非日記
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2008年06月18日(水) 思ひ出、発掘。

生活区域はぎりぎり整頓してるがワンルームアパート(?)で、収納場所も殆どないためか家の一角はおおむね常時無法地帯になっている(今『常時無法痴態』と出た。たいへん!ちょっと!私、痴態なんて単語は打った事ないよ!)。例えば、捨てなきゃいけないんだけどリサイクル料金が価格に反映されなかった時代に購入されたPCなので廃棄に何千円も金がかかり手間もかかるのが面倒でいまだに放置されてたり…とかな。平日は夜間洗濯することが多いので、洗濯物はその物置領域にずらーっと吊るしていくわけだ。
で、
その混沌とした領域にジャングルに分け入るように足を腿から上げながら分け入って洗濯物を下ろしていたら、元人様の食器棚で今食器とか本とかテープとか書類とかがランダムに積んである棚の隅っこに皮製の小銭入れがあるのが目に留まった。

あー。そういやこんなんあったっけな。

ひっくり返したらアルファベットでシンガポールって書いてある。それで思い出した。
確か
今から二十年近く前、実家が以前のアパートにあった頃、何階か上階に住んでたおばちゃんがシンガポールの土産物として買ってきてくれたものだった(昔から人から物を貰いまくって生きていた)。そうそう、趣味で皮細工なんかもしてた人で、J子は教えてもらってなんか作ったりしてたな。妙に神秘的な雰囲気の娘さんがおられ(所謂「近所の憧れのお姉さま」的な)、その娘さんが結婚した時に「もういらないから」と実家に置いていったという漫画や小説をごっそり譲られたこともある。その中にペーパーバックのぼろぼろのヒストリカル・ハーレクインが一冊混じっており、それが私が生まれて初めて読んだハーレクインだったんだよ。ハッピーエンドのベルバラみたいで思ったより面白かったのよそれが!
なまじ同年代との心的交流が薄く価値観の交流があまりなかったのもあり、「美人で神秘的でかっこいい憧れのオネエサマが読んでいた」所為でうっかりスムーズに足を踏み入れてしまったのだ。「ええ!?あのお美しいオネエサマがこんな本を!?…でも読んでみたら結構面白いわ」という。

何ゆえだったか何度か家にお邪魔した事もあったが、入ってドアをあけたら狭いアパートなのにいきなりグランドピアノがリビングのど真ん中にドカーンと鎮座してて、なんかとにかく「スゲエ!つうかこんなとこにグランドピアノ置くか!?どこで暮らすんだよ!?」と思った記憶がある。旦那さんはものすごーく地味でものすごーく寡黙な人だったが、奥さんは日本より東南アジアなんかが好きらしくインドネシアとかシンガポールとかよく行っていた気がする。で、六畳のダイニングキッチンにドカーンとグランドピアノのみ置いて、後ろにガバーっとインドネシアの布をたらしてた気がするな。「旦那が何も言わない人ので趣味に走って好き勝手しまくってます!」って感じだった。歳食ってもひたすら自分の人生を愉しんでる感じの無邪気でおおらかで飾り気の無い人だった。

しみじみ言えば、たぶんただでも人付き合いが不得手でストレスに満ち溢れていたJ子にとっては、素直な気持ちで気を張らずに付き合える生涯でも大事な友達だったのだろう気がするな。近所に家を買ってアパートを出て行った後は結構すぐに亡くなったんだが、その時は、子供心にもなにげにJ子を不憫に思ったような覚えがある。

まあ、そんなような事をざっと思い出したわけだ。

これを貰った時には、ハートや星型が掘り込んであるのが私の趣味でないものの、しかし異国に憧れがあり(主にヨーロッパに憧れていたが異国情緒溢れるものはなんでもかっこよさげに感じた)、これが遠い国から買って来られたものだと思うと「わぁ…」って気持ちになったような気がする。匂いとかね、貰った当初はなんか向こうの匂いが強くしてて。「おお、これが異国の…」とくんくんしてみたり。したような気もするな。
たぶん嬉しかったんじゃないかなあ?と思われるよ。

そういう事も思い出してみた。

仏教だか民間信仰だか忘れたが、現世の人間が亡くなった人の事を思い出したり話をすると、あの世の人にはそれがわかるというよな。現世の人間が食事をとるように、あの世の人間にはそれ(現世の人間の思い)がエネルギーになるんだか単に気持ち良いんだったか元気になるんだったかなんだったか忘れたが、だから亡くなった人に対して生きてる人間ができる事はそうやって時々思い出してやる事だとかなんとか言ったものだ。
そんな話を思い出し、こうやって故人をしみじみ思い出すのが、たぶん向こうは何気なくやった小銭入れ一つなのだから、人の縁は不思議なものというか、小さなことでも事実は消えないものだなと思う。
もしそれが真だとすれば、あの世で故人のFさんは「あの時のあの財布で思い出された!わあ、随分昔の話ねえ」と懐かしく思ってるのだろうか?

等と思って、
苦笑して、
何気なくパカっと開けてみたら、
小銭入れのくせに、折りたたまれて千円札が入ってた!(しかも夏目漱石だった)

何故だか知らんが自分が入れたはずなのに全く覚えてないので、絶妙に妙な気分。タイミング的に、まるで故Fさんにあの世から小遣い貰ったかのよう。
何かの無料冊子の○い欄で今月の金運最高を見た瞬間に「飛行機乗っておいて金運最高もあるか。今月は散財もいいところだよ」と笑って流したのに、突如金運最高を思い出した。


やぐちまさき |MAIL