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| 2004年09月27日(月) |
Ya-MeerとCristbal |
MCA最新号のWolff-Michael Roth らによる
"Re/Making Identities in the Praxis of Urban Schooling: A Cultural Historical Perspective."
を読んだ。某MLで読書会をやっているのだが、そこで今回の題材としてとりあげられている論文である。テーマ自体はアイデンティティが関係性のなかで作られ、作り直されしていくということを例証したものといった感じのもの。とにかく事例の記述が豊富でおもしろかった。
低所得者層からかよう生徒がほとんどであり、その高校にいる生徒のほとんどが全米の共通テストで下位4分の1にいるという高校での、新任教師と成績トップクラスだが実は問題児であるという生徒Ya-Meerが主な登場人物になっている。
新任教師のクリストバルは、ある程度の教育経験はあるのだが、この高校で教師として認められるまでには長い時間を要した。彼はしだいに教師としてみとめられはじめ、そして、生徒と対話することを通して、この学校で"respect"することが大事という、生徒が暗黙のうちにつくりあげている文化がどれほど大事なのかということを理解しはじめる。
著者は最後のほうで、Ya-Meerのような底辺校の生徒が、実は、教師をもっとも成長させてくれる生徒なのだといっていた。誰も、こんな底辺校の生徒がモデルになるなんて思っていない、しかし、というのである。日本でもアメリカでも同じようなこと言う人はいるもんだなーと妙な感覚になった。
ところで、さっきからなんか小説の紹介文みたいになっているが、これにはわけがある。
論文はほとんど、このクリストバルとYa-Meerという生徒のインタビューあるいは2人の対話のトランスクリプトだけで展開されている。このこと自体、かなり大胆な文体である。そして、びっくりしたのは、その生徒がいまはペンシルバニア大学にいて、自分のインタビューが書かれた論文の共同執筆者になっているということだ。
文化差というものもあるのだろうが、記述対象となっている生徒が、著者として名をつらねるというようなことはなかなかおこりにくい。ましてやYa-Meerという人にとっては、高校時代のちょっと問題発言やら秘密やらが書いてあるわけで、こういうのをちゃんと出版してもよいということになるのはけっこう大変だと思う。
だから、論文の質はともかく、こういう論文が書けたこと自体で、ロスらのプロジェクトはかなり魅力的なものだと感じられたのだった。
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hideaki
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