非日記
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2004年01月30日(金) かわゆいかんじで。

自分で書いておきながら、何故「少なくとも一つの指輪をつかわなかった」事がアルウェンへの慰めになるのか、どうもわからなかったんだ。ただ「常識的に普通に考えれば、死の間際に伴侶にかける言葉なのだから、おそらく慰めの意図があったのだろう」と推測しただけだ。

アラゴルンがアルウェンを好きでなかったとしたら、また変わるんだろうけど。

王位を継承した後もアルウェンに西に行くように暗に促しながら、残るといった事にも特に何も言わない。アルウェンと結婚する為にであるはずなのに、死んでもおかしくないかもしれないことを何回もしている。確かにゴンドールの王にならなければアルウェンと結婚できないのかもしれないが、しかし死んだら元も子もないだろう。「ゴンドールの為に」アラゴルンが献身的で犠牲的に働いているマゾっ子だと判断するものが出ても、おかしくはないんだ。

個人的には、たぶん好きだったんだろうと思うけど。てゆうか、思いたいって奴かもしれないが。私はラブ好きなので、ラブだって事にしたいねん。

内面から外面に至り、言動、価値観、名前に雰囲気から社会的立場に至るまで尽く、アラゴルンはその生涯に何度も激しく変化する。一人の同じ人間とは思えないほどだろう。
ピピンだかメリーだかが「馳夫さんが戻ってきた」という言い方をするのに対して、彼は「私はずっと同じで、変わってはいない」的な答え方をするだろう。

劇的な変貌を何度も繰り返しながら、そのバラバラの生涯を「私は私である」として内的に繋ぎとめ、統合し続けたものはなんだったのか?とすれば、それこそがアルウェンへの想いだったんだろう。
アルウェンと長く離れている時でも、人の目に彼がアルウェンを忘れているかのように見える時にも、彼の中にアルウェンへの想いが無くなったわけではない。
何故自分は今そこにそうしているのか、全ての始まりはアルウェンへの想いにある。その想いを肯定することで、自己を肯定し続ける。だから死ぬかもしれないことを恐れない。彼が恐れるのは、アルウェンを愛していないように見えることでも、アルウェンを気にしていないように見える事でもなく、実際に自分の中にアルウェンへの想いが無くなることではなかったか。
私はだから、アラゴルンは自分がゴンドールを愛しているように見えるか見えないかよりも、実際にゴンドールへの想いが自分に中にあるのかどうかだけを終始気にしたんじゃないかと思うんだが。
基本のパターンがいっしょで。
たとえば、フロドのホビット庄への思いや、ボロミアのゴンドールへの思いが、彼等の人格の核であるとすれば。

もしもアルウェンに「あなたは私を愛してはいない」と咎められれば、彼は「そのとおりだ」か「わからない」と答えたかもしれんと思うよ。それで、エルフ以外皆が目を逸らした中で、ガラドリエルの目を長く見返すことができたんじゃないかな。
アラゴルンがガラドリエルからの視線に目を伏せた最後の問いがあるとすれば、それは「アルウェンを愛しているのならば何故、アルウェンを愛する気持ちを捨てられないのか?」だったんじゃないかな。これには答えが出せない。

ボロミアが真っ青になって脂汗をかいて目を逸らすのも、
「おまえは指輪を欲しいと思っておるじゃろう?唯一無二の強大な力があればミナスティリスを守れると思っておるな?心の底では皆を既に裏切っておるのじゃー」
とか
「このままではゴンドールが滅びる事は間違いあるまい。たとえ指輪を棄却する事に成功したとしても、既に指輪無しのサウロンに滅ぼされかけているゴンドールはどうなるであろうな。うむうむ、指輪があったらー指輪があったらーと思うであろう?そうじゃろー?」

「ち、ちが、ちがう、私はそんな、そんなこと思ってなどー」
等という事ではなく。
それならばボロミアはゴンドールの為と反論でき、それはまさしく彼の言動と自尊心の中核なんだ。「うん!そう思ってるヨ!」と胸を張ってなるだろう。
正解は
「おまえは自分が正しくある為、自らが正義であり善であり続ける為に指輪を盗るまいとしておるだけなのじゃー。たとえミナスティリスが目の前で無惨に滅び去ろうとも、おまえには自己の正当性を打ち捨てることなどできぬ。ゴンドールの為などと言いながら、おうおう!どえらい嘘もあったもんじゃなー。ゴンドールはその『自身が善であり正義でありたい』という醜悪なエゴイズムによって、自ら破滅の道を突進むであろーう」
だったんじゃないんか?

個人的には、もう絶対そうだったんだろうと思うけどね(苦笑)
それで裂け谷を出る際に危険だとわかっていながら胸を張って角笛吹いたような男が、「私は…ゴンドールを?」と迷いはじめたんだろうと。

何世代も、初めの「王の帰還まで代行する」宣言をただひたすら守り続け、その誓約を違える事をしなかった「純白」の執政家だ。揺らぎ真っ直ぐに斜陽へ向う中で、だのに何故だったか?自らの誓いを破り、王の不在に王位を簒奪した逆賊となる事を恐れた。国家として非常に不安定である事が誰の目にも明らかであり、「もはや王は永遠に還らないのでは?」と誰もが思うだろう中で、だのに執政家は自らの宣誓に縛られ続けた。それが自己の肯定の根元であり、ゴンドールの誇りだったからだ。

