-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 やり直しを命ずる

4枚目のカンヴァスが仕上がり、最後のサインを記入したあとで考え込んでしまった。その作品が特別に悪かったというより逆で、予想以上の出来になってしまったからだ。これはもちろん良い意味で。

他の3枚と比べるとどうしてもこの新作が引き立ってしまう。こういうことはよくある。頭で思い描いていたものよりも、予想していない変化が起きて素晴らしい出来になってしまうこと。これは喜ばしい事だが、ある意味でひとつの選択を強いられることでもある。

結局仕上がっていたはずの3枚を書き直すことにした。ショウのオープンまであと2日。はっきり言って馬鹿だ。このままのペースで行けば、期日に間に合うというのに、どうしてもそれが出来なかった。

人に命じられて描き直すのは仕方ないが、自分で自分に命じることはなかなか大変なこと。それで良しとすれば、それで決定だからだ。それが甘えと言うなら甘えだろうし、特権といえば特権だろう。

個展は、見に来たお客さんが全部の作品を見て俺という画家を判断する。作風がバラバラであっては、俺のイメージもバラバラということになるから、やっぱり共通の作風で望むべきだ。

それまでの3枚も、もちろん納得して描いてきたが、この4枚目というのが新しい扉のような気がして、急に過去の3枚が古く感じられてしまった。これは事実だからしょうがない。



2002年03月04日(月)
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