
パターンとその判別に慣れてきたら、変格活用も耳から教えて口真似させる。
口真似で全員が言えるようになるまで、書くなと言う。
また、この段階での画期的な点は、上一段・下一段を教えないことである。

これをやり始めて、動詞の活用についてだけは従来より定着したが、
助動詞や形容詞など、まだまだ不徹底な課題が残っていた。

現任校の1・2年生の古典の授業は、2クラス3分割の26〜8人制である。
今年、再び1年生の担当になったので、
今まで不徹底だったところを、開き直って徹底してみた。
要するに「耳と口から」を今までの数倍も徹底することにしたのである。
動詞の活用も、助動詞の活用も、形容詞の活用も、
耳で聞かせて口真似をさせるだけでなく、
授業の最初の15分くらいは、その復習で反復練習である。
順々に言わせていくので、これだけで生徒は2〜3回当たることになる。
人が当たっているときに勝手なおしゃべりをしない調教が必要である。
教材の文章は、活用語だけ品詞に分けて、活用を全部書かせ、
その中の何形であるかもはっきりさせる。
それもまた、ひとりずつ言わせながら進めていくのである。
最近は、その反応が非常に早くなってきた。

同時進行の他の2講座の先生たちは従来どおりに進めているので、
私の講座は遅れがちで、たいへんである。
しかし、基本的事項を問う学年統一の小テストをやってみると、
6割の合格ラインで不合格者が4割くらいいる中で、
私の担当クラスの不合格者はほとんどいなくて、
不合格だとしてもほんの1、2点足りない不合格である。
基本的なことはマスターしてくれつつあるらしい感触が最近の励みである。
こういう感触が長年得られなかった。

語学は「耳と口から」「反復練習と応用練習」を、
古文を教える上での原則にして、もっと広げようと思う。
昨日と一昨日書いた語学教育についての考えは、
きょうのこの話を書く前置きのつもりで書いた。

古文は、範疇としては日本語なのだけれど、箇所によっては、
英語やフランス語などの外国語の文章よりも難解な異国原語である。
この認識は大事だ。
しかし、今使っている日本語のもとのあり方の記録であることも確かだ。


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