ウォークマンを充電し、曲を入れてみた。 付属していた説明書は、曲の入れ方も再生の仕方もあまり具体的には書かれていなかったので、どちらも殆ど直感便りでやってみる。 ぎこちないながらも何とか曲を入れる事に成功し、「おお、入ってる入ってる」みたいな気持ちになっていたところ、メッセの子からメールが着た。 「Cが危篤状態て連絡ありました。これから大阪にいくことになりました」と。 続けて、「危篤ていうか危ないんだって」と。 俺は「何があったの?命が?」と質問する。 メッセの子は「わからない。親から兄ちゃんに連絡きて。今車で弟のところ向かってる。みんな集めたら大阪向かう」と言った。 続けて、「D君(C君の後輩)も弟のところ向かってる」と。 俺はもう「はい・・・」と返事を返す事しか出来なかった。 メッセの子は「こんなの絶対やだ」とか「まじ無理だ」と混乱している。 俺は「はい・・・」と返事を返すだけだった。 昨日の今日だ。 俺がメッセの子に「もし皆で関西に旅行に来る機会でもあれば〜、C君も一緒に」なんて事を言った数時間後にこうなった。 こんな事が起きたのも、自分が無責任な事を言ってしまった事に対するあてつけだろうか、とも思えてくる。 神の意思だか運命の意思だか知らないが。 こんな形で、メッセの子の周りの『みんな』が、皆の前から姿を消していた『C君』さえも巻き込む感じで関西に集まる事になるとはな。 絶対に、そこには何らかの力や意思が働いているのだとしか思えない。 メッセの子から衝撃的なメールが着たけど、疲れていた俺はしばらくすると眠ってしまった。 多分午前1時過ぎくらいだったと思う。 いつの間にか眠ってしまっていたけれど、俺は午前3時前に目が醒めた。 2時間近く眠ってた。 眠っている間、夢を見ていた。 漠然としか覚えていないが、「自分が用意したものを、本来とは違ったやり方で他の何かに悪用された」といった感じの夢だった。 まさに、今の俺の心境にリンクしたような夢だった。 現在午前3時12分。 メッセの子から、新たなメールはまだ着ていない。
俺の人生の中で、そういった何らかの『意思』みたいなものを感じる事は少なくない。もはや、俺の中では『ありえない事』として認識される事は無くなった。 いや、最初から『ありえない事』だなんて感じた事は無かったか。 俺は生まれた時から、極端なまでに直感気質な人間だもんな。 震災だって、あのタイミングで起きたのが偶然だとは思っていない。 そういった『意思』的なものを感じるたびに、馬鹿な考えなんだろうけど、自分が神か悪魔の生まれ変わりで、これらの出来事は天上界みたいなところに残した自分の半身の意思によるもの、または受肉して記憶を失う以前に俺自身が人間としての自分自身に対してセッティングしておいた奇跡が発動されただけなんだ、みたいなイメージが沸いてくる。 一般的には破綻していると思われるだろうが、たまに、俺は大真面目にそんな事を考える。 あるいは、そういった少年達は俺の価値観の中だけではなく、霊的な意味合いにおいてさえも神聖な存在として定められていて、その子達の都合にとって良い悪いに関わらず、様々な奇跡が起こされるようになっている。そして、それは決して不思議な事ではないのだろう、とか。 現在午前3時29分。
今日は午後16時過ぎに目が醒めた。 結局、今日も学校には行けなかった。 少しすると、メッセの子からメールが着た。 「リュカさん」と。 この瞬間、俺の頭の中で『Cが死んだCが死んだCが死んだCが死んだ』という言葉が繰り返し連呼された。 俺は下劣で軽薄な期待を抱いたのだろうか・・・・・ 俺はメッセの子に「はい」とメールを送った。 メッセの子は「今日の朝Cが亡くなりました」と言った。 俺は「はい・・・」と返事を返した。 俺は、心の底でC君に対してあまり良い感情を持っていなかったところがあると思う。 メッセの子とC君が恋人付き合いをしてた時、C君がメッセの子の携帯を使って俺にメールを送ってきた事があった。 