たりたの日記
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2006年06月15日(木) 雨の匂い

自転車を走らせるうちに雨が降ってきた。
雨の匂い―
思わずあたりを見回す。
匂いが立ち込めているのは確かことなのに、なにか心もとない。
遠い記憶の中の匂いが呼び起こされ、なつかしさに掴まれる。

ようやく雨をかかえている重い雲が
いよいよ持ちきれずに雨をこぼし始める時の、
まだ道がすっかり濡れてしまわないうちの、
僅かな間にだけ漂う匂い。
その匂いを、まだ人と分かち合ったことがないと思った。

「ねえ、雨の匂いがするでしょう」
そこに誰かがいたら聞いてみたい気もするが、
ひとりでいなければ気にも止めないほどの匂いなのだろう。
雨の匂いはいつも変わらず、それに気づいた今日がむしろ特別な日だったのだろう。

匂いが消えてしまわぬよう、雨合羽を着るのをやめて
雨に濡れながら自転車を走らせた。
いつもは雨に追いかけられるように走るのに
今日は雨を追いかけるように走っていた。



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