詩のような 世界

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2003年02月10日(月) The cat knows

色のないフェンスが

無機的に視界を遮っている


僕はただ笑う

笑っていれば攻撃されることもなく

笑っていれば受け流されることを

いつからか知っていた


誰もいない空間で

見えないフェンスを両手で掴み

涙を流しながら笑いつづける僕


薄い唇が乾いていくのを

フェンスの上を歩く猫が見ている

にゃっは、と鳴いた

馬鹿にしているともとれるその様は

僕を苛立たせた


猫は手を叩いて僕をからかう

僕も真似して手を叩いてやった

猫の目の前でぱあん、と思い切り叩いた

案の定猫は驚いてフェンスから落ちた


気がつくと僕の手の中に猫がいた

柔らかな白い毛が震えている

ごめんね

ごめんね


僕はこれからおまえと一緒にいるよ

唯一僕を知ってくれた

かけがえのない友だち


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