東野圭吾さんの原作を読んだのが先月でした。 ちょうど、映画化されるとわかった頃にタイミングよく文庫化されて、本屋でみつけたとたん、手に取っていました。
両親はなく、二人きりの兄弟。 高校生の弟を大学にやるため、引越し業の仕事をしていた兄は、働きすぎて腰を痛めてしまいます。 このままでは、弟は大学をあきらめてしまうと焦った兄の心に、ふと魔が差します。仕事で出入りしたことのある、裕福な一人暮らしの老女の家に忍び込み、お金を手にしたところ、留守だと思っていた老女が現れ・・・ 騒がれて動揺した兄は、老女を殺害してしまう。 あっけなく警察につかまった兄、そこから弟の「犯罪者の家族」としてのつらい日々が始まります。
事件を知ったとたん、アパートの管理人からは出て行くように言われ、アルバイト先でも兄のことが知れると、相手の態度がよそよそしくなる。 大学をあきらめ、条件のよくない仕事につき、ひっそりと生きようとする弟。 兄のことが知れるたびに、厳しい現実を突きつけられる。 そんな中でも、思いがけない才能に気づいたり、恋をしたり、若者らしい喜びを見出しかけます。 けれど、その度に犯罪者の兄がいることが決定的な足かせとなり、夢を断念させられる。 いつしか「あきらめる」ことに慣れて行く弟。そして、月に一度、欠かさず届く兄からの手紙を、疎ましく思うようになります。
犯罪者は刑務所に入り、決められた年月をかけて罪を償う。 その家族は、世間の目と常に戦い続けなくてはならない。 とても重いテーマです。罪を犯すと言うことが、被害者はもちろん、加害者の家族にも、どれほどの過酷な運命を強いることになるのか・・・ 必死に生きる家族に、救いはあるのか。
原作を読んだ時も、やりきれなく、悲しく、弟が掴もうとするささやかな幸せが、またもや奪われるのではないかと、切なかった。 映画も、多少の設定を変えてはいるものの、原作の雰囲気をそのまま出していたと思います。
弟の事情を知りながらも、変わらず支えようとする友達もいる。 ぶっきらぼうながらも、小さなやさしさを見せてくれる人もいる。 絶望にひたる弟に、どう生きればいいのか、しっかり考えさせようと諭す人もいる。 そして、事件から長い年月を経て、ようやく弟が聞くことのできた被害者の家族の心情・・・ 様々な人々の複雑な感情が、胸にしみてきます。
どんなに断ち切ろうとしても、途切れたかに見えたとしても、心の奥底で繋がり続けている兄と弟の絆。 ラストシーンの兄の涙は、本当に切なく、でもしみじみと暖かいものが湧いてきて、泣けました。 いえ、映画のあちこちですでにかなり泣いてましたけど(^^;
主役の山田孝之さん、暗い目や沈んだ表情、怒りや涙など、情感豊かに演じていたと思います。 兄役の玉山鉄二さん、意外な配役かと思いましたが、どこか無骨さがにじみ出るような雰囲気が、とてもよかった。 弟を支える女性、沢尻エリカさんは、ちょっとかわいすぎかな(笑) 原作では、もっと地味な女性のイメージでしたから(^^; でも、後半に見せる潔いほどの気丈さは見事でした。
原作同様、あまりにも考えさせられることの多い映画。地味ですけど、いい映画だと思います。
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