こがらしの夜中、
吹雪の夜中、
長雨の夜中、
蚊、蠅のまつわる夜中、
月の夜中、
そーゆーもろもろの夜中、
きまって
俺の耳に、俺のからだに、
何百万の呻き声がきこえて来る。
何百万の憎悪の声がきこえて来る。
耳おすますと
とーい何千年昔の亡霊の声もする
それらわきまって
飢餓のうめき声であり
噛み合いのうめき声であり
おれだけわとゆーうめき声であり
動物に似たうめき声でもある。
それらわ 遠く近く
やがて近く潮騒のよーに
やがて阿修羅のよーに
ぎりぎりと俺の体おしばり上げてしまう
そーゆー何万の
生きてる者のうめき声
そーゆー何万の
死んだもののうめき声
それら
老若、男女の区別なく
何万とゆーうめき声がきこえて来る
それら声々の中にちち、ははの声もかすかにきこえる
たしかに弟妹たちの声もしている
これらの声々わ、
世界中、何億とゆーこーゆー種類の声々となって
烈しく俺にぶつかって来る
俺わ倒れまいとして体中に力おこめる
おお 又今宵も
たしかにきこえて来るあの声たち
俺わこの体が小刻みにふるえ
鉄のよーに固くなり
やがて火のよーに燃え初める
おお
今、きこえている
きこえている
この真夜中、怒涛のよーに--- ---。