ボロミアがゴンドールへの想いの強さによって、フロドから指輪を奪おうと自らの宣誓を破ったその瞬間に、千年「純白」を守ったその旗は表面を漆黒に染め抜いた。このままだと「かつて偉大な王だった」キシャーな人達になってしまいます。
が、そしてその過ちに気付き悔い贖罪をしようとした時に、その漆黒の中に星でも木でも良いんだが、光り輝くものが浮き上がる。闇の中に一本の輝く白い木を抱いていたゴンドールの王の旗のようにだ。
わあ、画像で見たらビジュアル的にとても綺麗なきがする。
叔父が「磨けば、あれほどに美しくなる色はない」と黒色を述べていた。そんなロマンティックな事を言う人とは思わなかったが、しかしアタイもそう思うだよ。黒は美しい色だ。何故いつも悪い方になってるのか解せない。

ボロミアって星がどうのとかいう名前じゃなかったかな。知らんけど。
……星?漆黒に輝く星、、、シリウスか?
ああ!考えて見ればソックリ!(笑)

それでアラゴルンは「あなたは打ち勝った」発言をし、ゴンドールの王と同等宣言までかましたんじゃないんか。何に打ち勝ったのか?力の指輪の誘惑ではなく、自分自身にだ。

とすれば、「デネソールはそうではなかった」となるかもしれない。
「ソロンギルは王に相応しくないが、宣誓を守って代行していた政権を譲り渡すしかない」と判断したか、あるいは「玉座を渡すわけにはいかない」と思いながらも拒絶できなかった。もしもデネソールがソロンギルの正体を知らなかったとしても、宣誓に縛られて「俺が王になる」とは最後までデネソールは言えなかった。ソロンギルはそんなデネソールやゴンドールの民を、ガラドリエルのエルフの眼差しに長く耐えうる、その眼で見ていたのかもしれない。「ヌメノールは(僅かながらも)未来を予見する」と伝えられた目だ。
そして何をどう考えて、何があったか知れないが、彼はゴンドールを去り、ボロミアの臨終を看取るまで二度とゴンドールに向おうとはしなかった。
アラゴルンは野伏の王として中つ国の事を考えてはいたかもしれないが、ゴンドールをは既に見捨てていたのかもしれない。たとえミナス・ティリスが落ちゴンドールが滅ぼうとも、サウロンの指輪の棄却にさえ成功すれば、モルドールはたとえどれほど強大であろうが「ただの強国」に過ぎない。「エルフの助勢無しには対抗することさえ未来永劫に不可能。そしてエルフは西方に去る」わけでないのだ。中つ国の希望は潰えない。

それでデネソールはボロミアに答えて「このゴンドールでは千年でも足りぬ」と言ったかもしれない。自嘲だったのかもしれないよな。

指輪の誘惑に「なんとか勝つ」程度なら、それはガンダルフもエルロンドもガラドリエルもアラゴルンもファラミアもビルボもフロドもサムも、とにかく指輪に関わったものは概ね殆どがそうだ。

大体さもなくば、指輪物語はサウロンが勝って、
「ゴンドールなどの国々は皆滅び、エルフは西方へ逃れ、中つ国は不死の王サウロンが統一して永遠に戦争はなくなりました。国は単一なのでモルドールなどという国名もなくなりました。王は一人なので指輪王サウロンなどと言う呼び方も無論しません。神か王と言えば、それがサウロンの事です。王も一人だからです。オークやウルクハイがウキウキと人間狩りにでかけたら返り討ちにあうような危険もごく僅かになり、中つ国はかつて無かったほど大変に平和になりました。人間狩りやホビット狩りなどを一方的に楽しみながら幸福に暮らしています。とっぺんぱらりのぷう(完)」
で、凄くはやく終わってるだろ。

けして「指輪の誘惑に耐えた者が殆どおらぬ」わけでは全然無い。それでは誉めすぎだろ。皆が冷静に考えた結果、「アラゴルンはボロミアを愛してしまって全盲になっているのね!」と、判断してしまうだろう。


勢いよく脱線しすぎて、何を書こうとしていたのか危なく忘れるところだったが、

ダラダラ書いて、アルウェンの「わらわ」版を書き、何故「少なくとも一つの指輪をつかわなかった事が、アルウェンへの慰めになると、アラゴルンは考えたのか」が、やっとふとピンと来たようなきがする。

と言いたかったのよ(苦笑)
それで「わらわ」版で想像し
「…フ、……くッ(笑)アーッハッハッハ!えらい気取ってるなと思ってちっとも萌えず激しくイマイチだったんだが、なんだかアルウェンとアラゴルンのカップルも好きになってきたかもしれないわ。少女漫画を通り越してラブコメディ、ロマンチックを通り越して『おもろい夫婦』だー☆」
と面白がっていたのだ。

まあね。黙って放っておいたって、「手を繋ぐまでが二十年、ベッドインまでさらに四十年」って感じで、しかも締めは「悲しむな」だものな。
いや、アルウェンがその後ロリアンの森をさ迷った事を思い、「そしてアラゴルンが現身の人間としてここへ戻ることは二度と無かったのです」という意味深な記述を鑑み、死に際の「悲しむな」発言をあわせて考えると…、バカウケ。
いや、プラトニック期間が異常に長いとしたって、アルウェンはエルフでアラゴルンはエルフのなかで育ってるから別におかしくもないんだけど、もしも「悲しむな」を本気で言ったんなら(いや、どう思っていようが言うのは本気で言うだろうが)、つまり、アラゴルンはあそこまでやりながらその最期まで、「ものすごい両思いの大恋愛結婚だった」とはあまり思ってなかったんだな!

これはすごい。すごすぎるね。「その意地の張り合いは伝説となり、末永く伝えられました」な夫婦だ。「新婚さんいらっしゃい」に出れるレベルだよ。


やぐちまさき |MAIL