台に載せた原稿を足で操り、一言一言をかみしめるように話す白井のり子さん(福岡県那珂川町で)
サリドマイド児の日常を描いたドキュメンタリー映画「典子は、今」(1981年、松山善三監督)に主演後、約21年間取材を断ってきた白井のり子さん(44)(熊本市在住)が、読売新聞のインタビューに応じ、3月いっぱいで勤めている熊本市役所を退職し、講演活動に専念する準備を進めていることを明らかにした。
白井さんは、サリドマイドの影響で両腕に障害を持って生まれた。右目の視力もほとんどない。80年、サリドマイド被害者として全国で初めての公務員になった。その後、松山監督から「多くの障害者が、あなたを見て元気になるような映画を作りたい」と申し出があり、「自分に与えられた使命かもしれない」との思いで承諾した。
ところが、映画出演後、全国から寄せられた手紙が1か月3万通にのぼるなど生活は一変。いわれもない中傷も投げかけられ、結婚して子どもが生まれたこともあり、講演、執筆、取材などの依頼をすべて断ってきた。
しかし、子育てが一段落した40歳過ぎから心境に変化が現れた。自分を客観的に見つめられる余裕ができ、「映画を見てくれた人たちの感想を素直に受け入れられるようになった」という。「映画の典子じゃなく、今の“のり子”を知ってもらえばいいのかな」と、昨年8月、初めて講演依頼を引き受け、これまでに九州で7回講演した。白井さんは「これからスカイダイビングなど新しいことにも挑戦したい」と話している。
(読売新聞) -2006年2月6日23時19分更新