俺はメッセの子とは恋人でも何でもないけど、C君は自分の恋人であるメッセの子が、俺によくメールを送ったり相談を持ちかけたりしている事が気に食わないのだ。 そして、俺はC君にボロクソに罵られ。 C君だって、俺にとってはタイプの少年。 タイプの少年なんだから、それでも悪く思ってはいけないんだ、と自分に言い聞かせ続けてきたけど。だけれど、やはり俺は「攻撃された」なんて下らない理由から、あろう事かタイプの少年であるC君に対して、心の底で怒りみたいなものを持ってしまっていたと思う・・・ デスノートの魅上じゃないけど、俺がメッセの子の周りの人間に対して「死ね!こんな奴が生きている事自体間違ってる!」なんて感情を抱くたびに、今まで3人死んできた。 だから、C君は死んでしまったりしたのかな、とも思えてしまう。 昨日「危篤だ」と聞いた時、もっと心の底からC君の無事を拝んでみれば、あるいは助かったのかもしれない。それを怠ったから死んだんだ、とも・・ C君が亡くなったのは、俺が寝ていた時だろうか。 メッセの子からC君が危ないと聞いたのに、メッセの子の報告を受けた後、俺は「しんどいから」という軽薄極まりない理由で眠りについて。 基本的に、俺は不謹慎で下劣で最低な人間なのだ。 祖父が死んだ時だって、そこまで祖父を憎んでいた訳ではないけれど、誰かの死に対して心の中で「ざまーみろ」とか「やった〜」みたいな台詞を吐いて気持ち的に小躍りして見せなければ気が済まない、なんて自分でも訳が分からない意識を持っていて、 俺は祖父が死んだ時、「あっはっは」とか、上記に挙げた色んな言葉を頭の中に浮かべてみたりしてしまった。 別に、身近な人間の死を喜ぶ気持ちなんて毛頭無いけど、そういう場面に遭遇した時、頭の中にそういう言葉を浮かべてみないと気が済まない、なんて妙な習性みたいなものが根付いてて。 そして、C君の死を聞かされた今回も、同じような言葉を頭の中で浮かべてしまった・・・ 本当に、俺は酷い人間だ。 こんな事、メッセの子にはとても言えない・・ C君の死を告げた後、メッセの子は俺に「信じられない」と言った。 俺は「何があったの(C君の身に)」と言った。 メッセの子は「悪性症候群」と言った。 俺は「?」と言った。 メッセの子は「副作用が重篤化したんですよ」と言った。 俺は「精神病じゃなかったの?」と言った。 C君は、実の兄であるE君の元で暮らすようになっていた。 その時、E君の前で「鬼が見える!」と騒ぎ出すようになった事が原因で、心理療法士である父親に連絡が行き、大阪の精神病院に収容される事になったのだ。 メッセの子の弟には鬼が憑いてる。実際に、B君も鬼の姿を目撃している。 そして、霊能者に見てもらったところ、やはり「これは鬼だ」と言われたそうだ。 そしてC君は、B君が弟君の背後に居る鬼の姿を視認して騒ぎにし出した時よりもずっと以前から、弟君に憑いている鬼の存在を認識していた節があった。 だから、C君が「鬼だ鬼だ!」と騒いでいたのは、精神病による幻覚だとはどうしても思えない。それは、メッセの子も同じだ。 ただ、自分が認識するその鬼が、鬼の居ない場所でも幻覚として見えてしまうようになったとか、鬼の存在に執着し続けるあまり精神が破綻してしまったとか、せいぜいそんな感じなのだと思う。 鬼そのものが実在している事は、これだけその存在が他の人間達から認識されていた事を考えれば、既に明らかなのだから。 E君やその父親は、C君が言う「鬼」という存在そのものが、C君の持つ精神病による架空の存在だと考えていたと思うけど。 しかし、精神病というのは心の病だ。 いくら悪くなったところで、自傷等の行動でも起こさない限り、病気そのものが直接的に本人を死に至らしめる事は無いはずだと、これまで俺は認識し続けてきた。 だから、C君の死の原因がそのまま精神病であるはずが無いと思い、メッセの子にC君の身の上に何があったのかを質問したのだ。 それに対し、メッセの子は「精神病でしたよ。これからしばらくの間メールごめんなさい」と言った。 