たりたの日記
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昨日の日記の続きを。
カジミーロ・ド・ブリトー氏の詩を朗読するにあたって、休憩時間に、ブリトー氏に詩をどのような音声で朗読するのか始めの部分を朗読していただいた。ポルトガル語は全く分からないので、音と言葉との関係を想像する事ができないし、日本語にした時の語感と原詩のそれとはまた違うと思ったからだ。訳詩について分からない部分があったので、英語で、詩についていくつかのやりとりをし、詩の言葉のニュアンスや詩人のその詩に対するパッションをいくらか掴む事ができた。
舞台ではわたしがどう朗読するかという事の前に、まずブリトー氏のポルトガル語の朗読をまず聴き、その抑揚やニュアンス、またその音声から触発されるイメージを日本語の朗読に生かすことに努めた。 だから意識して創り上げた朗読ではなく、その場で偶然に生まれる即興のような朗読になった。 ブリトー氏の朗読がかなりドラマティックだったので、日本語の方も負けずにドラマティックな読みをしたように思う。
二つ目の詩も先に記した『転落の書』と同様、預言書的な隠喩に富んだ詩だ。その語るところは霧の向こうにあるように見えない部分もあるのだが、そこにある空気はとても心地良い。
断片77『良き死の技法』
カジミーロ・ド・ブリトー 松岡秀明 訳
かつて愛しまだ愛する人は 人目を忍んだ歌を生涯聞くだろう その歌を聞き その歌を歌うだろう 世界の熱を放出させる 動物の呼吸と木々を 西洋からそして東洋から運んでくる風にむかって かつて愛しまだ愛するひとは 大地と空をひとつにする女たちの巣を 一生の間歌うだろう そして骨と石を浸す 乾ける水の力を目の当たりにするだろう 大地を骨に 骨を見捨てられた肉にかえることは 偉大な作業なのだ かつて愛したひとは 何も知らない そして生涯堕ちていく 知恵でないとしたら その力はなんなのだろう 見えない口の知恵 肉の酒である水の謎の知恵 母の巣へと戻る鳥の知恵 かつて愛した人は 生涯愛するだろう
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