非日記
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2004年01月29日(木) 英雄を見て。

今日、私は、自分は天才だと思いました。
何をとち狂ったかというと、話せば長くなるのだが、発端は、人様に借りた<HERO英雄>を見てからだ。面白かったよ。短編みたいな感じで、直ぐ終わってしまったが。

スゴイ回転率だったよ!

…というのは、置いておいて。

そのラスト付近、DVDの章題で言うなら「刺客たちの最期」の残剣は「なんという意地の悪さだろう!あの一瞬ニヤッと笑うところに壮絶な底意地の悪さを見た!所詮、飛雪はお嬢様だもの。とてつもなく悪い男に引っかかったものよ。女心としては立派な人でなんか無くても良いのにねえ」等と思い返しながら家に帰って来ていたら、コンビニを出たところで突如

…ヒラメイタ!

旭○成のように!
イヒ!

アラゴルンとアルウェンは婚約直後から、四十年近くも深く静かに夫婦喧嘩していたんだッ!(本気)
以下に、その成り行きと原作の隅々に織り込まれた証拠をあげましょう。
<英雄>の、残剣をアラゴルンに、飛雪をアルウェンにすると何を言いたいかわかりやすい。

アルウェンと婚約した後だ。

アルウェンは、駆け落ちするか一つの指輪を捜し出して使おうと言ったんじゃないんか?そしてアラゴルンは「それはいやだ」と言った。そこでアルウェンは「でもそれでは、妾達はこのままでは結婚できないんじゃありませんの?」と言った。するとアラゴルンは「それも仕方なかろう」と言った。
それを聞いたアルウェンは
「なんだとこの野郎!?」
とブチキレた。

アル「いまさら何煮え切らないこと言ってんのよ!?ナニ考えてるか知らないけど、あんたなんか直ぐ死んじゃう人間なんだからね!わかってんの?!」
アラ「おまえ、そういう言い方は無いだろう」
アル「いまさら綺麗事言ってんじゃないわよ!ドブを浚ってでも捜すのよ、力の指輪を!そういう執念深い仕事は得意でしょ!?」
アラ「死んでも断る」
アル「ひどい!アタシを好きだと言ったのは嘘だったのね!?舌の根も乾かぬうちに!」
アラ「なんでそうなる!」
アル「じゃ、指輪を捜しましょう。なあに、あんたなんぞが使ったとて大した事はできまいよ!ホホホ!」
アラ「いやだ。そこまで言われたら意地でも使いたくなくなるわい!」
アル「やっぱり嘘なんだわ!アタシよりプライドの方が大事なのよ!アタシよりゴンドールが大事なのよ!アタシより中つ国が大事なのよ!アタシよりガンダルフが好きなのよー!ホモを隠す為にアタシと婚約したんだー!パパー!アタシ騙されましたー!」
アラ「待てコラ!そんな事誰も言ってないだろうがッ!私が好きなのはおまえだけだ!」
アル「ほざいてんじゃねーッ!
アラ「ゴフッ!」
ミラクルエルフパンチを見舞ってアラゴルンをマットに沈めたに違いない。

アラ「とにかく、たとえあっても、私は使わんからな!」
アル「あっそーですか〜?貴様などどこででも野垂れ死ねばよろしい!妾はもう知らぬ。さらばじゃ!」
アラ「ちょっと待て。婚約指輪のバラヒアの指輪は?」
アル「…ふむん、これはそもそも妾の先祖がそもじの先祖にくれてやったものじゃったな。そもじがどこぞで野垂れ死んだあかつきには悪用を防ぐ為にも、どうせ妾達が回収することになるであろうよ。手間が省けて良い。ちょっと早まっただけの事じゃな!…それとも、もしや妾だけ好きと言ったのはやはり嘘じゃったのかえ?どこぞに人間の女がおるのかえ?ほー、そーなのかえ?それでこれをコッチからソッチへ横滑りにやるツ・モ・リとな。ほほう!どこの馬の骨か知らぬが、その娘子は憐れよのう。一度他の女に贈られたお古とも知らず、無邪気に嵌めるなど、オーホホホッ!良い面の皮…」
アラ「ああそうかい!勝手にしろ!そんなもんいらねえよ!」
アル「では生涯悔いるがよい」
アラ「畜生!この性格ブスー!」
アル「痛くも痒くもないわ。おどれの薄汚く矮小で浅薄な惨めったらしく小賢しい自尊心よりはよほどマシじゃな。妾は歴史的に美しい(ツーン)」
アラ「このアマ…ッ!(ブルブル)」

と、このように、意地の張り合いで喧嘩別れしたのだ。
婚約まで二十年以上はかかってるが、別れるのは十分もかからなかっただろう。

そしてその時の喧嘩とその原因を四十年近く荒野を流離いながら思い返し続けた結果、フロド達と出会った時の自嘲の呟き
「しかしこれだけは認めなければならないだろうが、わたしは、わたし自身の為にも、あなた方に好かれたかったのだ」
に、繋がるのだ。

文庫版「旅の仲間」下1の55ページ
『アルウェン姫のとなりにはアラゴルンが立っていました。(中略)二人は何か話し合っていましたが』

アル「指輪は直ぐここまで来ておるというに、盗ってみようかとも思わぬとはな」
アラ「やめろっちゅうとるだろうが」
アル「…フン、臆病者めが!」ギロリ

『…不意にフロドは、アルウェンがかれの方を向いたように思いました。遠くから向けられたその目の光はかれの上に落ち、かれの心をつらぬきました

よほど凄い眼差しだったんでしょう。
さすがは世界支配を夢見たガラドリエル様が御婆様で、そこで暮らしていただけある。
ああ、指輪を使うのどうのという話をしていたのは、ここかもしれないな。


そして文庫版「旅の仲間」下2の81ページ

『「アルウェン ヴァニメルダ、ナマリエ(アルウェン、あなたは美しい!)」かれはそういうと、ふうっと息をついて』
アラゴルン心の声「心は鬼ババだが…」
『想いからさめたように』

と、続くのだ。
王と王妃になるぐらいだから、二人ともものすごく外面が良いに違いない。

そしてガラドリエル様から「アルウェンからじゃ」と緑の石を渡されて感激してるのは、言うなれば、
「「婚姻届けなどとうに破り捨てたわ!愚か者め!」等と言っていたが、実家に預けていたんだな。まだ捨ててなかったのか」
みたいな。
<幸せの黄色いハンカチ>みたいな。


…というように、水面下でバトルを繰り広げていたに違いない。
エオウィンの時にも
「あなたは自分が何を言ってるのかわかっているのか!?わたしを殺す気か!たとえ生きて帰れても、それはエルフの夕星が日暮れとともに現れるまでの僅かな間になるだろうに!そして漆黒の夜が!あなたは恐れているが、だがそのような恐れ方ではまだ足りぬのだ!」
という気持ちで。


ところで、
映画<英雄>では、脳の働きが、ビジュアルでわかりやすいよう、焔で表現されています。
「む!今まさに無名の脳が活発に活動している!人格の座である前頭葉が感情野の大脳辺縁系の活動を抑制しようとしているところだ!前頭葉が勝つ方に三千点!」
とよくわかる仕上がりです。


やぐちまさき |MAIL