きまぐれをジェット気流に乗せて。...菱安

 

 

悲しみの恋人たち - 2002年02月16日(土)

街路樹の下でうずくまる
白い塊を眼の端で捉えた夕べに
吐く息は紫で
もげかけた腕でパンを握り締めていた男と
視線があった
霧の深いこの街で湿渡る空気とガスが
すべての光りを呑み込み
冷たいアスファルトに座りこむのは
しかし一瞬の躊躇いの後
俺はそうしていた
「この街は好きかい?」俺は彼に話しかけた。
2人視線は彼方で宙を泳ぐも何故か同じに思える。
微かに男の唇が動く気配がしたが
結局の所、どうすることも叶わぬ事を知るだけだった。
好きだっただろうよ。少なくとも彼女が生きていた頃は。
暫くして重い腰をあげてふたりにさよならを告げる。
死んでこの世界を恨むのだろうか?
僕らのつくりあげたこの世界を。
ふと残されたのは、実は取り残されたのは僕のほうだったのだろうかと。
身震いをして振り払う孤独の影、消えることなく。
眩暈のように細い太陽はきっと
何も答えてはくれないし、
探すのに疲れても、歩くしかない。
何処にも無いものを
この手でここに創りあげるために。
そして限りなく残酷になるのさ。
優しい手は本当はいつもその裏側にあるのだから。
断って置くが唯一のスペシャルのためだけに、だ。
僕の”イエス”は、思うほどに広くはなく、
狭窄と混沌に満ちているのだから。
気まぐれほどには、恐らく不確実だよ。





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