俺は「はい」と言った。 メッセの子は「結局Cがなんだったのかなんておれもしらないっすから」と言った。 俺は「みんなの様子はどうですか」と言った。 メッセの子は「とにかくしばらく一人にさせてください報告だけはたて思っただけ」と言った。 俺は「分かりました」と言った。 現在午後18時04分。 こんな俺が、C君についてメッセの子にかけてあげられる言葉なんてあるはずが無い。そんな言葉をかける資格すらない。 本当に、そらぞらしいだけになってしまう。 「人の死を悼む」という行動に関して言うなら、俺は一般的な人間の100分の1以下の道義的精神すら持ち合わせてはいないのだ。 本当に、俺は酷い人間だ。
悲しい気持ちが沸いてこない・・・ 俺は先日、掲示板上でC君に話しかけられた事がある。 「自分はお前が大嫌いだ!鬼に食われて死んでしまえ!!」みたいな内容で。タイプの少年に言い返すのは筋に反すると思ったので、俺はその言葉をスルーした。 C君は俺の事を相当憎く思っていたし、この先俺がC君に呪い殺されるような事があっても、もうそれはしょうがないなと思う。 C君はメッセの子達の元を離れる前に、メッセの子が可愛がっているA君という13歳の男の子をレイプした。 以前から、C君はA君に同じような事を繰り返していた。 C君は、そんな自分に皆が優しい言葉をかけてくれる事が耐えられなかったそうで、大阪の精神病院に収容される折、携帯の番号も変え、自らメッセの子達との音信を断ったのだ。 C君の実兄であるE君も、「これはCの意思だから」と言って、メッセの子達にC君の新しい番号を教えてあげる事はしなかったそうだ。 先日、C君が俺に「鬼に食われて死ね!」と言い、俺がそれをスルーした後、俺はメッセの子にメールを送り、「C君が掲示板に現れた」という事を伝えた。 その時、メッセの子も東京の精神病院に収容されていたので、ネットに接続できる環境には無かった。メッセの子の携帯は、ネットが止められてしまっているからだ。 俺がC君が掲示板に現れた事を伝えると、メッセの子は「書き込んでください!俺からの伝言を伝えてください!」と俺に頼んだ。 俺はメッセの子の頼みを聞いて、C君に対して「○○君(メッセの子の名前)から伝言を頼まれました。今すぐ○○君に連絡を入れてください。君と連絡が取れない事が耐えられないって言ってます」と書き込んだ。 C君は「嫌だ。俺はあいつらの事が大嫌いなんだよ。本当うざい。あいつらの事を考えるだけで吐き気がする。そう伝えて」みたいな事を言ってきた。 俺はそのままその言葉をメッセの子に伝えた。 本心である訳がない。 C君は、優しいメッセの子達に「最低な自分」を嫌ってもらおうと、わざと悪態をついているだけなのだ。 自分にとってとても大切な存在に、そんな風にわざと罵倒を浴びせてみせる事がどれだけ辛いか。俺にはそれが分かるので、その時はとても悲しい気持ちになった。 メッセの子も、それがC君の本心ではない事を分かってる。 でも、そんな汚い罵倒文句が、C君がメッセの子達に向けた最後のメッセージ、C君による最後の言葉になってしまった。 凄く悔しいだろうな・・・、と思う。 そんな事を考えていた。 C君は死んでしまった。 それについて、自分が何を考えれば良いのか分からない。 何を考えて良いのか分からなくて、息が詰まって苦しくなった。 現在午後22時13分。
近所のダイエーに行ってみようと思う。また、公園も。 C君とD君は、以前大阪から二人で歩き旅みたいな事をした事があり、そしてたどり着いたのが神戸の俺の近所のダイエー、そして公園。 その後も、C君が大阪の精神病院に収容され、連絡が取れなくなった後、D君は家出をして神戸で保護された事もある。 多分、その公園に向かったんじゃないかと、メッセの子は言っていた。 その公園はD君にとってC君との思い出の公園だ。 もしかしたら、メッセの子達が居るかもしれない。 だから、様子を見てこようと思う。 現在午後23時32分。
|